ウサギは飛んだ、まるで星のように
迫りくる巨大な魔力の塊を見上げ、酒呑童子は盛大な舌打ちをした。
どうする?
攻撃したら爆発する。
その爆発に耐えられるか?
俺はともかく、こいつらは――。
そう思いながら、再びイサメのほうへ目を向ける。
「ごしゅ、これはいって」
「なーにこれ、箱? え? 寝ればいいの? 狭いね、これ」
そこには、長方形の箱を指差し、イサメを中へ入るよう促しているルイぴっぴの姿があった。
言われた通り、素直に箱の中へ横になるイサメ。
ぱたん、と蓋を閉めるルイぴっぴ。
だが、頭のあたりには小さな窓のようなものが付いていて――
そこまで見て、酒呑童子は思わず叫んだ。
「棺桶じゃねぇか!!」
縁起でもねぇ!
このうさぎ、死に場所を先に用意しやがった!
そう思っていると、ルイぴっぴが小窓を開けて、
「ごしゅ、しばらくそこにいてね~。またね~」
とのんきに手を振る。
イサメもそれに応え、
「ばいばーい」
などと、のんきに返していた。
小窓を閉める。
そしてルイぴっぴは、イサメ入り棺桶を持ち上げた。
その瞬間。
「ちゃんと酒呑童子も助けるんだよー!」
棺桶の中から、イサメの声が響く。
だが、それには答えず、ルイぴっぴはイサメ入り棺桶を自分のぽっけへしまい込んだ。
一瞬。
酒呑童子とルイぴっぴの目が合う。
何も言わず、ルイぴっぴは部屋の隅へ移動し、その場でぺたりと伏せの姿勢を取って、爆発を待ち始めた。
「おい! 俺のことも助けろよ!」
叫んでも、ルイぴっぴはじっと動かない。
ルイぴっぴは、ごしゅが苦手な部類のもの――がさつで、怒鳴る酒呑童子が嫌いだった。
なにより、ごしゅに若干気に入られ始めているのが、一番気に食わなかった。
だから、あわよくばここで亡き者になってくれればいい。
それくらいには思っていた。
そんなルイぴっぴのたくらみを知ってか知らずか、酒呑童子が口を開く。
「おめぇ、自分の主人が『俺のことも助けろ』って言ったのに、それ無視すんのか?」
正直、酒呑童子としても情けない主張だった。
だが、背に腹は代えられない。
_
それを聞いたルイぴっぴは、
“なんで助けてあげなかったの!?”
と、ごしゅに責められる未来を想像して、 むぅっ、と眉をひそめる。
そして、おもむろに立ち上がると、ぽっけからもう一つ箱を取り出した。
面倒くさかったのか、 それを殴りつけるように、乱暴に酒呑童子に叩きつける。
「なにしやがる!?」
酒呑童子が叫ぶ。
だが、見事に箱の中へ収まった。
さらに、それを乱暴にぽっけへ突っ込む。
そして再び、ルイぴっぴは伏せの姿勢で爆発を待った。
まだ爆発しない。
……まだ爆発しない。
そこでふと気づく。
ごしゅがいない。
さっきまでうるさかった酒呑童子もいない。
なんだか、とっても寂しい。
ルイぴっぴは、上から迫る巨大な顔面へ向かって話しかけた。
「お~い、おはなししよ~」
両手をぶんぶん振りながら、意思疎通を図ろうとした、その瞬間。
巨大な顔面が、まるで風船のように弾け飛んだ。
轟音。
灼熱。
爆発。
結界に閉じ込められた熱と衝撃が逆流し、そのすべてを浴びながら、ルイぴっぴの体は空高く打ち上げられる。
ぴょーん、と。
灼熱のルイぴっぴは、夜空を飛んでいく。
「うさぎだって、とべるんだ~~!!」
楽しそうに叫びながら。
そしてやがて、地面へ落下したのだった。




