表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新装版】 屍喰神楽 ~シニカミカグラ~  作者: 八刀皿 日音
4章 新たな世界へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

124/127

18.星の望む、人の在り方


「……シンドさん?」



 カタス側の激しい反発を予想した上で……それでもと、自らの想いを集まった人々に向かいはっきりと語ったランディは。

 カタス総括という、立場としては真逆にいるはずの人間の一人――シンドの穏やかな態度に、素直な驚きを浮かべる。


 それでも、護衛としての役目もあって共にいたアキは、いつ手の平を返すかと緊張を持ってシンドたちを警戒していたが……。


 そんな二人に向かって、シンドは――まず、深々と頭を下げた。



「ランディ。君を試すような真似をしたこと……まずは謝罪させてほしい」



 それに合わせて、後方に控えるカタス総括たちもまた、シンドに倣う。



「……どういうことですか? シンドさん」



「実はな……私たちは私たちで、最終的に、君たちの思想を支持することを総意として決定していたのだよ。

 その上で――敢えてこうして、このような場を設けさせてもらったのだ。


 君たちの意志が強固なものであり……同時に、その思想が我らすべてに響くものであると、改めて皆で確認するために。


 未だ、君たちの思想――それによってもたらされる、それぞれの内より湧き上がる心の声から、耳を塞いでいる人々に。

 今一度……自らに向き合い、考える機会をもってもらうために」



 言って、シンドはゆっくりと――集まった人々の方を見渡した。

 そして、一歩前に立ち口を開く。



「改めて――我らカタスもまた、総意として、彼ら〈白鳥枝党(しらとりしとう)〉を支持することを宣言したい。


 彼――ランディの語る思想は、我ら一人一人の心の中、抱き続けながらも隠れていた想いに、光を当てた。

 その想いを、改めて意識の上に立ち上らせた。気付かせてくれた。


 しかし――その偉業への畏敬をもって、彼や枝党に付き従うようであってはならない。

 そして当然、我らカタスがそれに成り代わろうというわけでもない。


 我らも含め、皆が従うべきは――。

 我ら一人一人の心、己の内に気付いた想い……そのものにこそ、だ。


 ……そうだ。

 皆がこうして、心動かされたのは――その想いが、己にとって何より信ずるに値するものだったからに他ならない。

 〈星災(せいさい)〉によって揺れ、迷いながらも、しかし安易に手放すことなく胸に抱き続けたのは……それが皆にとって、純粋に信じるものだったからだ。


 そんな己の内の、確かなものと信じる想いにこそ、拠って立つ――。

 それこそが、人のあるべき心の姿の一つではないだろうか。


 そして、星はきっと……そんな、自らにこそ拠って立つ、真に自立した人間を待っているのではないだろうか。

 永遠を紡ぐ星と、永遠に傍らに寄り添い、共に在ってくれる――真の共存に至ってくれる人間をこそ、待ち望んでいるのではないだろうか。


 ならばこそ、やはり……我々は、〈星災〉に屈してはならないのではないか。


 〈星災〉を前にして、それでも自分たちの想いを信じ、さらに星をも信じて――なお先へと進む。

 それこそが、我らが選ぶべき道ではないだろうか……!」



 一度にそこまで語り――そうしてから改めて、シンドは肩越しにランディを振り返る。

 それに対しランディは、やわらかく微笑みながら……先を促すように大きく頷いた。



「……今はまだ、こうした考えに反対である皆も――どうか今一度、自らの心に問うてみてほしい。


 皆は、ランディの語ったことに思い当たる節があるからこそ――かつての人間の愚かな過ちが心に刻まれているからこそ、旧来のままの在り方を保ち続けるべきだと、そう思っていることだろう。


 だが、こうして切っ掛け一つで大きく広まったように……我らの心の内にある想いは、隠れこそすれ消えるものではないのだ。

 我らが、いっそ人で在ることを捨て去らない限り――ここでまた押さえ込んだところで、いずれ再び、何かを切っ掛けに燃え上がるだけではないだろうか。


 そして――そうまでしての平穏のために、人で在ることを捨ててまで生きるのは。

 生きるという表現すら、適切でないような――そんな生を生きるのは。

 果たして本当に、母なる星の、真に望む姿なのだろうか。


 もし、私の想像が間違っているのなら――そもそも星は、人をこのような存在に産み落とさなかったのではないか。

 〈星災〉を以て戒めるぐらいならば、早々に滅ぼしてしまっていたのではないか――」



 自分たちが真実、枝党を支持することの証とするように……シンドが、ランディたちの想いを正しく代弁する――その最中。


 最初に枝党を否定するような論を掲げた総括が、そっとランディたちに近寄り、今一度謝罪と共に頭を下げた。



「……我らも、つい先日までは事実、君たちを否定する側であったのだ。

 だが……私たちもまた、こうしてシンド君に説得されてね――」



 憑き物が落ちたような表情で、総括はシンドの後ろ姿を見やる。

 微笑みながら今一度それに合わせ、頷くランディ。


 そしてアキもまた、二人に倣いながら――。



『……その『違和感』の正体に気付いたとき、どの道を選ぶのかは。

 きっとその根ざすところは、すべての人たちもまた――同じはずなのだから』



 かつて、奇妙な懐かしさを覚える少年に言われた、そんな言葉を。

 ランディとシンドの語りかけに、歓声を以て応える人々の姿から――思い返していた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
子育てって本当に難しいですよね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ