表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/59

関所を越えて

 馬車が大きな関所の前で止まった。

「相変わらず、この世界の馬車は腰にくるね」

 ため息交じりに、レン君の手を借りながら馬車を降りる。

 さすが国境といったところか。

 比較的栄えているピエタの町と比べても立派な関所が、そこには佇んでいた。

 だが、スカイリアからティアーノへ向かう道は驚くほど人が少ない。

 反対に、ティアーノからスカイリアへ向かう道には、まばらながら人の姿があった。

「全然人がいませんねぇ。これも戒厳令の影響でしょうか?」

 レンが不思議そうにつぶやく。

 受付でティアーノへ入りたい旨を伝えると、門番は少し驚いた様子を見せた。

 しかし、きちんと身分証を提示すると、

「入るのは構わんが、こちらへ戻るには数か月待たされるかもしれん。それでもいいのか?」

 そう忠告しながらも、入国を許可してくれた。

 国境を越えるため、荷物の検査を受ける。

 イサメ、レン、酒呑童子の三人分の通行料を支払う。

 ルイぴっぴはペット扱いなので無料。

 ちなみに剥面ブラザーズは、戦闘力皆無ということで、ピッツァーに別の仕事を紹介してもらい、お留守番である。

(やっと身分証が役に立った)

 そんなことを思いながら、懐へしまい、関所を越えていく。

 関所を抜けると、すぐ宿場町になっていた。

 町の看板には、

『トッド・タウン』

 と書かれている。

 見渡しても荒野ばかり。

 まるで西部劇に出てくるような町並みだった。

「さてと。まずはピッツァーさんから紹介されたトッドさんを探すかね。町の名前から人の名前を付けたのか、人の名前から町の名前を付けたのか。どっちだろうね」

 誰に聞かせるでもなくつぶやくと、

「ルイぴっぴも、いつかルイぴっぴシティ作るの!」

 ルイぴっぴが一人、意気込んでいた。

「町の名前と一緒なんだから、その辺で聞けばすぐ分かるんじゃねぇか?」

 酒呑童子が辺りを見回しながら言う。

「それもそうだね。レン君、ちょっと情報収集に行っておくれ。私たちはここで待ってるから」

 レンは一瞬だけ「なんで僕が」という顔をした。

 だが、酒呑童子と自分を見比べ、ご主人様が自分のほうを頼ってくれたことがうれしくなり、

「はーい!」

 と軽やかに返事をすると、すぐ駆け出していった。

 腕の中のルイぴっぴと遊びながら時間を潰していると、

「おじき、酒飲みてぇ。金」

 と、ダメ人間まっしぐらの酒呑童子がねだってきた。

 一切妥協することなく、

「ダメ」

 と言い切る。

 酒呑童子はぶつぶつ文句を言いながら、イサメに背を向け、少しだけ離れていってしまった。

 ちょうどそのときだった。

 ルイぴっぴがイサメの体をよじ登り、頭のてっぺんに立って雄叫びを上げた瞬間――

ドン!

 真正面から大きな衝撃が走った。

「うわっ!」

 ルイぴっぴごと地面へ手をつく。

 頭の上にいたルイぴっぴは、その衝撃でころんと地面へ落っこちた。

 その直後。

 後ろのほうで、人が走り去る音が聞こえた。

 ハッとして、

「ルイぴっぴ、大丈夫かい!?」

 と聞けば、

「ルイぴっぴ、砂まみれ。ゆるさんぞ、さっきのやつ……ごしゅ、大丈夫?」

 ルイぴっぴもこちらを心配してくれる。

 幸い怪我はない。

 ほっと胸をなで下ろした。

「おじき、大丈夫かよ」

 心配そうな酒呑童子の声が聞こえたので、イサメは片手を前へ差し出した。

 酒呑童子はその手をつかむと、ぐいっと引き起こしてくれた。

 自分が目を離した隙に起きたことだけに、その声には珍しくばつの悪さがにじんでいた。

「急にぶつかられて、びっくりしたよ。」

 そう言うと、酒呑童子が眉をひそめる。

「おじき。物、盗られてねぇか?」

 その一言で、イサメははっとした。

 慌てて体中を探る。

 そして、

「ルイぴっぴ……身分証って、ルイぴっぴに預けたんだっけ?」

 大事な物は基本的にルイぴっぴへ預けるようにしている。

 きょとんとしたルイぴっぴが、イサメを見上げ、

「ルイぴっぴ知らない」

 と首を横に振った。

 イサメは深々とうつむき、

「身分証、やられた」

 せっかく立ち上がったばかりだというのに、再びその場へしゃがみ込んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ