506話 破綻
アルは、最下層にいた狐人20人を鑑定した。
20人は、アルが驚く結果となっていた。戦闘能力はほぼないが、知能が段違いに発達していたのだ。
狐人族の平均を知らないアルでもわかる程に20人は天才級と言っていい程に能力があったのだ。
鑑定の結果をアリに伝えると悲しそうに笑っていた。
狐人族にとって戦闘能力以外は評価されず、宝の持ち腐れとなっているからだ。
そんなアリにアルは、戦闘能力はスキルオーブで補う事が出来るが元からの自頭の良さだけはスキルオーブでもどうしようも出来ないと説明する。
知力を上げるスキルオーブはあるが、元から知力の高いものには絶対に敵わないと説明する。
アル「いいか、個人の能力からの上澄みがスキルなんだ。元が高ければいくらスキルオーブで賄っても叶わないんだよ。」
アルは20人にスキルオーブを使って戦闘能力を上げていく。身体強化を基本に魔法使いとして予定だ。
アリ「凄いな。魔法使いとはこれ程か。」
アル「だろう。あの20人は人と戦う事をあまり好まない、だから遠距離で戦える魔法にしたんだ。まぁ最悪接近戦も出来るようにしとかないといけないが、今はこれで自信をつけさせないとな。」
アリ「アルさん、もう少し増えても大丈夫かな。」
アル「ん、問題ないがどうした。」
アリ「狐人族のはまだまだ最下層の者達がいるんだ。出来ればそいつらも20人のようにしてあげたい。」
アル「いいぞ。それなら連れ出すのに協力しよう。」ニャリ。
アリは、最下層の者達を狐人に気付かれないように連れ出す計画をしていたが、それではダメだとアルが提案する。
アルは、堂々と連れ出して強くなったことをアピールし狐人たちのプライドをへし折ってやろうと張り切っていた。
数日後アルは、狐人族の族長宅を訪れて提案をしていく。
その提案とは、狐人の派遣要請であった。
狐人族長は、儲かる提案とあって乗り気だ。狐人に対してアルが今開発中の町(予定)に派遣しないかというものであった。派遣の内容は事務仕事であり、戦闘能力は必要なしとなっていた。
狐人族長は、落胆した。戦闘能力でアルにアピールして高額の報酬を貰うつもりであったからだ。だが族長の思惑とは違っていたが、高額の報酬が提案されていく。
アルは、狐人の者たちの中で知能が高いものを連れて行く。鑑定の結果を族長に示すと族長は驚き、即決で了承していた。
それは選ばれた者達が最下層の者たちであり、狐人族としては居ても居なくとも全く困らない者たちであったからだ。
アル「ならばこの120人を一人に着き毎月蒸留酒小樽一つだ。」
族長「良いぞ良いぞ。それでよい。」ニコニコ
アル「毎月は面倒だから、まとめて1年分渡そう。」
族長「アル殿、もう少し連れて行ってもらっても構わないぞ。」
アルは狐人の欲深さを垣間見た。
ため息が出そうになったがグッと堪え、笑顔で「ならば少し能力には欠けるが後100人程連れて行くかな。族長の顔を立てて小樽一つは変わらないようにしよう。」
族長「おーーーさすがアル殿だ。よく分かっている。」ニヤリ
狐人族
族長 1人
重鎮 10人
将軍 4人
副将軍 4人
大隊長 16人
部落長 24人 この者たちが狐人族の幹部と言われている。その他にも隊長や長隊長などがいるがその者達は幹部候補となっている。
狐人全体人口は3万人を超えている。狐人は多産という事もあり人口が増え続けている。
狐人特有のランクは、幹部である上記の者達が頂点として、下に戦士階級、兵士階級、村人(平民)階級となっている。そして最下位階級として最下層と呼ばれる者たちがいた。
今回アルが連れ出そうとしている者が最下層全て120人であった。
族長の提案であと100人程も連れ出すことになったが、アルの鑑定で次の最下層予備軍たちを連れ出すことにしたのだ。
後は、皆能力的には同じような者でありいじめる側であった事で連れて行く事はしない。
アル達が去ると狐人たちは皆大喜びとなっていた。最下層というもの達がいなくなり狐人たちにとって実に良い事のように思えていたからだ。だが実際は違っていた。
戦闘能力は無いが他は優れている者達であり、狐人族にとってなくてはならない者たちであった。
事務能力があり、狐人族の事務仕事をしていた者達であり、上司たちの事務方では能力欠落者であった。残っている者達は皆、真面に計算も出来ないのであった。
数日後
事務方上司「おいどうなっている。早く報告書を持ってこい。」
事務員「えーーッと、まだ出来ていません。」
上司「はぁ、今日が報告日だろう。何をやっていたのだ。」
事務員「・・・・・」
狐人族の事務仕事全てをしていた者達、120人と村内で事務仕事を行っていた100人が一斉にいなくなったことで狐人族は村の運営が麻痺してしまっていた。
この事実にやっと気づいた族長たちであるが、もう後の祭りでしかなかった。
重鎮「連れ戻すことはできないのか。」
族長「出来ないな契約書がある。それに今戻すことは狐人族にとって能力を疑われる事だ。意地でも戻すことはしない。」
重鎮2「ああそうだな。あの最下層が居なければ村がやっていけないなどと思われる事は狐人にとって屈辱だ。」
族長「事務屋共に仕事をさせろ。何年事務仕事をしているのだ。」
族長も甘く見ていた。最下層が仕事の殆んどを行っていたことは知っている。だがその3倍も事務に係る者たちがいる為に多少仕事が遅くなっても仕事自体はできると勘違いをしていた。
狐人の事務屋たちは、事務仕事が出来るから事務屋となったわけではない。戦闘能力が他の兵士より低いために事務屋の成ったのであった。その為に戦闘能力の低い最下層の者達は自分たちのプライドを守る丁度良い者達であった。
事務屋たちは自分達が戦闘能力が低い事を分かっている。自分達より戦闘能力のない最下層は、鬱憤晴らし丁度良かったのだ。
狐人の事務仕事は破綻した。
何をやっていいのかもわからずに、右往左往するばかりで何も出来なかった。
村の経済は大混乱となり、緊急で小人族を雇う事になってしまった。
行商に訪れた小人族だが、代金回収が出来なかった。そこで狐人族の内政が止まっている事に気付き仕方なく手助けを行った。
そして小人の行商たちが狐人の内政の全てを行なう事になっていく。




