第107話 同じ部屋で二人っきりはマズいですよ!
……よくよく考えてみれば、今回の旅はクローリスが当てた懸賞によるもの。
どうやらホテルの予約は先方の会社がやっていたらしく、クローリスはあらかじめ俺こともを同行者として伝えていたようだ。
つまり、男女二人っきりで旅行に来るということで担当者が俺たちをカップルだと誤解して気を利かせてくれた結果であった。
……まあ、一か月以上も同じ屋根の下で暮らしているのだから今更ではあるが。
確かに今更ではある。
色々とラフなシキータやドロリーなどとは違い、クローリスはちゃんと男女の分別をわきまえてくれているので、前者二人やアナのようなハプニングもない。
いくら同じ部屋だったとしても、俺が変な気でも起こさない限りはいわゆる《《間違い》》なんてことが起きることもないのだ。
なので今更の心配である。
では、あるんだが……
「……なあ、クローリス」
「見てください諏成さん! まるでゲームのマイルームです! イスナロさまのイラストもこんなにたくさん!!」
「だからってベッドが一つなのはマズいですよ」
歓声を上げるクローリスに「いやいや」と俺は首を振る。
……まず部屋にベッドが一つしかないことにツッコみませんか?
俺たちが案内されたコラボルーム。
さっきクローリスが言ったように、どうやらゲームないのマイルームを模した内装にプラスして人気キャラクターの小物やグッズなどをちりばめた、といった様相をしている。
いわゆる、大正ロマンみたいな感じだが……所々に近未来な感じの装飾があったりするのはゲーム内通りなのか、単純にホテルの内装が元々そうなのかはさすがに分からなかった。
「ベッドですか……? あ、イスナロさまの抱き枕が!」
「……ああ、うん。ソウダネ」
俺が言ってるのはそこじゃないんだが……
幸せを噛みしめるようにして鼻息を荒くするクローリスにはもう俺の意見は聞こえていないようだ。
そんな彼女とは裏腹に、俺のテンションは急転直下の真っただ中にある。
だって……だってですよ?
ここはゲーム「ダンジョン・グランド・ライバー」のコラボルーム。
今までにさんざんクローリスが擦り倒しているように、ここにもグッズとして大量に配置されているイスナロなるキャラクターは……俺自身あまり認めたくないものの、どうやら俺と似ているらしい。
……いやホントに似てるの?
自分で言って悲しくなるが、俺はこんなイケメンじゃない……目鼻立ちとかここまでキリッとなんかしてないし、少なくともコイツみたいにキラキラしたオーラはない……ホント言ってて悲しくなってくるな……
……まあ、百歩譲って雰囲気くらいは似てるとして。
そんな自分に近しい、しかも明らかに自分よりも上位互換みたいなイケメンキャラの顔面やグッズが所狭しと並んでいるのだ。
しかも、水回りにまで防水ポスターなどが貼ってある徹底ぶり。
クローリスのようなファンなら感涙にむせび泣く(現在進行形)所だが、ファンでもなんでもないただの同行者である俺にとってはある種の拷問に近かった。
「……すごい徹底ぶりだな」
「はい! なんでも開発会社の社長さんとここのホテルのオーナーさんが交友があるとかで、以前からも一階にあるレストランでコラボカフェを開催して人気だったとか。今日の夕食はそのコラボカフェを利用しましょう! ぜひ!」
「お、おう……」
己の感想でクローリスの感動に水を差さぬよう徹底する俺に、ようやく一通りの興奮が落ち着いたクローリスがふと呟くように言った。
「……もしも、エピライブがもっと大きな規模になったらこのようなコラボもできるようになるんでしょうか」
「俺たちがもっと大きくなったらありえるかもな」
その時は絶対にデフォルメなりなんなりしたグッズをメインに配置しよう。
絶対に。




