巡礼の道の異変
ニコニコとしたピッツァーが、さっそく口を開いた。
「イサメ殿は、このスカイリア王国の南方にあるティアーノ公国という国をご存じですかな?」
問われたイサメは、
(この国、スカイリアっていうんだ……)
と、まずそこに驚愕していた。
今さらながら、自分は国名すら知らなかったのである。
イサメが黙っていることを「知らない」と受け取ったのか、ピッツァーはそのまま説明を続けた。
「このピエタからだいぶ南へ進んだところにある縦長の国でしてな。その先には聖地バルフォルニアが控えていることから、通称『巡礼の道』と呼ばれているのですよ」
聖地。
巡礼。
なんだかきな臭い単語が並び始めた。
もとより、ピッツァーの話がきな臭くなかったことなど一度もない。
ルイぴっぴの頭をなでながら、イサメはそう思った。
「その巡礼の道に異変が起きておりましてね。貿易路としての重要度はそこまでではありませんが、何分、聖地は一大観光地ですからな。少々困っているのですよ」
「異変って?」
どうせ長話になる。
そう思ったイサメは端的に尋ねた。
ピッツァーは少し出鼻をくじかれたような顔をして、
「公都が戒厳令を敷いたのです」
と答えた。
「おかげで巡礼路を守る兵士たちが公都へ召集されてしまいましてな。今や公国は賊が跋扈する危険な土地になっております。当然、のんきに巡礼などできるわけもありません」
「戒厳令? なんでまた? そんな物騒なことを?」
イサメが大仰に聞くと、ピッツァーは首を振った。
「それが分からないというのが、今回一番厄介なことですな。情報もまるで入ってこないのですよ」
そこまで話したところで、酒呑童子が口を挟む。
「で、そのティアーノっていうのは、どっちと近いんだよ」
イサメは一瞬きょとんとした。
だが、すぐにその質問の意味を考える。
すると、
「いやはや、新しいお仲間も相当の切れ者ですな」
ピッツァーが感心したように笑った。
「イサメ殿は本当に人を見る目がおありだ。うらやましい限りですな」
酒呑童子の質問の意図を瞬時に理解したらしい。相変わらずの営業スマイルを浮かべながら、ピッツァーが話をつづけた。




