18.星の望む、人の在り方
「……シンドさん?」
カタス側の激しい反発を予想した上で……それでもと、自らの想いを集まった人々に向かいはっきりと語ったランディは。
カタス総括という、立場としては真逆にいるはずの人間の一人――シンドの穏やかな態度に、素直な驚きを浮かべる。
それでも、護衛としての役目もあって共にいたアキは、いつ手の平を返すかと緊張を持ってシンドたちを警戒していたが……。
そんな二人に向かって、シンドは――まず、深々と頭を下げた。
「ランディ。君を試すような真似をしたこと……まずは謝罪させてほしい」
それに合わせて、後方に控えるカタス総括たちもまた、シンドに倣う。
「……どういうことですか? シンドさん」
「実はな……私たちは私たちで、最終的に、君たちの思想を支持することを総意として決定していたのだよ。
その上で――敢えてこうして、このような場を設けさせてもらったのだ。
君たちの意志が強固なものであり……同時に、その思想が我らすべてに響くものであると、改めて皆で確認するために。
未だ、君たちの思想――それによってもたらされる、それぞれの内より湧き上がる心の声から、耳を塞いでいる人々に。
今一度……自らに向き合い、考える機会をもってもらうために」
言って、シンドはゆっくりと――集まった人々の方を見渡した。
そして、一歩前に立ち口を開く。
「改めて――我らカタスもまた、総意として、彼ら〈白鳥枝党〉を支持することを宣言したい。
彼――ランディの語る思想は、我ら一人一人の心の中、抱き続けながらも隠れていた想いに、光を当てた。
その想いを、改めて意識の上に立ち上らせた。気付かせてくれた。
しかし――その偉業への畏敬をもって、彼や枝党に付き従うようであってはならない。
そして当然、我らカタスがそれに成り代わろうというわけでもない。
我らも含め、皆が従うべきは――。
我ら一人一人の心、己の内に気付いた想い……そのものにこそ、だ。
……そうだ。
皆がこうして、心動かされたのは――その想いが、己にとって何より信ずるに値するものだったからに他ならない。
〈星災〉によって揺れ、迷いながらも、しかし安易に手放すことなく胸に抱き続けたのは……それが皆にとって、純粋に信じるものだったからだ。
そんな己の内の、確かなものと信じる想いにこそ、拠って立つ――。
それこそが、人のあるべき心の姿の一つではないだろうか。
そして、星はきっと……そんな、自らにこそ拠って立つ、真に自立した人間を待っているのではないだろうか。
永遠を紡ぐ星と、永遠に傍らに寄り添い、共に在ってくれる――真の共存に至ってくれる人間をこそ、待ち望んでいるのではないだろうか。
ならばこそ、やはり……我々は、〈星災〉に屈してはならないのではないか。
〈星災〉を前にして、それでも自分たちの想いを信じ、さらに星をも信じて――なお先へと進む。
それこそが、我らが選ぶべき道ではないだろうか……!」
一度にそこまで語り――そうしてから改めて、シンドは肩越しにランディを振り返る。
それに対しランディは、やわらかく微笑みながら……先を促すように大きく頷いた。
「……今はまだ、こうした考えに反対である皆も――どうか今一度、自らの心に問うてみてほしい。
皆は、ランディの語ったことに思い当たる節があるからこそ――かつての人間の愚かな過ちが心に刻まれているからこそ、旧来のままの在り方を保ち続けるべきだと、そう思っていることだろう。
だが、こうして切っ掛け一つで大きく広まったように……我らの心の内にある想いは、隠れこそすれ消えるものではないのだ。
我らが、いっそ人で在ることを捨て去らない限り――ここでまた押さえ込んだところで、いずれ再び、何かを切っ掛けに燃え上がるだけではないだろうか。
そして――そうまでしての平穏のために、人で在ることを捨ててまで生きるのは。
生きるという表現すら、適切でないような――そんな生を生きるのは。
果たして本当に、母なる星の、真に望む姿なのだろうか。
もし、私の想像が間違っているのなら――そもそも星は、人をこのような存在に産み落とさなかったのではないか。
〈星災〉を以て戒めるぐらいならば、早々に滅ぼしてしまっていたのではないか――」
自分たちが真実、枝党を支持することの証とするように……シンドが、ランディたちの想いを正しく代弁する――その最中。
最初に枝党を否定するような論を掲げた総括が、そっとランディたちに近寄り、今一度謝罪と共に頭を下げた。
「……我らも、つい先日までは事実、君たちを否定する側であったのだ。
だが……私たちもまた、こうしてシンド君に説得されてね――」
憑き物が落ちたような表情で、総括はシンドの後ろ姿を見やる。
微笑みながら今一度それに合わせ、頷くランディ。
そしてアキもまた、二人に倣いながら――。
『……その『違和感』の正体に気付いたとき、どの道を選ぶのかは。
きっとその根ざすところは、すべての人たちもまた――同じはずなのだから』
かつて、奇妙な懐かしさを覚える少年に言われた、そんな言葉を。
ランディとシンドの語りかけに、歓声を以て応える人々の姿から――思い返していた。




