487話 蜂人条件付き降伏
蜂人族の族長は、唖然としている。呆けてしまったといってもいいぐらいに大口を開けている。
それは、蜂人軍全体が敵に対して迂回攻撃を仕掛けると思っていた所、戦いもせずに撤退してしまったからである。本陣に残っている蜂人の族長と供回りは、前面の敵に対してどうする事も出来ない状態となってしまっていた。
大鼠族の兵がゆっくりと一歩一歩前進してくる。
その足音は、蜂人の族長の命が削られている様な錯覚に陥っていた。
族長「ドドドドド、どうするのだー。」
側近「に、逃げましょう。今なら逃げれます。」
側近の一人が族長に提案すると族長の意見も聞かずに側近たちは行動に移していく。
慌てたのは族長である。このままでは一人になってしまう恐怖から側近たちと共に逃げていく。だが方向が不味かった。蜂人の村とは別方向に逃げてしまった為に大鼠の兵士たちに追い回されることになる事にまだ気づいていない。
その頃、蜂鼠の村は大混乱中であった。大鼠の兵たちが村へ襲い掛かり崩壊の危機であった。
応援部隊としてロバ人族と猿人族がいたが最初の一撃で四散してしまっていた。
大鼠族長「聞けーーーーーー、我らは大鼠族である。蜂人族は大敗したー。」
ザワザワザワザワ
大鼠族長「降伏するのであれば、殺しはしない。我らと戦うのであれば皆殺しとなるだろう。」
ザワザワザワザワザワザワ
一人の蜂人の老人が表へと出てくる。
蜂人「この村は戦えない。降伏する。」
蜂人が降伏し数時間後に蜂人の転進した兵たちが村に戻って来た。そこで見た光景は蜂人村が大鼠族に占領されている現状であった。
蜂人たちを指揮していた隊長は、軍を止めて交渉へと向かっていった。
隊長「交渉に応じていただきありがとう。」
大鼠族長「なに、戻ってくることは分かっていたからな。」
隊長「・・・・・・」
大鼠族長「ところで蜂人の族長は如何した。兵の後ろでふんぞり返っているのか。」
隊長「いいえ、この軍の中にはいません。本陣を守っています。」
大鼠族長「ほーーーっ、珍しいな。」
大鼠の族長は隊長の言葉に眉を少し動かしただけだが、何もいう事は無かった。
隊長「私は軍の全権委任されています。ここで戦う事は蜂人の滅亡を意味しています。条件降伏を提案します。」
大鼠族長「条件降伏か、まぁ仕方ないだろう。蜂人はまだ戦う力を残しているからな。」
そう大鼠の族長の誤算は蜂人族の兵がもっと少なくなっている予定であった。蜂人の族長が小出しに攻めた事で多少は減っていたが、兵力としての力はまだまだ残っていた。
蜂人隊長とロバ人隊長、猿人隊長そして大鼠族長とで、蜂人の条件降伏について話し合いが持たれてた。
その中で、蜂人族は、大鼠族の一部支配を受け入れた。一部とは大鼠族が戦争時には蜂人は大鼠の軍に組み込まれるというものであった。
これは、蜂人にとって悪い事ではなかった。今この地域では大鼠族と鼠族は最大勢力と言ってよいだろう。その軍の組下であるが、味方となれば縄張りは守られることになるからだ。
蜂人は足られた縄張りも一部返還されることになった。
大鼠との戦闘に負けたが、縄張りは一部取り戻した事で蜂人たちは喜んだ。蜂人隊長の評価が爆上がりとなっていた。
立会人としてその場にいたロバ人隊長と猿人隊長の二人は微妙な表情となっていた。蜂人族が3者連合から抜けた事で残りの2者は、大鼠族と戦わなければならないからだ。そして蜂人族も敵になってしまったのであった。
大鼠族長「ロバ人、猿人のご両人は今の蜂人族の条件付き降伏(幸福)の証人となるように。今後の蜂人族は大いに繁栄していくぞ。降伏が幸福になるだろう。」
ロバ人隊長「は?駄洒落ですか、笑えませんな。ですがロバ人も条件付きの降伏を提案します。正式には族長の判断となりますが、蜂人と同等以上の条件ならば受け入れるでしょう。」
猿人隊長「うちも同じでしょう。」
ロバ人と猿人族は、蜂人より条件が良ければ降伏すると提案してきた。
この影星では、今回のような曖昧な決着は少ない。普通であれば村は蹂躙されて死人はもっと出ている。負けた種族のの多くは奴隷とされ死ぬまでこき使われる。
だが今回は、大鼠の族長が条件付き降伏と村の蹂躙を行わなかった事で女子供の死者が出なかった。
ロバ人と猿人は大鼠族の下に着いても問題ないと判断したのであった。
大鼠族長「我らは、むやみな殺しはしない。小人族や中人族の一部と交流を開始している。これからは共存共栄こそが発展していく鍵と思っている。」
この電撃的ともいえる大鼠族の勝利は鹿人族に衝撃を与えた。
鹿人族は大鼠族が3者連合との戦争で疲弊した頃合いで参戦するつもりであった。ところが3者連合は大鼠族の組下となってしまったのだ。焦らない方がおかしいだろう。
鹿人族長「3者がこれほど早く降伏するとは思わなかった。」
重鎮「族長、どうする。大鼠は強者となった。戦うか。」
鹿人族長「当たり前だ。栄光ある鹿人が戦いに負けることは無い。」
重鎮2「だが簡単には勝てんぞ、今では相手は大鼠族、鼠族、ロバ人族、猿人族、蜂人族の5族連合となっている。縄張りだけ見れば同格となってる。」
鹿人族長「5族合われてやっと我らの縄張りと同格なのだ、何を恐れる事があるか、烏合の衆である5族が我ら鹿人に敵うはずがない。」
この鹿人族と大鼠一派との戦いは、そう遠くないうちに始まるだろう。その戦争準備に邁進する鹿人たちにもう一つの敵が静かに迫っていた。
小人「毎度ー、鹿人さん。今回は大量の酒と食料の注文ありがとうございます。」
鹿人「おーー、さっそく酒と食料を届けてもらってありがたい。ここに降ろしてくれ。」
小人族に鹿人から大量の注文が入った。戦争準備に食料を確保していたのだ。だが小人族は鹿人の味方ではない。まぁ大鼠族の味方でもないが、大鼠寄りと言ったところだろう。
小人族は行商などで情報が入ってくる。その情報を元に解析すれば各種族の行動が読めてくる。
今回の様に解りやすいものは、別として各種族の動きを探る事は重要であった。
小人「鹿人と大鼠との戦争を決意したみたいだね。」
小人2「鹿人は決断が遅いね。これでは又大鼠族が勝利するね。」
小人3「でも鹿人族は、体格も武器も人数も豊富だから油断はできないよ。」
小人「それでもあの大鼠の族長ならば、やるでしょうね。」
小人2「小人族は、みんなの味方だから味方にも敵にも食料を売らないとね。」




