完璧な王子様
「でんかーーーー!!」
イサメは大声で叫ぶと、真横にあった殿下のおみ足に抱きつき、再び叫んだ。
「でんか~~~!」
イサメは感動していた。
よく物語に出てくるようなダメな王子ではない。
まさに弱きを助ける正義のヒーロー。
そして何より、牢獄に入らなくて済みそうなことに。
「おおっ、でんか~! ありがとうございます! ありがとうございます!」
嗚咽混じりに感謝を伝えていると、ルイぴっぴもイサメの頭にくっつきながら、
「よくやったな!」
と、なぜか上から目線で礼を言っていた。
幸い、ルイぴっぴが何を言っているのかまでは、マーカス殿下にはわからなかったようだ。
しばらくされるがままになっていた殿下は、小さく息を吐いてから言った。
「すまなかったな。憲兵隊の者たちも、ああいう者たちばかりではないのだが」
どこか申し訳なさそうな声だった。
「しばらくすれば容疑も晴れるだろう。貴殿らには、それこそ褒章を与えたいくらいだが……」
するとイサメは、ぶんぶんと首を横に振る。
「滅相もないです。無罪放免になっただけで、わたしゃもう……」
声を詰まらせながらそう言う。だが、
「おたから! おたから!」
ルイぴっぴは懸命に褒章を要求していた。
ついでと言わんばかりに、
「まぁ、酒とつまみくらいは出してもらいてぇなぁ」
と酒呑童子まで言い出す。
正直、この男に関しては町の建物を壊したのは事実である。子爵邸爆発の件はともかく、裁かれるべき部分はあるはずなのだが……。
厚かましいことこの上ない。
しかしマーカスは苦笑しながら、
「食事くらいなら用意できるだろう」
そう言って続けた。
「それと、無実の罪を着せた側が、無罪を言い渡して感謝されるのは忍びない」
一度言葉を切る。
「そうだな。困ったことがあれば私のところへ来るといい」
穏やかな声だった。
「“一度だけ”だが、助けになろう。頼る時は、よく考えるのだぞ」
その言葉を聞いた瞬間。
イサメは感動しすぎて、息ができなくなるかと思った。ありったけの感謝を込めて、
「でんか~~~!」
再び力強く、殿下のおみ足へしがみつく。
「いい加減、俺のズボンを引っ張るのをやめろ。脱げる」
ちょっとだけ素が出た殿下に怒られた。




