489話 馬と鹿は、馬鹿だった
鹿人族は、対蜂人族との戦の為に食料と武器を小人達から購入していた。
小人たちは、大量購入していく鹿人たちにも多少の割引も行っている。
鹿人族は、蜂人族(大鼠族)が縄張りに攻めてくると考えているようで防衛の為に村を強化していく。だが蜂人たちは鹿人の縄張りに入ることは無く。自分たちの縄張り(5種族)の街道整備に勤しんでいる。
縄張りの整備だけではないが対外的には街道整備だけやっているように見えていた。
鹿人たちは、すぐにでも蜂人族を中心に鹿人族の縄張りに攻め込んでくるのだと思い。準備していたが一向に攻めてこない事でかなり焦れてきていた。
鹿人族長「蜂の奴らは何を考えているのだ。何故攻めてこないのだ。」
重鎮「今、敵の内情を探らせています。もう少しで敵の作戦が解るでしょう。」
鹿人は、蜂人族を中心に探りを入れてくるが、蜂人たちのやっている事は街道整備であり、戦争準備ではなかった。
鹿人族の族長は、この報告に不満が爆発してしまった。
栄光ある鹿人族が、折角敵を撃滅するために待ち構えているのに何故襲ってこないのだと、族長は理解できない理由で怒り狂っている。
重鎮「族長、ならば蜂人の縄張りを攻めようではないか。」
族長「何を言っているのだ。敵が攻めて来なければあの作戦が使えないではないか。」
重鎮「攻めてこないのだから仕方ないだろう。それより縄張りを広げるチャンスだろう。時期が過ぎれば敵は戦力を回復していくぞ。」
族長「クッ、仕方がない。蜂人族を攻めるぞ。」
重鎮「違う違う、蜂人族ではなく。ロバ人族だ。ロバ人族ならば簡単に落とせるだろう。」
族長「そうだな、ロバ人族はならば簡単か。よしロバ人族の縄張りを貰うぞ。」
鹿人族は、待ち構える作戦を止めてロバ人族の縄張りを奪う事が決定した。この情報は小人の行商から蜂人、ロバ人、猿人、鼠人、大鼠人の5種族に伝えられた。
5種族間で伝令は街道が整備された事でかなりのスピードで移動が可能となり5種族間全てが半日から一日かからずに伝令が届くようになっていた。そして兵の移動速度も上がっている。
大鼠族長「ロバ人族へ鹿人は向かうか。」
蜂人族長「あいつらはこちらに来ないのか。」
両族長へ伝来が届いてすぐの言葉であった。その後は大鼠族はロバ人族へ援軍としてすぐに兵を出していく。ロバ人族の縄張りまでは一日かからずに到着する事が出来るだろう。
蜂人の族長は、ロバ人族の縄張りではなく鹿人族の軍の後方へ出る様に指示を出していく。
鹿人族の軍団は、大軍であった。鹿人族の威信をかけた戦いとして負けるわけにはいかないのだ。相手がロバ人族と言っても他に応援が到着する可能性があるからだ。
鹿人の予想では、鹿人の到着後、他種族の到着は早くて2,3日後でありロバ人族を滅ぼすには十分な時間と思われている。まさか街道整備で軍行速度が上がっているとは思ってもいなかった。
鹿の重鎮「あれがロバ人の村か、フン。貧しいな。」
隊長「あの村ならば1日かからずに占領できるな。皆の者聞けーー、ロバ人の財産を奪えー、ロバ人は奴隷とせよー。」
「「「「「おおおおおお」」」」」」
鹿人の方士たちは武器を高々と挙げている。もう勝った気でいるようであった。
鹿人から見れば、完全に奇襲が成功しているように映っている。それは鹿人兵たちから見てみれば自分達も蜂人族と戦うと思い込んでいたのだ。それが実はロバ人を襲う事になっていたからであった。自分達も騙されていたのだから敵も同じだろうと考えていた。
ロバ人「カバ鹿が来たようだな。」
ロバ人2「馬も鹿も、馬鹿ばかりだからな。」
ロバ人3「うほっ、馬の鹿も馬鹿ばかり、でホッ、面白いなそれー。」
隊長「お前らなー、敵は目の前まで来ているんだ。作戦通りに配置に付け。」
「「「「「はっ」」」」」
鹿人族は、大軍で押し寄せているが全軍が到着している訳ではない。鹿人の見栄でより大軍と見せる様に細長い列となり、いまだ出発していない部隊もある。総勢35000もの兵である為にかなりの長さとなり10キロを超えていた。
鹿の重鎮「全軍はまだ到着しないのか。」
隊長「はい、到着は翌日になるでしょう。今はまだ先頭集団だけです。先頭だけでも勝つことは可能でしょう。」
鹿の重鎮「いや、圧倒的強さを見せなければ鹿人の威厳が見せられないだろう。ここは待つぞ。今日は勝利の前の祝だ。ロバ人に見せつける様に大宴会を開くぞー。」
「「「「「おおおおおお」」」」」」
鹿は確かに馬鹿であった。
敵を目前として戦う事もせずに宴会などありえない選択をしている。鹿の隊長も兵たちも乗り気で咎める者は居なかった。
それは鹿の油断であるが、鹿人とロバ人では戦闘能力が全く違っている。その為に勝って当たり前であり、戦う前に降伏してくるのでは心配する兵士もいた。
ロバ人「おいおい馬鹿鹿が宴会の準備しているぞ。すぐに報告だ。」
鹿人の兵士たちは今日の酒と食料を嬉しそうに準備している。前衛部隊として10000人もの人数である。後続部隊も続々と到着している。準備しているが全く準備が出来ていない状態となってしまっている。大混乱中であった。
到着した鹿人部隊は、宴会している者と何も食べる者が無い者とで揉めていた。
兵「俺たちが到着して何で食料が無いんだ。やっとたどり着けば食い物が無いだとー。」
兵2「仕方ないだろう。自分たちの食料は自分達で運ぶ決まりだろう。」
兵3「先頭の者達は、全体の食料を持っている筈だ。嘘をつくなー。」
夜を通して到着している鹿人部隊は、用意されていない食事に不満であり、宴会をしている兵たちに怒りをぶつけている。
鹿の重鎮「何を揉めている、今ある食料と酒を出してやれー。明日はもっと豪華な食事も酒も用意できるのだー、食料が空になっても良い。全て出せー、ハハハハハ。」
ロバ人族の村の目の前でバカ騒ぎを起こしている鹿人たちは、ここが戦場である事を完全に忘れていた。夜通し続けられていいる大宴会と鹿人たちの怒鳴り声で鹿人たちは眠る事が出来なかった。日が昇る頃にやっと静かになっていた。
ロバ人「鹿は馬鹿だな、あれでは今日戦う事が出来ないだろう。」
ロバ人2「まぁ相手に合わせる必要もないけどな。」




