身分証を手に入れた
「ふっふふっふーん」
レン君が上機嫌に鼻歌を歌っている。
「ピエタの町に行ったら、ズボンを買いに行きましょうね、ご主人様!」
嬉しそうに言うレン君に、イサメは内心ほっとしていた。
カイファーの町を出てピエタへ向かう道中、どうやってパンツを履かせるか散々悩んだ末に思いついたのが、「押してダメなら引いてみろ作戦」だった。
服を着たほうがかっこいいだの、似合うだの、あれこれ言って何とか丸め込んだのである。
ただ、その弊害として――
「ルイぴっぴも服着るの~~!」
ルイぴっぴまで服を欲しがるようになってしまった。
「ルイぴっぴはふわふわの毛があるから、服を着るとむしろ抱きしめづらくなっちゃうよ」
そうなだめてみても、むうむうと文句を言ってくる。
ちなみに、もらったパンツはすぐ履いてくれたものの、最初はやはり開放感が違うらしく、しっくりこなかったようだ。
だが、
「レン君は私の所有物なんだから、ほかの人に見えるようにしちゃだめでしょ」
そう言うと、パンツを履くことへの抵抗はなくなったらしい。
むしろ妙にハイテンションになっていた。
後払いで馬車を呼び、何とかピエタの町へ到着する。
服屋へ行きたがるルイぴっぴとレン君をなだめ、とにかく先にピッツァーのもとへ向かった。
「おおっ! 無事帰ってきてくださって嬉しく思いますぞ! この通り、お約束の身分証もございますし、こちらもどうぞ」
嬉しそうに迎えたピッツァーから、身分証と少額の礼金を受け取る。
だが、その額は想像以上に少なかった。
帰りの馬車代を差し引くと、とてもではないが当面生活できるほどの金額ではない。
本当のところ、もうピッツァーとは関わりたくなかった。
だが、服と食事をねだられ、致し方なく再びピッツァーのもとを訪れることになる。
まるで分かっていたかのように迎えられると、
「いやー、戻ってきてくださると思っていましたよ」
「あー、その……仕事を紹介してもらえないかな~っと思いまして」
「ええ、もちろんです。実は、こちらとしても依頼がございましてね」




