第二十三話 関西の鉄人
2018年 5月 東京都世田谷区
とある公園にて...
俺が狙ったのは男の最たる象徴にして、最大の弱点!
その名も...きん〇まッ!!!
(さぁ喚け!もがき苦しめ!そして俺にエロ本を譲渡しろォ!!)
「どぉぉおりゃぁああ!!!」
「や、やめるんやァ!!!」
真昼間の公園に、俺のいきんだ声と、西尾の青ざめた声が響き渡る。
しかし直後、俺が蹴り上げた箇所から、不可解な音が反響した。
__ガッチーンッ!!
その効果音はまるで金属音のようで、到底人肌から発せられる音とは思えなかった。
次の瞬間、俺の右足に猛烈な痛みが走る。
「__痛ッたァーーーー!!!」
痛みに顔を歪ませながら叫ぶと、西尾は吹き出すように大笑いした。
「がっはっは!まんまと蹴りおった!アホやアホ!がっはっは!!」
「傑作ですね兄貴!こいつアホですよ!ヒャハハハ!!」
俺が右足で西尾のブツを蹴った瞬間、足の甲が感じた感触は人肌のそれではなく、まるで重機を蹴り上げたかのようなものであった。
(お、おかしい!いくら筋肉マッチョでも、きん〇まは絶対に柔らかいハズ!この金属のような感触はなんだ!?勃〇なんかで片付けていい硬さじゃなかったぞ!)
俺は右足を抱えながら混乱した。人の体とは思えないその硬さに、痛みより驚きが勝っていたのだ。
ひとしきり笑った西尾は、俺を見下ろすと、ようやくその種を明かし始めた。
「いやぁ!別に隠してたわけやあらへんで?ただなァ...実を言うとワシは、『掌光病』なんや!!グアッハッハ!」
「しょ、掌光病!?」
西尾は得意げに胸を膨らませ、まるで自慢するかのように続けた。
「せや!症状は『硬化』。文字通り、ワシが触れたモンは問答無用でカチコチになる!」
「ちなみに、これが西尾様が鉄人と恐れられる所以や!ヒャッハー!」
(なるほど、事前に自分の体を触ってたわけか。道理でアソコまであんなに硬かったわけだ...。けど、それがアリならこっちだって...)
俺は痛みが残る右足をさすりながら立ち上がり、自慢げに笑っている西尾の方に向き直った。
「...いやぁ、まさか西尾さんが掌光病罹患者だとは思いませんしたよ」
「せやろ!掌光病罹患者なんて、そう居るもんやあらへんしなァ!...もしかして人生初、生掌光病やったか!?サインなら後で書いたる!ガッハッハ!!」
「サインは結構っす。...けど、あなたが掌光病罹患者なら、俺も気兼ねなく『症状』を使えるっすわ」
「がっはっh...、ん?なんやその口ぶり?まさか、ジブンも...!?」
西尾が何かに勘づき、目を丸くする。
俺はふと足元に転がっていた小石を手に取り、手の平でコロコロと転がせた。そしてわざとらしく西尾を見つめ、にやけて見せた。
西尾は少し怯んだようにも見えたが、相変わらず堂々と仁王立ちをしたままである。
「ほ、ほう...!面白いやないか!!どんな症状か知らんが、全部ワシが受け止めたる!...そしてあのエロ本は、ワシのもんやァ!!」
俺は小石をポーンと放り投げ、西尾の元に近づいた。心なしか、彼の顔がさっきより強張って見えた。
「いくっすよ...!」
「来いやァ!!おおおおぉぉッ!!」
西尾は大袈裟に身を強張らせ、全身の筋肉を隆起させた。
そんな彼に俺は、...俺は、
ふわっと指先で触れた。
「...!?なんのマネや!?一体何が__」
(『入替』!!)
まだ俺の掌光病を知らない西尾は、攻撃の意思を感じさせないこの行動に、戸惑っているように見えた。
しかし、そんな彼に遠慮することは無く、俺は掌光病を使う。次の瞬間、西尾が居た場所には、変哲のない小石がコロンと転がった。
そして、西尾はと言うと...
「な、なん...やと...」
3メートル程、後ろに入れ替わっていた。
そう、そこはさっき小石を投げた場所である。
「これが俺の掌光病。...症状名は、『入替』!!」
俺は全身全霊のドヤ顔を決めた。
「ヒャ、ヒャハ!?西尾さん!?」
「こ、このワシが、こんなちっこいのに...動かされた...!」
...ちっこいの呼ばわりにはカチンときたが、そこは目を瞑ろう。普通に喧嘩しても勝てるわけないので。
「じゃ!西尾さん!掟とやらの勝負は決着がついたみたいなんで、俺はさっきのピンクの雑誌を買ってきますねェ~!!」
まぁ、俺は喧嘩には勝てないが、この勝負には勝った。こういう男気を気にするような輩は、勝負の結果を安易に無視して八つ当たりなどしてこないだろう。子分の前でそんなダサい真似できないだろうからな。
という事で、俺は悠々とコンビニに足を運び...
「気に入ったッ!!」
突然、西尾が吠えた。それはもう、ご近所さん一帯に響き渡るような声量で。
「気に入ったぞッ!!ジブン、愛暗無狂に入れや!!」
「____は?」
頼むから、聞き間違いで、あってくれ。
続く!!




