第28話 快進撃の後ろで
『ン~ゴッ! ンン~ゴォッ! ンン~ゴゴォォオオッッ!!』
扉の間に生息するモンスターは主にガイコツ兵士やオオカミ頭のゴリラなど。
野生動物のように群れを成す種類はなく、迷宮内に点在するモンスターたちをその巨腕で粉砕しつつ、ドロリ―を乗せたダンジョンゴーレムの快進撃は続いていた。
『ンンンン~これぞ圧倒的』『ここにもゴーレムがいるぞ』『いや笑い方が胡散臭すぎ』『けど勝負は見えたな』『ボスモンスター味方にされたら勝ち目はないかー』『さすが俺たちのドロリーだ!』『ちっちゃくておっきくてさらに強い!』
コメント欄はすでにドロリーの祝勝ムード一色だ。
この時点で勝負は決まったと思われるのは少し遺憾ではあるが、現在の俺は邁進するダンジョンゴーレムの後ろをカメラゴーレムと共に追従しているのみ。
リスナーたちがドロリ―の勝利を確信するだけの理由は確かにあった。
『いくらモンスタートレインを簡単に止めたといっても、そもそも倒せるモンスターが流れてこなくちゃどうしようもない』
そう。
ドロリ―の告げた勝負内容は『どちらがより多くモンスターを倒したか』
勝負とはいっても、この配信はドロリ―のモノで俺はそのサポーターだ。
配信を映すカメラゴーレムはドロリ―を追従するし、サポーターが配信者から意図して別行動を取るのは規約としてNGとなっている。
ダンジョン内では必ず配信カメラに映る場所にいなければならない。
そもそもが生存確認のための配信カメラである。
そこから大きく外れてしまえば、すぐに遭難者扱いとなってたちまちインフラ整備士の世話になってしまうだろう。
……ま、別行動したいんなら別の配信枠でやれって話だからな。
そんなわけで、俺は窮地に追い込まれていた。
「……ん、いい調子。このままイロウには負け犬になってもらう」
「お前には公平に勝負をするという気概はないのか……」
「だったら前に出ればいい」
ダンジョンゴーレムが猛威を振るう前方に出ろって?
巨椀の餌食になるだけじゃないか。
「ドロリ―が勝ったら、負け犬の背中に乗ってドロリ―と散歩。勝利の余韻に浸るために軽く町内一周を目安にする」
「俺を社会的に殺す気か!?」
お前が勝ったら俺の手をどうこうするってだけじゃなかったのか!?
流石にそれは御免こうむりたい。
いや、他人の身体を自分のモノ置きみたいに扱おうとする時点で論ずるまでもないが、これは真面目にやらないとヤバそうだ。
「……さて、ど」
ここからどうするか。
軽く息を吸ってから俺は思案する。
悠々と前進するダンジョンゴーレム。
元よりその体躯で通路のほとんどを塞いでいるのでモンスターを撃ち漏らす、なんて可能性は皆無だ。
同様に、俺がゴーレムを追い越して前に出るのもあの巨体で塞がれてしまっているので難しい。
ダンジョンゴーレムと俺の体格差は大人と子供、いやそれ以上だ。
はたから見ればすでに勝負は決したようなものだろう。
『……それにしても撮れ高がないな』『圧倒的で一方的に勝ってしまう』『まぁ、ただゴーレムがモンスターを蹴散らしているだけだし』『こんなのが前にいるから流石のサポーターも動けないよな』『てかどうやって戦うんだろ』
だが、このままドロリ―の勝利というだけでは味気ないのは確かだ。
繰り返すが、今日の俺はドロリ―のサポーターだ。
勝負はドロリ―が勝手に始めたものであるが、それを何の盛り上がりもないまま終わらせてしまってはサポーターの名折れだ。
やるからにはその仕事を全うするという俺のポリシーにも反する。
それに、勝敗の決まった戦いほどつまらないモノはないしな。
……仕方がない。
「少しは捲りますか」




