431話 広がり
拠点に戻って来たアルは、デュラハンの事は指導騎士に任せていた。
アル自身は、この拠点の内政事務を黙々とこなしている。
今この拠点はかなり安定しているといってよいだろう。白オークとの戦闘もかなり少なくなっている。
いや実際は、白オーク族の一部はアル達にすり寄り交易も行っている。急激に発展していく拠点は、周りの種族たちの脅威となっているが、逆に希望にもなっていた。今までの原始的な生活から豊かで暮らしやすい生活を垣間見てしまったからであった。
拠点から持ち込まれる。食料や酒、そして便利な道具に周りの種族は、敵対するより交易によってもたらせる利益を知ってしまったのだ。
これはもう止める事は不可能であり、自然の流れに任せる以外に方法が無いのだ。
アル「順調だな。」
騎士「はい、小人の行商たちがかなりやり手の様で各種族はいいように手玉に取られています。」
アル「別にだましている訳ではないのだろう。」
騎士「もちろんです。小人の行商は誠実に商売を行なっています。ですが各種族は今まで商売を行った事が無いために小人たちのいい値、言いなりとなってしまっています。」
アル「まぁお互いの取引だし余計なことは言いたくないが、各種族にも商人をいや商売のイロハを教えないといけないかもな。」
騎士「はい。」
アルは拠点をより安定させるために近隣の種族との融和を加速させていた。蜥蜴人ともかなり親密な交易相手となりもう争う事は無いだろうと思われている。蜥蜴人たちがアル達の拠点に出入りするようになり交易品を売る為に拠点に店も出す用になっているからだ。蜥蜴人たちの交易品は、蜂蜜、スパイダーシルク、果実、そして脱皮後の自分たちの抜け殻であった。この脱皮後の抜け殻は鎧として高い評価となっている為にかなりの高額となっている。最初は蜥蜴人たちもお前ら大丈夫かという顔をしていたが、商品となる現物を見せられると態度が変わって来た。
実際蜥蜴人たちは、何か変な趣味でも持っているのかと疑っていただけであった。
蜥蜴人たちは鎧など着なくても別段困る事は無い。自分自身が最初から鎧を着ているからだ。
アル達の作成する鎧は、蜥蜴人の優秀さをアピールする役目もあり、脱皮する蜥蜴人は大事に扱うようになっていた。それはそうだろう、今迄ただのゴミであった抜け殻大金となる事が分かったのだ。大事にすることは当り前であった。
小人「これは・・・」
蜥蜴「へへへへ、これ初物だぞ。」
小人「金貨、いやワイン大樽でどうかな。」
蜥蜴「大樽かぁ、いいぞ普通は中樽だしな。」
小人「蜥蜴人の初脱皮は基調と言われている事が分かるよ。これは凄い、この柔軟性も凄いけど、この薄さでこの強度はありえない。本当に優れものだよ。」
蜥蜴「まぁな、へへへ俺たちは元から優れているからな、へへへへ。」
蜥蜴人たちの最大の強みは、自分たちが生産者となっている事であった。蜥蜴人たちは抜け殻が商品となり高値となっている事で皆、必死で脱皮しようとしていた。それは蜥蜴人にとって決して悪い事ではなく良い方に傾いている。脱皮する事で体が新しくなりより大きく強靭となっていく。
よく食べよく運動をして脱皮を早める蜥蜴人たちは、自分たちも気づかぬうちにかなりの強者へと変わっていた。
もし今アル達と戦闘となればアル達はかなりの苦戦となっていただろう。今の蜥蜴人たちは一回りも二回りも大きくなり、そして強靭となっていたのである。
初物抜け殻を手に入れた小人の一人は、すぐに製品とするために作業へと取り掛かる。この抜け殻は二つの商品に出来る。一つはインナーである。もう一つは小人たちの鎧であった。勿論小人用のインナーも作る事が出来るが、鎧とした方が有益であった。
小人族は力が弱く、重い鎧など斬る事が出来ないのだ。その為にこの蜥蜴人の初脱皮の軽く、薄く、伸縮性のあるこの初脱皮は貴重であった。
ルンルン気分でどちらにするかを考えている小人である。それはインナーとして高値で売り抜くか、自分用の鎧を作るかで少しだけ悩んでいた。
小人「やっぱり答えは決まっているよな。自分の鎧だよな。」
そして後日小人は鎧を着こみ拠点でお披露目を行ない、自慢して回っていた。
小人「これ凄いな、いいなー、俺も欲しいなー、いいなー。」
小人2「いいなー欲しいなー。」
小人族にとってこの鎧は憧れの物となっていた。
蜥蜴人たちは初脱皮が物凄い高値で売れる事が分かると何故か皆子作りに励んでいたという。噂であったが数年後に何故か蜥蜴人の初脱皮品が大量に出回ったという。
そんな小人たちの憧れ品とは別に確実に売れる商品も開発?されていた。
その商品とは、調味料であった。まぁ実際には拠点内で生産して他で売るという物であったが小人たちの独占となっている。アル達では各所属に売る事が出来ないからだ。
小人族は、影の支配者となっている。力の弱い小人族であったために他種族内に入る事が出来る。その為に各種族の情報も取り放題であり、強味弱みも小人たちの情報となっている。
小人たちは、星の支配など全く考えていない。自分たちに出来る事を確実に行っているだけであり、より楽しく暮らすことを考えている。
実際に小人たちの生活か激変している。今までは地下に隠れながら暮らしていたが、今では拠点を中心にして堂々と地上で暮らせるようになっていた。それは各種族への交易によって小人たちが重要人物に変わっていたからであった。各種族との交易は小人族以外に出来る者がいなかった事で、小人族の地位が上昇しているのであった。
白オーク「おーーこれ欲しかったんだ。」
小人「そうでしょう、そうでしょう。このワインは貴重なんですよ。何しろ20年物ですからね。」
白オーク「ゴクリ。欲しいでも高いよな。」
小人「高いですけど、今回はこの集落とは初めての取引です。ここは大盤振る舞いしますよ。」
白オーク「おおおおお流石小人族の商人だー。」
小人の行商と白オークの村長はお互いに納得の取引となった。白オークは貴重なワインを手に入れご機嫌であり、小人は、継続的な取引ルートを手に入れる事が出来た。
こうして小人たちの商売網は確実に広がっていった。




