6 あらかたは済んだ
あらかたは済んだ、あとは帰り道だ。
あいつが河岸を変えようと路地に入って陰に入ったときにあいつのクチャくちゃで拵えたラバーを少しだけ元の毒に近いHzまで溶かして唾でも嘔くようにペッとトラップしたらアロンアルフアに掴まったゴキブリみたいに身動き取れなくなっている。あとはかたちが残らないように、いままであった命がなかったように、済ませていくだけ。殺人ではない。殺はつくが人の取れた屠殺の方だ。お正月のお屠蘇のように邪なものを屠る意の少し凝った言い回しを充てていたい。
ふわやセンマイみたいな栄養よりも嚙み応えの触を食してる手合いは、解していっても大したものは溢れてはこない。むかしの大げさな時代劇にあった鮮血シャワーのシャーつける音は出てこない。もともとバラバラだったのがかろうじてくっついていた身体はすぐにもとのパーツの解解に戻っていく。ふわやセンマイやアルコールの一滴もないジンジャーエールのしゅわしゅわした泡の粒まで小っちゃく離され飛んでいく。
もともとがクチャくちゃで出来上がってる手合いたからしゅわしゅわのジンジャーエールもクチャくちゃのリエゾンでタンポポの産毛みたいに飛んで行って、消えていく。
幼い頃に出ていたアニメの悪役みたいにさぶいぼのぶつぶつは斑になって薄くなって点々がなくなって夜空の向こうのブラックホールにバキュームされるみたいに消えていく。
駆除というのも聞こえてきたが記憶にさえ留めることが出来ない遠くにいった邪音にこれ以上の悪態を流すことはない。おわったのだ。
消滅撲滅までの韻を踏み了となる。
あたしは踵を返す。
あとは外階段を登って204号室とだけ書かれたミソフォニアのアジトに帰りたい。ドアを開けたら、記憶さえ遠いブラックホールに飛んでしまった元は邪音のラバーマンはその時分には消滅してしまっているから、あたしはもちろん裸ん坊。ただのオバさんのリアルなオールヌード。
押入れを開けて、羽目板を剝がし、地下空間まで続く防音壁に囲まれた音のない無音のシャワーを浴びてゆっくり眠りたい。




