奴隷商との出会い
「ごきげんよう。」
どこか冷淡さを含んだ挨拶だった。こちらが何かを返す前に、
「大変上等な奴隷ですな。どちらでお買い上げに?」
そう続けてきた。
“上等”という言葉から、自分とルイぴっぴは対象外だと判断する。これはきっと、レン君のことを言っている。
緊張が走る。
まさかこいつ――レン君を追ってきたやつでは。
「ごきげんよう。私はイサメと申します。こちらのレン君は、昔から私に仕えてくれているのですよ」
質問には明確に答えない。人生の処世術である。
「ほうほう。これは失礼。わたしはこの先のピエタの街で奴隷商を営んでおります、ピッツァーと申します。以後お見知りおきを」
やはりどこか、冷たい声色だった。
「いやはや、従僕でしたか。同業ならぜひとも購入させていただきたかったのですが。まれに見る美しさですな。さぞかしお高いだろうに……」
興味のすべてはレン君に向いているらしく、肌がきれいだの、髪のツヤだのと、そんなことばかり言っている。
いまだに、こいつがレン君のことを知っているのではないかという疑いは晴れない。
――そのとき。
ガサガサ、と上の方から音がしたかと思うと、ド、ド、ド――と、何人かが上から降り立つ音が続いた。
「止まれ。身ぐるみ全部置いてきな」
どすの利いた声。
レン君が、耳元で小さく告げる。
「五人ほどです。盗賊のようです」
ばしん! ひひーん! ばからばから――と、続けざまに音が響く。
「ピッツァーは逃げました」
レン君の声が続く。
おのれ、と思うのは一瞬。
この状況、どうする――と、頭が真っ白になる。
「ちっ、商人のほうは逃げたか。まあいいや、もとから狙いはこっちだしな」
ぐひひ、と下品な笑い声が重なる。
「ごしゅ、おなかへったねー」
ルイぴっぴはのんきだし、
「ご主人様、どうしましょう」
レン君まで落ち着いた声で聞いてくる。
倒せる?
短くレン君に問いかけると、
「はい」
即答だった。
――なら。
「私とルイぴっぴを守って!」
そう叫びながら、今日の晩ご飯の相談をしてきていたルイぴっぴを胸に抱き込み、丸くなる。
人のうめき声が聞こえてくる。
それがレン君のものなのか、盗賊のものなのかも分からないまま、ただ身をすくめていた。
しばらくして。
「おわりました~」
明るい声が響いた。
恐る恐る顔を上げる。
「どうなったの?」
と問えば、レン君が淡々と答える。
「相手は五人。全員、身ぐるみを剥いで縛りました」
――早すぎない?
疑問は浮かんだが、助かったことに安堵する。
ふと、強く抱きしめすぎたルイぴっぴの様子を気にすると、
「もっと強く抱きしめてくれ~!」
一匹だけ、妙なテンションで盛り上がっていた。
……まあ、無事ならいいか。
とりあえず、その要望は丸ごと無視して――
おのれ盗賊、と、湧いてきた怒りをぶつけるように、手当たり次第に杖を振り下ろした




