第二十話 チキチキ!最強防御力大会!
前回のあらすじ!
愛日の掌光病、『消滅』で消せない物がるのか、源と優人と馬酔木の3人は各々自信のある物を持ち寄ることに!
「愛日の掌光病で消せない物を見つけよう!」と提案してから2時間後...
「遅れてごめん!俺も見つけてきたぜ!」
優人が遅れて愛日の家に戻ってきた。
先に愛日の家に帰ってきてゲームをしていた俺達3人は、一斉に優人の方を振り返る。
「よーし、じゃあ皆揃ったなー!...それでは、第1回!チキチキ!愛日の消滅を防げるかな?!最強防御力大会スタートだ!」
「本当にやんのぉ?」
俺達は各々、自信ありげな表情を浮かべる。
まぁ愛日は相変わらず乗り気ではないようだが。
「それじゃあ!トップバッターは私が行くね!」
まず最初に名乗りを上げたのは、意外にも馬酔木さんであった。
「私が持ってきたのは...じゃじゃーん!これです!」
彼女がリュックから取り出したもの、それは何の変哲もないフライパンであった。
「...真紀ちゃん、有我はアスファルトに穴を空けたんだぜ?フライパンなんて余裕じゃないか?」
優人がそのフライパンを不安げに見つめる。
「ふっふーん。優人君は分かっていないな~。...これは、ダイヤモンドコートなのです!」
馬酔木さんは自信ありげに、右手に持つフライパンを突き上げた。
説明しよう!
ダイヤモンドコートとは、フッ素樹脂の中に人工ダイヤの粒子を混ぜることで、より高い耐久性を実現したフライパンなのだ!
馬酔木さんは自信満々だが、愛日の方はやはり心配そうだ。
「さぁさ!愛日、このフライパンに向かって消滅を撃ってみて!」
「本当に良いの...?そのフライパン使えなくなると思うけど...」
「大丈夫!これもう使わないってお母さんも言ってたし!」
馬酔木さんもなんだか楽しそうに目を輝かせて、自信満々にフライパンを体の横に構える。愛日も仕方がなく、そのフライパンに右の手の平を向ける。
「じゃあ、やるよ?」
「ばっちこーい!」
そして一瞬、空気が揺れた!その陽炎のような空気の揺らめきは、消滅が愛日の手の平から放たれた証拠!
俺達はすぐさまフライパンを確認する!
そこには...
「あ、空いている...。穴が、空いている...!」
綺麗に手の形に穴が空いたフライパンが、そこにあった。
愛日はため息をついて腰に手を当てる。
「だから言ったのに...」
「やはりフライパンでは無理であったか....。しかしフライパンは我が四天王(三人)でも最弱!次は俺が出よう...!」
見るも無惨な姿になったフライパンを抱きかかえる馬酔木さんの横で、今度は優人が名乗りを上げた。そして彼の足は玄関へと向かう。
「おいおい、外行くのか?」
「あぁ。ついてきてくれ」
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優人は俺たち三人を引き連れて、建物の解体工事現場のような場所に来た。
「俺の考えたものは、これだ!」
彼が指さした先、そこには...
コンクリートの廃材が積み重ねられていた。
「このコンクリートの束だ!」
愛日は少し遠慮したような顔でコンクリートを眺める。
「これって、勝手に手を出して良い物なの...?」
「もともと今解体されてる家に使われてたコンクリートで、今じゃただの廃材だから多分大丈夫!(適当)」
優人は無責任に説明を投げだした。
それでも愛日は穴をあけてしまった時のことを心配しているようだ。
「けど、コレに穴でも空けたりしたらやっぱり...」
「大丈夫だって!少しだったらバレないよ!先っちょだけでいいから!先っちょなら大丈夫でしょ?!先っちょ!先_」
「優人君?一回黙って?」
「ごめんなさい」
愛日はため息をつくと、そのコンクリートの廃材に手の平を向ける。
「一回だけだからね...?」
彼女はそう言うと、消滅を使う。
再び、空気が揺れ、「シュッ」という風を切るような音が聞こえた。
俺達三人は、揃ってコンクリートの束に目をやる。
コンクリートには、
見事な穴が開いていた。
それも分厚いコンクリートの向こう側までしっかり貫通している、綺麗な穴が。
「馬鹿な!最高硬度のコンクリだぞ...!?」
優人が、コンクリートに空いた穴をまじまじと見ながら嘆く。
「だから言ったでしょ。消滅は硬さとか厚さとか関係なく、全部消せるって」
愛日は当然かのように髪を払う。
(これは確かに強力だな。...しかし!俺の作戦は通用するかもしれないぞ...)
俺は満を持して声を上げた。
「それじゃあ最後は俺の番だ!愛日、そこに立って居てくれ!」
俺はバックから、普段愛用しているまな板を取り出した。
「おい源、コンクリの束でも無理だったんだぜ?まな板なんて絶対無理だろ」
「分かっていないな、優人よ。俺は硬さで勝負をしない。俺の作戦は、...『距離』だ!」
愛日は心底興味がなさそうに、ぼうっと俺達の会話を眺めている。
「...よし!じゃあ俺が距離を取るから、愛日はそこに居てね!」
俺は彼女にそう言い残すと、真っすぐに道路を走って距離を取る。
そして、体感100mほどの距離を取った後、右手に携えたまな板を、自分の顔の横に掲げた。
「愛日ー!もういいぞー!このまな板めがけて消滅を使ってみてくれー!」
(つまり、俺の作戦はこう!硬度が意味をなさない消滅の前では、どれだけ硬い物を持って来ようと意味がない。つまり俺は、距離で消滅の効果をなくすのだ!!)
「見せてもらおうか!消滅の症状の実力とやら__」
シュッ
(...ん、んん?)
まだ台詞も言いきっていないというのに、確かに横で空気が震えた。そして、あのコンクリートが消えた時と、同じ音が聞こえたのだ。
俺は恐る恐る、顔の横に掲げたまな板を見る。
そこには、今までの貧乏飯を共にした愛用まな板の、見るに堪えない痛ましい姿が映し出されていた。
「穴が、空いている...だと...」
100m先では、愛日がこちらに手を向けて立っていた。
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「それにしても、有我の掌光病ってチートすぎないか?硬さも関係ない距離も関係ない、で手の平の延長線上全部消すって、...どっかの位置を入れ替えるだけの山根さんも、見習ってほしいよ」
「『入替』は使い勝手がいいんだ!お前みたいな下衆がこの症状を持っていたらきっと犯罪に使用してるぞ」
愛日の家までの帰り道、俺達は掌光病について議論をしていた。前方を歩いている女子二人は、もうどの店のスカートが可愛いだとかどこの高校の制服が可愛いだとか俺達がついて行けないカワイイ世界の話をしている。
それでも、俺達男はまだ掌光病の話を続けるのだ。
「掌光病って知れば知るほど謎だよなぁ」
「なー。俺も何かしらの症状を持ちたかったぜ、カッコいいし」
「...お前なぁ、それは掌光病罹患者じゃないから言える台詞だ。俺が小学校不登校だった理由も、当然知ってるだろ?」
俺が反論すると、優人は少し申し訳なさそうに頭をかく。
(でも、この世で一番デタラメな掌光病は、ほんとに愛日の『消滅』かもしれないな)
なんて考えていると、一つ、以前から気になっていたことを思い出した。
俺は隣を歩く優人に問いかける。
「なぁ、優人。お前のお姉さんって掌光病罹患者だったよな?」
「ん?ああ、そうだぜ。名前は『黒江ユリ』だから、もし中嶋勇みたいにテレビに出てたら、覚えといてくれよな」
「その、お姉さんの症状はどんなものなんだ?」
俺は何気なく聞いたが、優人は何かを思い出したのか立ち止まってしまった。
「ちょっと待て...!そうだ、姉貴の症状は、『遮断』!!どんなものでも遮断する壁を作り出すんだ...!」
「ど、どんなものでも...!?」
「ああ。俺が何度姉ちゃんを怒らせてその壁に潰されかけた事か...」
優人は過去の記憶を思い出したのか、身を震わせた。
「じゃあ、それって、なんでも貫通させる愛日の『消滅』と、なんでも防ぐ優人のお姉さんの『遮断』が衝突したら...」
「「ゴクリ...」」
俺達は想像の範疇を超えたその議題に、思わず固唾をのんだ。
「矛盾だ...!きっとこの世に存在してはいけないナニカが生まれるぞ...!」
「あぁ、愛日とお前のお姉さんを会わせない方がいいかもしれない...!」
俺達が二人で震えあがっていると、そんな世界の危機なんか露知らずな愛日が、こちらを怪訝そうな目線で睨んできた。
「ねぇ真紀、あの二人、またしょうもないこと考えてるわよ」
「そうなのかなぁ?」
「絶対そうよ!見てあの怪しげな表情...」
俺達は愛日の冷めた目線に気が付き、世界の危機を考えることを一旦放棄した。
優人は気を紛らわすように口を開く。
「ま、まぁそもそもその二人が会わなければいいんだ。...けど、その二人とこれだけの接点を持ってる俺って...うぅ」
優人は自分で自分を納得させようとして、それに失敗してしまったようだ。確かに、自分の姉が「遮断」の掌光病を持っていて、友人が「消滅」の掌光病を持っているなんて、まぁ災難としか言えないな。
「落ち着けよ優人。今は愛日の家に帰った後、マリオカートで何のキャラを使うかだけ考えてようぜ...」
「あ、あぁ、そうだな。俺はノコノコを使う...」
こうして、この世界にまた一つ新たな謎が生まれたのであった。
『消滅と遮断がぶつかると何が起こるのか?』
俺達はこの謎の答えを知る日が来るのだろうか...
「にしてもお前、ノコノコは渋いな...」
続く!!
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