532話 密告者
酒場の騒動から数日たっても小人の町で働く各種の動揺は収まる事が無かった。
素直に働く者、反乱を企てる者、口だけのものが一番多いが、小人たちの警戒を一段引き上げていた。
小人「町の様子は如何ですか。」
小人2「かなり雰囲気が悪くなっていますね。」
小人3「仕方ないよね、あれだけの騒ぎになったんだから。」
小人「工事が滞る事が無いようにしなければなりませんね。」
小人2「人とゴーレムを増やさないと拙いよね。」
小人3「地下都市の居住権を餌に密告させるのはどう?」
小人「おーいいかもそれで行こう。」
小人たちは、町中に張り紙を張りお触れを出していく。
猫人「ねーねー、これなんて読むの。」
町の労働者たちの殆んどが文字を読む事が出来ないその為に中央広場では、張り紙を読む者がいる。
張り紙の内容は、不満をを持つ者、労働しない者、町に被害を出す者、小人族を見下す者がいた場合、報告せよ、というものであった。それだけであれば誰も協力する者はいないだろう。だがその次に協力者には、食料と地下都市の居住家が与えられるとなれば話は変わってくる。
この町の噂では、全ての種族が移住する事は不可能と噂になっていたからであった。
この噂の為に働く事を止める者、逃げ出す者をいたが今はそこら中で工事が行われている為に逃げても仕事に困る事は無かった。だがそんな者達に地下都市の移住権を手に入れる事はできない。
犬人「移住権って氷河期が終わる迄住める権利だよな。」
熊人「そうなるな。」
犬人「・・・・・・」
一人の犬人が行動を起こす。酒場やしょくづなどでは日々苦情を言っている者達が多くいる。その者達の多くは、自分勝手であり、尊大な態度をとっている者が多い。
自分をいかに大きく見せるか、いかに偉大に見せる事が出来るかだけを考えている者達であった。まぁ実際はそこ迄深く考えていないが、俺は偉いんだと思っている者達だ。
そんな奴ら達は、聞き耳を立てている事も警戒していない。
狐人「どうする、小人を殺して町を乗っ取るか。」
狼人「おいおい、町を乗っ取る事なんてできないぞ。小人が居なければ町の運営なんてできないだろう。」
狐人「フン、これだから脳タリンは困る。小人にやらせればいいんだよ。元の俺たちの村のように働かせればそれで解決だ。」
酒の入った事で誇大妄想よりもさらに拍車がかかっている。
何しろ、この小人の町に連れて来られた経緯も忘れているからだ。戦に負けた者、奴隷の一歩手前だった者、種族の村で使い物にならなかった者、追い出されていく場所の無い者達の集まりが今の町の労働者たちであった。
中途半端な力しかなく、種族内でもそれ程の権限を持っている訳でもない者たちなのだ。そんな中途半端な者達に酒が入っただけで話が大きくなっていく。
酒場には無数の英雄たちがいると誰かが言っていたが、まさにその通りであろう。
小人「この布告所面白いねー、小人の町乗っ取り計画だって。」
小人2「馬鹿なの、そんなこと出来るはずないじゃない。」
小人3「出来ると思っていないよ。酒に酔っている間だけの妄想だもん。」
そん状況の中、密告者が出始める。
酒場での誇大妄想者が多いが、それ以外でも密告者が多くなっていた。地下都市の居住権という餌に見事に引っ掛かっていた。
小人たちのこの制度を永遠に続けることはできない。ある程度の期間を過ぎれ場廃止する計画だ。
小人「そろそろ二月だね。」
小人2「あー、密告制度ね。」
小人「不満者たちも鳴りを潜めたからもう制度を廃止でいいんじゃいかな。」
小人3「嫌、あと一月はそのままだよ。もう少し地下都市の人数を減らさないといけないんだ。」
小人4「他の地下都市工事に回すんでしょう。」
小人3「そうなるね。何しろ全く足りていないからね。」
町は、一時期の険悪な雰囲気はなくなった。そして密航者を警戒して酒場などでも人の悪口を言う者がかなり少なくなっていた。
ある住宅
狐人「クソー、酒も飲めないのかー。」
オーク人「まぁそういうな。密告者が酒場で張っているからな。」
狐人「・・・・あいつらも小人も皆殺しにしてやる。」
オーク人「おいおい、まだ酒も飲んでいないのに勢いがいいな。」
狐人「フン、俺様はいつも正直なだけだ。酒を飲まなくとも俺様は強いんだ。」
オーク人「そうか。」と言ってオーク人は住宅の玄関ドアを開ける。そしてこの玄関先には、制服を着た者達がズラリと並んでいた。
生唾をゴクリと飲み込む狐人は、言い訳を始めていた。
狐人「い、今のは冗談なんです。ジョークなんです。殺すなんて言っていません。町で働けることに誇りを持っているんです。ありがたいと常に感謝の心を持っています。」
役人「いや、外まで聞こえたから。」
狐人「まままま、待ってください。私じゃないんです。さっきの言葉はこのオークが喋っていました。密告しようとしていたことろなんです。」
役人「あのね、このオークはうちの役人なんだよ。君はマークされていたの分かる。」
狐人「い、いやだー、捕まりたくない、いやだー、いやだー。」
この狐人は町からの追放となってしまった。町からの追放とは、小人の町やアル達の町に入る事が出来なくなることとなっている。
他の町や村には自由に入る事が出来るためにそんなに影響はないと思われていた。
だが実際は、生きるか死ぬかの大問題であった。
小人やアルの町では仕事があり食料があり、酒迄あった。
それが他の町や村では、食料は配給となり、酒など上のものしか口に出来ない状態である。
働いても別種族であれば、労働対価はパン一つだけとかなり少なくなっている。
そして幾ら働いても誰も評価する者がいない。小人の町で働けば地下都市の居住権と物があるが別の町や村ではそんなものは無いのであった。
狐人「クッ、何とか小人の町に入らないとこのままじゃ飢え死にだ。」
??「あるぞ、小人の町に入る方法はあるぞ。」
突然の言葉にびっくりした狐人は、食堂に居た。ボロっと口に出した言葉を聴かれてしまっていた。
狐人「えっ、あっ、いや俺は何も言っていないぞ、人違いだ。」
??「分かっている、分かっている。小人の町に入りたいんだろ。入れてやるよ。」ニヤリ




