表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/59

ああ、不便だ。

「もうっ!、ルイぴっぴ。このまま進んでも大丈夫? 道とかある?」

 と聞いてみると、

「くさむら、あと、みちあるよ、ごしゅ」

 と返事があった。なんというか、進んでいいのか不安になりながらも、慎重に進んでみる。

 少しして、棒でつついたときの音が、しゃっしゃっという軽い音から、じゃっじゃっと背の高い草に当たる音に変わった。

 さらに少し進むと、どすどすと、固めの地面に当たる感触に変わる。

 距離にして数メートルほどだが、考えることが多くて大変だ。

「ふぃー、道に出たかね。ルイぴっぴは、どっちに行ったらいいと思う? 人がいる方がいいな」

 というと、ふんふんと鼻を鳴らしたルイぴっぴが、

「ごしゅ、あっちからなんか来るよ」

「あっちってどっちさ?」

「あっちは……あっち!」

「はいはい、あっちね。で、何が来るの?」

「わかんない。なんか、へんなの」

 あっちがどっちか分からないので、とりあえず待ってみる。何が来るのか分からないことに、不安を覚える。

 すると、た、た、た、と、誰かが走ってくる音が左から聞こえてきた。荒い息遣いとともに。

 一瞬の逡巡。意を決して、

「もし、すみません。道をお教えいただけないですか? 目が不自由なもので」

 つくづく、見えるというのは大切だと感じた瞬間だった。見えていれば、なりを見て、話しかけてもよいか判断できるのだが、今は四の五の言ってはいられない。

「はあ、はあ、はあ……ああ、はい。ぼくは、どうしたらいいのでしょう?」

 目の前から声がした。たぶん、自信はないけれど男性……? 

女性といわれれば女性な声色で、でも「ぼく」と言っているし……。

 それはさておき、妙な返しだと思ったが、

「呼び止めてしまい、申し訳ない。町へ行きたいのですが、方向を教えてもらえませんか?」

「ぼくも、ここら辺は知らなくて……ぼくは、ぼくは、どうしたらいいですか?」

 どうしよう、会話が。ルイぴっぴと話すより難しいかもしれないと思い始めたが、めげずに続ける。

「では、あなたはどちらに向かわれているのでしょう?ああ、そういえば、名前を名乗っていませんでしたね。私はイサメといいます。こっちのうさぎはルイぴっぴという、私の家族です。あなたのお名前は?」

「えっと、ぼくは、ただ道の先へ行きたくて……」

 一瞬、そこで黙り込み、

「あ! 名前はあります! きゅう、はち、はち、はち、ぜろです!」

 数字?と聞き返したくなったが、ぐっと我慢して、

「教えていただき、ありがとうございます。お名前、少し長いので……キューさんとお呼びしても?」

「ええ、はあ……まあ、大丈夫です!」

 なんだか歯切れの悪い返しだったが、ともかく、

「立ち話も何なので、向こうで座って話しましょうか?」

 と、先ほど自分が歩いてきた方向を指さす。

 すかさずルイぴっぴが、

「ごしゅ、そっち行ったら木にぶつかるよ」

 と教えてくれた。

 キューさんと話しているうちに、体の向いている方向が変わって、いつの間にやら、後ろも変わっていたらしい。

 ああ、つくづく、見えないって不便だ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ