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自作小説倶楽部 第24冊/2022年上半期(第139-144集)  作者: 自作小説倶楽部
第144集(2022年6月)/季節もの「六月の花」&フリー「職人技」
22/25

02 柳橋美湖 著  六月の花 『北ノ町の物語 97』

【あらすじ】

 東京のOL鈴木クロエは、母を亡くして天涯孤独になろうとしていたのだが、実は祖父一郎がいた。手紙を書くと、祖父の顧問弁護士・瀬名が夜行列車で迎えにきた。そうして北ノ町に住むファミリーとの交流が始まった。お爺様の住む北ノ町は不思議な世界で、さまざまなイベントがある。

 ……最初、お爺様は怖く思えたのだけれども、実は孫娘デレ。そして大人の魅力をもつ弁護士の瀬名、イケメンでピアノの上手なIT会社経営者の従兄・浩の二人から好意を寄せられる。さらには、魔界の貴紳・白鳥まで花婿に立候補してきた。

 季節は巡り、クロエは、お爺様の取引先である画廊のマダムに気に入られ、そこの秘書になった。その後、クロエは、マダムと、北ノ町へ行く夜行列車の中で、少女が死神に連れ去れて行くのを目撃。神隠しの少女と知る。そして、異世界行きの列車に乗って、少女救出作戦を始めた。

 異世界では、列車、鉄道連絡船、また列車と乗り継ぎ、ついに竜骨の町へとたどり着く。一行は、少女の正体が母・ミドリで、死神の正体が祖父一郎であることを知る。その世界は、ダイヤモンド形をした巨大な浮遊体トロイに制御されていた。そのトロイを制御するものこそ女神である。第一の女神は祖母である紅子、第二の女神は母ミドリ、そして第三の女神となるべくクロエが〝試練〟に受けて立つ。ダンジョンの試練を達成し、第三の女神となったクロエ。さらにもう一つ待ち構えた最後の試練は、恋!


挿絵(By みてみん)

Ⓒ奄美「クロエ」 

     97 六月の花(黄色い薔薇)


 ご機嫌いかが、クロエです。

 今、私は、北ノ町から通じている異界の果ての町にいます。町はずれに〝心〟の形を模した池があり、畔に立って半べそをかいていると、マダムがやってきました。


          ◇


 祖母の紅子は、死別していたことになっていたので、縁遠い感じで、ちょっと話づらい。母のミドリも、現世では、死別していたことになっているのですが、奔放なところがあって、生前から、この手の話しをするのにはためらいがありました。――その点、画廊オーナーのマダムは、とても身近で相談しやすい方です。

「クロエ、お茶しにいかない?」

 大陸の最果てにある〝竜骨の町〟は大きな町ではなかったのですが、それでも、通りに出ると洒落たお店が並んでいます。素敵な帽子屋さん、靴屋さん、ブティック。私たちはウィンドウショッピングを楽しみました。

「クロエのパーソナル・カラーは黄色。素敵なワンピね、プレゼントするわ」

「いいんですか? それにしても、なんで私のパーソナル・カラーは黄色なんです?」

「傍目で見ていたらそう思ったの。世の中、そんなものよ」

 マダムの根拠は未だ私には分りません。ですが、私がワンピに合わせて、帽子とか靴とか買い足していくと、いつの間にか、黄色の服飾品が増えていきます。不思議なもので、そんなことから黄色が好きになっていきました。

 それから私たちは、レコードの音楽に誘われるように、近くのカフェに入りました。

 席に着くなりマダムが、聞いてきます。

「クロエ、結論は出たの?」

 最後の試練となる花婿選び。候補三人のうち一人を明日までには決める予定だった。花婿候補というのは、お爺様の顧問・瀬名さん、地元ベンチャー企業を立ち上げた従兄・浩さん、そして魔界の貴公子・白鳥さんでした。ところが、候補三人のうち、白鳥さんが棄権。私は、マダムに、白鳥さんに失恋したことを打ち明けました。

「三択が二択になった。迷いのものもとが整理されて良かったじゃない」

「そういうものでしょうか?」

「そういうものよ、世の中なんてものは……」

 マダムと話していると不思議、ちょっと気が晴れてきました。


          ◇


 このときです、町の横に浮かんでいた、カットされたダイヤモンドのような形をした、先の試練の場であった浮遊ダンジョン〝トロイ〟の尖った基部が、ドスンと地面に刺さり、さらに横倒しになったのです。だから町は大騒ぎ。パニックになって右往左往していました。

 同災害で、瀬名さんと浩さんは、住民と協力し合って、避難所となるテントを設営したり、飲料水・水道を確保して、炊き出しをしたりして下さっていました。

 後で聞くところによると瀬名さんは、〝トロイ〟倒壊時、瞬時に安全な経路を見極めて、避難民を誘導していたとのことです。

 避難民の少女の一人が、どこで摘んできたのか、黄色い薔薇一輪を瀬名さんに手渡しました。瀬名さんは、花をジャケットの胸ポケットに挿して、照れ笑いしています。

「クロエ、瀬名さんに尊敬のまなざしだよ」

 黄色い薔薇花は、尊敬を意味するのだそうで、よく娘さんが、父の日に贈る花束なのだとか。――え、私、実はファザコン?

「クロエはファザコンというより、グランド・ファザコンかもね」

 マダムは微笑を浮かべていました。

 それでは皆様、また。


          By・クロエ

【主要登場人物】

●鈴木クロエ/東京暮らしのOL。ゼネコン会社事務員から画廊マダムの秘書に転職。母は故ミドリ、父は公安庁所属の寺崎明。女神として覚醒後は四大精霊精霊を使神とし、大陸に棲む炎竜ピイちゃんをペット化することに成功した。なお、母ミドリは異世界で若返り、神隠しの少女として転生し、死神お爺様と一緒に、クロエたちを異世界にいざなった。

●鈴木三郎/御爺様。富豪にして彫刻家。北ノ町の洋館で暮らしている。妻は故・紅子。異世界の勇者にして死神でもある。

●鈴木浩/クロエに好意を寄せるクロエの従兄。洋館近くに住み小さなIT企業を経営する。式神のような電脳執事メフィストを従えている。ピアノはプロ級。

●瀬名武史/クロエに好意を寄せる鈴木家顧問弁護士。守護天使・護法童子くんを従えている。

●烏八重/カラス画廊のマダム。お爺様の旧友で魔法少女OB。魔法を使う瞬間、老女から少女に若返る。

●白鳥玲央/美男の吸血鬼。クロエに求婚している。一つ目コウモリの使い魔ちゃんを従えている。第五階層で出会ったモンスター・ケルベロスを手名付け、ご婦人方を乗せるための「馬」にした。

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