502話 酒の力
小人の行商は、自分が失敗したことを痛感していた。
それは、新たに交易を始めた5種族の内虎人族と熊人族の種族が作り出す酒が、一切外に出ることなく自分達で全て飲んでしまっている事であった。
小人としては、かなり大量を造り出すことを計画して実行していたが、そのすべてが両種族の腹の中に納まってしまっている。
熊人族長「小人よー、頼む。蜂蜜酒の原料の蜂蜜を売ってくれー、頼むよー。」
小人「そんな甘い声を出しても無理です。蜂蜜はかなり貴重なんですよ。それがペロペロ、チューチューで腹の中に入ってしまったんですよ。どうするんですか支払いは待ちませんよ。」
熊人族長「うっ・・・・・・」
熊人族は、蜂蜜酒に歓喜した。種族を上げて造り出した蜂蜜酒は、熊人たちを魅了して虜になってしまった。その結果、熊人たちは、ペロペロ、チューチューと蜂蜜を肴に蜂蜜酒を飲んで楽しんでしまった。
蜂蜜は、貴重であり熊人にとって欠かせない物資の一つである。
近隣からの熊人たちは必至に集めたが全く足りず、小人の行商によって届けられた蜂蜜は酒に変わったが、熊人たちは自分達で全て飲んでしまっていた。
熊人族長「其処を何とか頼む。お願いだ。小人族しか頼り者がいないのだ。頼む。」
小人の行商も困った状態となり、何とか熊人族を立ち直さなければいけない状況となっていた。
小人は、熊人たちに養蜂の技術を伝授した。熊人たちは大喜びで蜂使いとなり蜂蜜の採取に勤しんだが、熊人たちの蜂蜜に対する情熱、いいや執念を小人は見余っていた。
蜂が必死になって集めた蜂蜜を熊人たちは蜂箱からぺロペロしてしまっていた。
これには、他の熊人たちは怒った。だが怒ったのだが自分達も新鮮な蜂蜜をペロペロしたいとの願望も生まれてしまった。
そうなると熊人たちは止まれない。熊人総出でペロペロしてしまった。蜂蜜酒の生産力が落ち、小人からの輸入で何とか蜂蜜酒を作り出したが、全て熊人たちの腹の中に納まってしまった。
小人「支払いが出来まいならば、交易は停止します。」
熊人族長「まままま、待ってくれ。交易中止となると儂は熊人たちに殺されてしまう。待ってくれーーー、頼む、小人よーー。」
下手な演技の熊人族長を冷めた目で見ている小人の行商であったが、熊人の財産は別にあった。
小人「ハーーーーッ、仕方ありませんこのままでは蜂蜜の代金回収が出来なくなりますから今回は協力しましょう。熊人族奥の縄張り内に鉱山がありますよね。そこの発掘許可を貰えれば、今の倍の蜂蜜を代金として毎月提供します。」
熊人族長「鉱山?そんなものあったか?」
小人「もしかして知らないのですか、ほらあそこの山が剥げていますよね。あそこには鉄の鉱山があるんです。赤茶けているのが証拠ですよ。」
熊人に取ってはげ山で何の価値もないのもであった。蜂蜜の取れない土地など価値は0であった。
熊人族長「あれが蜂蜜に成るのか、其れも毎月蜂蜜が届くのか。」
小人「はい我らに採掘権を貰えれば、毎月蜂蜜で賃料をお支払いします。」
熊人族長「許可する。」
小人「族長様、そんな簡単に許可出していいんですか。」
熊人族長「いいんだ、いいんだ。今の状況より蜂蜜が多く入ってくるんだ熊人は誰も反対はしない。」
熊人の蜂蜜酒は、熊人族内だけで消費されていく。幻の酒となり偶に縄張り外に出ると高値で取引される貴重品となっていく。
熊人たちの蜂蜜酒と蜂蜜は外に出ないだけだったが、虎人族も同じ状況となっていた。熊人たちは大人しく飲んでなめるだけであったが、虎人たちは暴力が加わる事でかなり大変な状態となっていた。
虎人「俺の酒だーーーーー。」
虎人2「これは俺のだー。」
虎人たちは、縄張り内でワインとビールを大量に作りだし、毎夜大騒ぎな宴会が開かれている。それは毎日がお祭りです。という程の宴会であった。
小人「売り物のワインを全て飲んでしまったとどういう事ですか。」
虎人族長「いやーーーー、小人よ、虎人族は酒が好きでな、宴会が盛り上がり、酒が足りなくなってしまった。仕方なくワインを飲んでしまった。」
小人「仕方なくじゃありませんよ。売り物ですよ。」
虎人族長「まーまー、少し落ち着け。ところで酒はっ持って来たか。」
小人「ある訳ないでしょう。ここで仕入れて他に持っていく予定なんですから。」
虎人族長「うっ、マジか。本当にないのか、一瓶も無いのか。」
虎人族の村内には、一滴の酒も無かった。
全て飲んでしまっていたのだ。
小人の行商は、この事実に信じられない表情をしてしまった。自分たちの飲む分と売り物の酒を全て飲んでしまったという。
小人が訪れる予定であった為に虎人たちは、明日になれば小人が酒を運んでくると物凄く簡単に考えてしまっていたようだ。
大虎になった者達の思考回路は、理解が出来ないものでった。
虎人族長は、必死になって小人に拝み倒す。今日の酒、今日の酒と呪文のように呟いている。
小人の行商もまさか酒が無いなどと思ってもいなかったが、この状況はかなり拙いと思った。
このままでは虎人たちの暴走する姿が脳裏をかすめていた。
小人「・・・・・酒を少しだけ出しましょう。」
虎人族長「おーーーー、流石小人族だー。」
小人「ただし、条件があります。条件を飲めなければ酒は出しません。」
虎人族長「大丈夫だ。どんな条件でも飲むぞ。」ニッコリと笑う族長であるが、小人はそれがダメなんだよと顔をしている。
小人のだした条件は、鉱山の鉄拾いアルバイトであった。熊人の縄り内にある鉱山でのアルバイトである。この鉱山は、鉄鉱石が露天掘りが出来る為に鉄鉱石を拾い集めてその量によって酒を支給する物であった。
虎人族長は、ニヤリと笑う。「その鉄鉱石で量を持っていけば酒と交換するという事だな。」
小人「交換します。鉄1キロに対して焼酎1本、ビールならば大ジョッキ2杯、ワインは中ジョッキ2杯です。」
虎人族長「乗ったーーーー。」
虎人族には、酒を買う金がもうなかった。その為にどうするかと昨夜会議という名の飲み会が始まって止まらなくなってしまった結果が今日の出来事であった。
その為に、解決策を示した小人の提案は、虎人族にとって酒を飲む事の出来る方法であった。
虎人族長「クゥーーー、これで何とかなるぞ。」




