第109話 ダンジョン・グランド・ライバー
……こういうオチになるのは、なんとなく分かっていたさ。
俺だって男である。
少し。
ほんの少しだけ。
ありえるかもだなんてさ……
まったく期待していなかったと言えば、ウソになる。
ただ、そんな俺の邪な考えをクローリスが軽々と超えてきたというだけ。
「ホテルに着いてから、諏成さんがずっと浮かない顔をしていたので! よくよく考えれば諏成さんはイスナロさまの魅力はおろか、ゲームをプレイしたことないのですから、このコラボルームの素晴らしさを感じることができないのかな、と」
「……だから、実際にやってみろと?」
「はい! せっかくの旅なのですから、諏成さんにもたくさん楽しんでほしいんです!!」
……そこまで力説されて断れるほど、今の俺に余裕は残されていなかった。
彼女に促されるまま、俺は自分のスマホにゲームをインストールする。
ダンジョン・グランド・ライバー。
通称はDGLとか言ったか。
クローリスに促されるままチュートリアルを始めると、どうやらコマンドバトル形式のRPGで、ストーリー部分は紙芝居のようだ。
まどかさんもハマってるし女性人気がメインなのかと思えば、登場キャラはなんと老若男女多種多様。
ゲーム部分はだいたいクローリスから借りたイスナロ(期間限定バージョン)が全てを蹂躙したので面白さは分からなかったが、ストーリーは中々に読み込ませてきて面白い。
……ただ。
惜しむらくは……疲れている時に読み込めるタイプじゃないな。
「諏成さん、実はここのセリフには……」
「諏成さんがイスナロさまを使用する光景が見らえるとは……!」
「これはですね諏成さん……あ、それもですね諏成さん……」
俺のスマホを覗き込むためにクローリスが色々と密着してくるし。
柔らかいモノは無遠慮に押し付けてくるし、いい匂いはするし、挙句に彼女の息遣いが俺の首をくすぐってくる。
そんな心臓や諸々に悪い状況な上に、あーだこーだとクローリスが聞いてもいないアドバイスや解説などを挟んでくるものだから集中できたもんじゃなかった。
普段の仕事は理路整然とキッチリこなすクローリスだが、どうやら布教活動は得意じゃないみたいだな。
……まあ、そのおかげで生殺しの感覚が和らいだからよかったけど。
うーん。
いや、やっぱりダメだ。
まるでテスト前の一夜漬けが如き情報量はさすがに徹夜じゃむり……
俺たちが備えるのはテストではなく明日の開発現場の見学である。
移動中ずっと休んでいたクローリスもいつしか瞼がトロンと閉じてしまい、それとほぼ同時に俺も色々な限界を迎えて気を失うようにして寝落ち。
「「……オハヨウゴザイマス」」
男女二人が仲良く同衾して、何事もなく朝を迎えることになった。
……念のためと備え付けされた時計のアラームをセットしていてよかった……
聞きなれない電子音で目が覚めたら、クローリスが俺の腕を枕代わりにしていたのには驚いたけど。
腕が痺れて感覚がなくなってるよ……
「あ、あの諏成さん。昨晩は、その……失礼しました……」
「いや……うん。今度はもうちょっと万全の体調の時にやらせてくれ……」
「えっと、いちおう旅行中はずっと安全な日ですよ?」
俺の体調のお話です。
まあクローリスが元気だったらそれでいいんだけどさ。




