527話 決断
アルや小人以外の種族たちも大混乱中となっている。アル達とは違った混乱だが、オアシスをめぐって争いとなっている。
アル達の創り出している地下都市に入る事を良しとしない者達がオアシスを取り合っているのである。
この事はアルの耳にも入っていたが、放置している。
現状、地下都市の計画は、大きな修正があった事で計画が大幅に遅れていたからだ。
今の状況では、全ての種族を地下都市に避難させることは不可能となっている。
その為に、争うのならば勝手にやってくれという方針になっている。
小人「アル様、オアシスと亀の収容予想が出来ました。」
小人の提出した超巨大亀上の町つくりでは、20万人から25万人の家屋を作り、亀上には森も残すことになっている。森を全て破壊した場合、氷河期が終わった時に植樹が出来ない恐れがあるからであった。
アル「やはり、畑は無理だな。」
小人「無理ですね。森はある程度の規模を残さなければなりません。そして家屋は密集させなければなりませんから。」
アル「監視のためだな。」
小人「はい、監視管理しなければ各種族は好き勝手な行動をするでしょう。避難して滅びる種族が出ると思われます。」
アル「仕方ないな。オアシスは大精霊に任せて、超巨大亀はこちらで管理するしかないな。」
小人「それがいいと思います。何しろ亀の上は凍らない土地となりますから。」
この時期、アル以外のメンバーは、この大陸に居なかった。
それは、中央大陸以外にあと二つの大陸が影星にあったからだ。
その為にカインは、家臣を連れて東の大陸に渡っていた。アンネローゼも家臣と共に西の大陸へと向かっている。
影星が氷河期に入る事を伝えるためと西と東の大陸でもオアシス探しと地下都市計画を進めるためであった。
その為にカインとアンネローゼには最大限の兵力をも与える必要があったのだ。
アルの元にいる家臣は、10人程度まで減っている。
その代わりに小人が、大活躍中であった。
小人「アル様、アル様の故郷から応援は呼ばないのですか。」
アル「あー其れも考えている。というより向こうで食料の量産を行う予定だ。移住させることはできないがその代わりに作物とこちらに運ぶ。地下で飢え死にはさせられないからな。」
小人は、引きつった表情となっていた。
小人「あ、アル様、もしかしてですけど、その食料は無料配給ですか。」
アル「考え中だ。」
そうもし地下都市で人が生きるためには、食料は絶対に必要なものである。
その食料の全てを握る事が出来るのであれば各種族は生きるために従わなければならない。
地下都市での絶対支配者が誕生してしまう事になるのである。
アル「地下都市にはダンジョンを造りそのダンジョンでは畑と魔物を家畜化して食料供給庫とする。だがそれだけでは全く足りないだろう。200年という長い年月だしな。」
小人「それで別の場所から持ってくるという事ですね。」
アル「そうだ。ダンジョン内だけに頼った場合、不測の事態が起こってしまえば全滅するからな。まぁダンジョン内移転が使えるからいざという時は避難させることも出来る。」
小人「私たちは、ど、奴隷になるようなものですね。」
アル「奴隷にはしない。心配するな。」
アルの言葉を小人は全て信じる事が出来なかった。
アルとしては、地下都市という狭い空間であることで規律、決め事をつくり争いの無いようにするつもりであった。だが小人を含め、各種族は弱肉強食の世界で生まれ育った者達である。
多少豊かな暮らしで慣れたとはいえ、元は戦う事が生きがいの者達である。
地下都市という未知の世界に対する恐怖感は、アルが想像するよりも深刻であった。
地下都市工事が進んでいくと並行して各種族の争いも激化していく。
小人は、アルに協力するグループと独自で生き残るグループに別れてしまった。独自に生き残るグループも地下都市に移住するが、アルから提供されているゴーレムで小人族だけの地下都市の建設を始めている。
その事実知ったアルであったが何も言う事は無かった。
小人族の中で独自路線を行くグループが出来た事で残った小人族は盲目的にアルに従っていく。
アルとしては、影星全体を救う事を目標としているが、出来ない事も分かっている。
突然外から来た者に従うようなやわな種族たちではない事が分かっているからだ。
特に強者と言われる者達は、アルに従う事はしないだろう。
大精霊によって氷河期が到来する事は告げてい在り、各種独自の動きも見せている。
取りあえずは、アルに従う者達の為に地下都市を建設していく。勿論地下都市はそれ以上に収容可能に造り出す予定である。
アル(上手く行かないもんだな。別の星から来た者が避難しろ、氷河期が来るぞと言っても反発するだけだよな。俺もそういわれても信じないし、信用もしないだろうからな。
だが、知っていて見殺しだけはできない。恨まれようが呪われようが、救える者は救わないとな。)
その頃、各地の大精霊たちは、種族同士の争いを静かに眺めていた。大精霊を崇拝する者達は毎日のように貢物を納め、オアシスに済む権利で別種族、あるいは同種で争いを繰り広げていた。
大精霊のオアシスは狭い。その為に種族全員が住む事は不可能であった。
オアシスに住めるのは、精々300人が限界であろう。
森からの果実や畑を作り、そこで生活が出来る作物からの計算であった。
各種族は、広さからもっと詰め込むつもりのようだが、実際には淘汰されていくだろう。
そんな争いを大精霊は、静かに眺めている。
小人「アル様、大変です。地下都市工事現場が襲撃されました。」
アル「何処の種族だ。」
小人「虎人です。食料を強奪していきました。」
アル「あいつら食料が無くなってきたのか。」
小人「ですね。虎人たちは畑を耕すことはしませんから。」
アル「配下の猫人たちが離反したという事か。」
小人「そうなります。」
アル「各種族間の争いは、これからより過激になっていくな。
小人「なりますね。工事現場も強化しなければいけません。食料が強奪されれば士気にかかわってきます。」
そしてアルは一つの決断をする。
強奪した虎人族を一人で殲滅するために出ていった。




