510話 元族長
族長と重鎮が待ち構えている会議室に狐人族の役人たちが集まっていく。
族長たちは、自分達が仮病から復帰したことで又以前のように権力を振り回し従えようとしている。
族長「全員集まったな。遅い、いつまで待たせる気だ。やっと回復した偉大な族長を待たせるとは、処罰の対象になるぞ。」
重鎮「そうだぞ、儂と族長が復帰したのだ。これからは以前よりも色々と強化していく。」
シーーーーーン。
族長「おーそうだ、儂の縁者を一人役所に入れるから頼むぞ。」
助役「無理です。」
族長「あーーー、聞こえなかった。もう一度言ってくれ。」
助役「だから無理ですと言ったのです。役所に入るにはきちんと試験を受けてもらわなければなりません。無試験で職員にする事はできません。」
族長「ききき貴様ぁぁぁぁぁ、儂は族長だぞ、一番偉いのだぞ。言う事が効けんのかぁぁぁ。」
アル「きけないな。」
突然外から声がした。アルも役所内にいたようだ。
アル「族長、体は大丈夫か、何でも仮病という病だったそうではないか、あの病は好きな時に回復する奇病なんだろう。」
「「「「「「ぷっ、」」」」」」」
職員たちから失笑が漏れる。
族長「け、仮病ではない、試合の始まる前に腹痛を起こして万全の体制ではなかったのだ。それを無理やり試合したために病気が悪化したのだ。」
アル「おーー、そうだったのか、で今日は何しに来たのだ。」
族長「フン、当たり前の事を聞くな、仕事に復帰するのだ。」
アル「えっ?まさか知らないのか。」
アルは助役を見る。
助役は、アルに首をブルブルと振っている。
助役「元族長には、免職通知をキチンと出していおります。元族長は一切の面会を拒否していましたが、狐人族の総意として通知しております。元族長の家族にも確認してもらっておりますので間違いありません。」
元族長「ななななななななにぃぃぃぃぃ。」
アル「当たり前だろう、仮病で職場放棄をしていたのだ。免職になっても仕方ないだろう。」
元族長「ままま待て、そんな権限は狐人族にはないぞ。儂がこの狐人族の決め事を造ったのだ。儂が言った事が決め事だ。分かったかーよそ者がー。」
アル「あーあの族長権限というものか。」
この狐人族の村(縄張り)には族長権限という特別な決め事が存在していた。他の狐人族ではいいや他種族でも存在しないものであった。
それは族長の言葉は絶対であり、何人もその権限を侵すことが出来ないと定めていたのである。
元族長「族長検眼が有るのだ。儂を排除する事はできない。」
アル「あーーまだ分かっていないんだな。説明してやる。いいかよき聞けよ。」
アルの説明は、狐人の決め事の内容から説明していく。狐人族の決め事は、一応縄張り内の者たちでみんなで決めた事になっている。その為に族長が死んだときや病気や怪我によって族長の職務が果たせない時の事も書かれている。それは族長の職務が30日以上、職務復帰できない場合は、次の族長が選出されると言う物であった。
アル「だから、もうお前は族長では無いんだ。」
元族長「なななんだってー、儂はそんな決め事知らんぞー。」
助役「何言っているんですか、狐人族の5か条ですよ。」
元族長「うっ・・・・・」
狐人族全体の決め事として五か条というものがありその一つの長にに対する決め事であった。
元族長「だ、だ、だが儂に一言あってもいいではないか、分かっていればすぐにでも復帰した。」
助役「何を言っているんですか、貴方には何度も面会を申し込んでいました。きちんと記録も取って在ります。毎日面会を申し込んだんですよ。知っていますか。」
元族長「知っ知らんぞそんな事はーーー、あーそうかこれは陰謀だな。儂を族長からずり降ろすための陰謀なのだ。これは陰謀なのだ。だから無効だ無効。」
助役は、大きなため息を吐いている。「ハァァァァァ、ホント困った人ですねあなたは、何時もそうでした。困ったら人のせいにしていました。又今回も同じですね、ですがもう新しい族長は決まっています。狐人族内の総意です。」
アル「元族長、そのくらいにしとけよ。もうお前に権限は無いんだ、これ以上騒ぐのであれば処刑となるぞ。」
元族長「き、貴様らぁぁぁ」
重鎮「族長待て待て、まだやり方は有る。重鎮達を集めて族長の選出をやり直せばいいだけだ。」
元族長「おーーーそうだそうだな。(ニヤリ)お前たち覚えておけこの屈辱は忘れないぞ。」
元族長と重鎮は会議室を出ていった。
アル「あの元族長は大丈夫なのか、何も理解していないようだな。」
助役「間違いなく理解していません。あの二人は誰とも会わなかったことで狐人族が変わった事も知らないのでしょう。」
元族長が、自室にこもっている間に狐人族(縄張り)内で力関係が変わっていた。
元族長に媚びへつらっていた者達は全て排除されてしまった。元族長権限により元最下層との試合に割り込んだ者たちであり、実力も無いのに役職に着いていた者達であった。
それは狐人の戦士や将軍も含まれていた。
本来実力主義である狐人族たちは強い者が上となっている。だがこの狐人族はある程度強ければ後は縁故が物を言う。
本当の実力主義となった狐人は、30日経過した後に実力を測る為に戦士、兵士、一般から総当たりの試合が行われた。その結果何と縁故採用の者達は、最下位争いとなってしまった。縁故の実力者であった将軍や副将軍は、縁故以外で勝つことが出来なかった。その実力は最下層の者たちと同じであった。
いや最下層の者たちより劣っていた。元最下層の者達は、事務仕事が出来るからだ。だがこの将軍は事務能力も欠落していた。
その後の事務能力テストでは100満点中、2点であった。断トツの最下位となっていた。
何しろ、公開された算数の計算テストでは1+1=2と1+2=3の2問しか正解が無かった。
他の問題では、5+6=56と答えるなど笑いを誘っているようであった。
又3-4=無回答であり、1×3=4と答えていた。
そんな将軍は、テスト回答が張りだされると恥ずかしいのかもう家から出る事が無かった。そしていつの間にか村から消えていたという。将軍の家族も探す訳でもなく、元から居ない者としたいようで、将軍の物は全て処分されたという。
これ程酷い縁故者は将軍だけであったが、他もだいぶ実力を隠している者(騙している)が多かった。




