盗賊に常識を習う
全然当たらない。
いい加減やめて、
「やいやい盗賊ども、よくもか弱いうちらを襲ってくれたな! 全員縛り首にしてくれるわ!」
と、相手が動けないのをいいことに、強気で言ってみる。
レン君にコテンパンにされた後だからか、こけおどしもそれなりに効くようで、ひぃーとか、お助けとか、情けない声があちこちから漏れてくる。
ただ一人だけ、威勢のいい声があった。
「殺したきゃ殺せ。こんな稼業だ、覚悟はできている。ただ、こいつらは俺が脅してやらせただけだ。こいつらは逃がしてやってくれ」
――盗賊のくせに、殊勝なことを言う。
かしら、と周りから小さく声が上がった、その瞬間。
どか、ばきっ――と鈍い音が響く。
「誰が、許可なくしゃべっていいと言った」
レン君の、冷えきった声。
さらに、二、三発。鈍い殴打音が続く。
もうゆるひて……と、呂律すら回らなくなったらしい盗賊たちの声が、地面に落ちていく。
さすがに少し可哀そうになって、
「まあまあ」
と、レン君をなだめる。
さて、と。
「この先の街、確かピエタといっていたか。そこで罪人として引き渡すか」
そう口にすると、
「そんなこと、できるわけないだろう」
頭と呼ばれた男の声が返ってきた。
レン君がまた殴りかからないように、すかさず、
「なぜ?」
と問い返す。
「教える代わりに、俺たちを逃がしてくれるなら……どうだ?」
――こいつ、足元みやがって、図に乗るなよ。
怒りが込み上げてきたが、情報は大事だ。
ぐっとこらえて、話を続けさせることにした。




