499話 牛乳屋
アルとアンネローゼは霊人族の村をぶらついている。
それ程珍しい店がある訳ではないが、暇つぶしには丁度良いとブラブラしていた。
そして朝の牛乳屋の前を通ると族長の使用人と牛乳屋がなにやら揉めていた。
揉めていたというよりは、怖い、要らない、他を当たってくと言うような言葉が聞こえてくる。
アルとアンネは、(あーーーマジックバックか)と思いながら近づいていく。案の定、族長の使用人である家令が、牛乳屋にマジックバックを手渡そうとしているが、貴重なマジックバックである事と牛乳屋無勢がマジックバックなど使えないと拒否していたのであった。
家令「今後の事もありますから、受け取ってください。」
牛乳屋「何言っているんですか、今後なんてありません、私は牛乳を配達するだけですよ。牛乳ですよ。普通の牛乳にマジックバックなんて必要ありません。」
アル「あるぞ。」
「「えっ。」」
アル「だからマジックバックは、牛乳配達に必要なアイテムだといっているのだ。なー家令。」
家令「左様でございます。今アル様が仰ったことは事実です。」
牛乳屋「??????」
家令「今朝、レットブルの牛乳が定期的に入ります。その扱いを全てこの店でお願いしたいのです。」
牛乳屋「エッ、エーーーーーーー、無理無理無理です。」
牛乳屋は即答で答えていた。普通商売人であれば、貴重なマジックバックが二つも手に入れば大喜びで飛びついてくるだろう。だがこの牛乳屋は、トラウマが有るのか地道な商売を続けている。
だがそんな状況が通る訳もなく。アルとアンネと家令に説得されレットブルの牛乳を扱う事になってしまった。
その牛乳は、族長宅と数件の家に毎日配達を行なう事と定期便で小人の行商がレットブル牛乳を届ける事とになってしまった。
アル「小人には手紙を出したから、早ければ10日後には第一便が届くぞ。レットブルは鮮度が命と言っているから保管しなければなるまい。その為にマジックバックだ。」
牛乳屋「・・・・・・・怖いです。もし無くしたら、又自殺しなければなりません。」
アンネ「何か過去にあったのかしら。」
牛乳屋「・・・・・・はい実は・・・・・・」
牛乳屋の前世も商売を行っていた。その商売の中で騙され、裏切られ、最後は一人となり色々な罪を背負って自殺しなければならなかったという。もう商売はやらないと誓ったが、親からの家業を引き継がなければならず牛乳屋として地道な商売を行ない、一人で黙々と配達をする日々を送っていたという。
牛乳屋「商売を、いいえ商売を広げる事が怖いんです。又裏切られると思うと一人で牛乳屋をやる事が一番安心するんです。」
アル「そうかならば、今お前が一番信用する者にマジックバックを一つ預けろ。そいつにレットブルの牛乳を管理させろ。」
牛乳屋「えっ、一番信用できる者ですか・・・・」
そして、牛乳屋は一人の女性を連れて来た。
牛乳屋「幼馴染のマーリです。」
パカーーーン。
いい音がした。牛乳屋の頭をマーリが殴ったのだ。
マーリ「何言っているの、恋人でしょう、恋人よ。」
牛乳屋は、顔を真っ赤に染めて「こここここ、恋人です。」と告げているが、空気の読めないアンネが、ニワトリさんの真似ですかと真剣な表情で質問していた。それを見たマーリは大笑いとなり、牛乳屋の顔を真っ赤からさらに赤くなっていた。
マーリ「アハハハハハハ、久しぶりに大笑いしたわ。あなた面白いわねー。」
アンネ「そんなに面白いでしょうか、コッコッコッ、コケーコッコ。」ニコリ
アンネはニワトリの物まねが面白いと誤解していたが、誰も指摘する者は居なかった。
アル「まーあれだ、鶏の物まねは後にしてこのマーリさんがお前の一番信用できる者なのだな。」
牛乳屋「はい。」湯気が出ている。
アルと家令は、朝の事をマーリに伝える。伝説の牛乳の管理をお願いするためであり、牛乳屋が前世を乗り越えて生きていくことが出来るのはマーリの協力が必要だと訴えていく。
マーリ「任せて。やるわ。」
マーリの目がきらりと光った。
マーリは、スッと紙を出す。「モーリ、此処にサインして」
牛乳屋「サイン?何のサイン?」
マーリ「決まって言うじゃない。結婚証明のサインよ。」
牛乳屋「えーーーーー。誰と結婚するの相手の男は誰?俺の知っている奴?」
パコーーーーン。マーリは又モーリの頭を気持ちよくたたく。
マーリ「何言っているのあなたと結婚するのよ。ほら早くサインしなさいよ。」
牛乳屋「えっえっえっ。」
牛乳屋はマーリに急かされてサインをする。
マーリ「フフフフ、やっとだわ。あなたと会って18年ずっと待っていたのよ。」
一人盛り上がるマーリであったが、アルが牛乳屋のこれからの事を説明していく。
マーリ「任せて大丈夫よ。世界が裏切っても私だけは裏切らないわ。だって夫婦だもん。エヘヘヘ。」
牛乳屋は納得していなかったがマーリとアル達との話が勝手に進んでいく。無理やり感のある結婚であったが小さなころから子分のようにしていた牛乳屋は新妻に逆らう事が出来なかった。ならばそれに身を任せて流されていく。
その日から押しかけ女房となったマーリは、牛乳屋を仕切っていく。実際は牛乳屋一人しかいないのだが、マーリが采配し牛乳屋が従う形となっていた。
牛乳屋の表情は少し安心したような顔をしていた。
後日談
牛乳屋モーリと妻のマーリは、おしどり夫婦ではなく,女主人に従う下僕夫と呼ばれるようになった。
何時も妻の後ろを歩く夫は、下僕、三下、従者などを呼ばれていたが、夫婦仲を悪くいうものは偶にしかいなかった。その者はマーリに惚れている者である。
人を信用できないモーリであったが、妻だけは信用する事が出来、妻が信用、信頼できる者が雇われ牛乳屋はレットブルという武器で霊人一の牛乳屋になっていく。
牛乳屋は、後に乳製品を売り出す大商会に迄成長していく。
そのサクセスストーリーは、純愛ものとして劇に迄なり、少女たちに大人気となる。世代を超えて繰り返し上演されていくがその都度、モーリとマーリが招待されて喝采を浴びていく。
モーリ「俺恥ずかしいよ。」
パカーーーーン。「何言っているの私ん為よ、私が行きたいのよ。いいわね。」
モーリ「分かっよー、行くよー。」




