一寸先はというけれど
立ち上がったはいいものの、一歩も動くことができなかった。
闇の中を往くとは、こんなにも怖いものだったかと――知っていたはずなのに。いや、それは物語の中で知っていただけだった。
前に道が続いているのかさえ分からない恐怖。
一寸先は闇とは、よく言ったものだと、ぼんやりと思う。
そのとき、不意にルイぴっぴが、ぴょんっと腕の中から飛び出した。
「どこいくの!?」
驚いて声を出すと、右手に何かがトントンと軽くたたかれる感覚がする。
すぐにそれをつかんでみると、棒……?
両手で持ってみて、少しずつ形を確かめる。長めの、木の枝のようだった。
ああ、そうか。
「ありがとう、ルイぴっぴ。これで歩けるよ」
そう言うと、足元からむふぅーと、ドヤっという顔をしているであろうルイぴっぴが、満足そうに鳴いていた。
ゆっくりと、道を棒でつつき、そこに道があるのだと確かめながら進んでいく。
先ほどまでの恐怖は、少しずつ薄れていた。
それは棒を手に入れたからというよりも、そばにルイぴっぴがいてくれるからだと思った。
自分には「盲導犬」ならぬ「盲導うさぎ」がついているのだから。
なんだか温かい気持ちになって、歩を進める。
「ちなみにルイぴっぴ、このまま進んでもいいの?」
と聞けば、
「ルイぴっぴ、知らない」
……急に不安になってきた。




