前金につられて
話を聞いて、イサメはもうほとんど引き受ける気がしていなかった。
(こんな胡散臭い話、引き受けないほうが無難だ。それに、この話、主犯はバルフォルニアか、ティアーノ公国自身か。スカイリアにメリットがなさすぎる。だからこそ、スカイリア側の人間として関わるのは危険が大きい気がする。)
今回の件は縁がなかったということで、と、立ち上がろうとしたとき、
「もしお引き受けしていただけるなら、報酬の半分を前金としてお支払いしますよ。」
ピタッと立ち上がろうとした姿勢で動きを止める。
「それに、もし失敗したとしても、その前金を返す必要はありません。いかがです。」
再び席に着く。
「しょうがないよね~、ルイぴっぴ。先立つものがなくて不安だったんだから」
と、まんまとピッツァーに丸め込まれ、仕事を受けてしまったので、言い訳がましくルイぴっぴに頬を擦り付けていると、
「ごしゅ! いいこと思いついた。前金だけもらって、とんずらここうぜ!」
ルイぴっぴが元気に主張してくる。
「ちょっと思ったけど、そんなことやっちゃダメ。そんなことしたら、人として負けちゃって、次ピッツァーと会ったときに精神的優位を失っちゃうでしょうが」
「それだいじ~?」
「大事!」
と、イサメは大きな声で主張した。
「ご主人様ー、戻りました!」
レン君が帰ってきた。早速ピッツァーからもらったお金をお小遣いとして渡し、ズボンを買ってくるように伝えていた。
がしりと抱きしめられる。かちゃりとベルトが体に当たる音がして、やっと下半身に何か身に着けてくれたんだと、ちょっと感動していたが、実際のところレンは、下半身は身に着けていたものの、上半身は何も身に着けていなかった……。
「おう! おじき、元気か~?」
と酒呑童子の声が聞こえたと思ったら、肩に腕をかけられる。瞬間、香ってくる酒の匂い。
瞬間、うさパンチが酒呑童子の顔面にクリーンヒットした。
「さけくさい!」
とルイぴっぴがぷんぷん怒っていると、すぐに顔を上げた酒呑童子が、
「おじき~、追加のかねくれや。酒が尽きちまった」
と、ご機嫌な声で言う。
「あげたお小遣い、もう使ったの!?」
と驚愕した。
レン君にだけお小遣いをあげていることに酒呑童子がブーブー文句を言ってきたので、しょうがなくちょっとだけあげたのだ。
ちなみにルイぴっぴは、残りのお金をすべて、
「ルイぴっぴの!」
と言って持って行った。
(こいつ、何かやらせてないとダメなタイプかもしれない。)
本気で心配したとき、ルイぴっぴがぴょんとイサメの腕から飛んでいって、再びうさパンチ。
今度は酒呑童子の頭を、地面に埋め込んだ。
与太話だが、レンがズボンを履いてしまったということで、美青年の痴態という目の保養がなくなって、ピエタの町の人たちはたいそう残念がっていたとか、いないとか。
ちなみに本人は、「ご主人様に褒められた」と終始ご満悦だった。




