表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/59

月と星と夜と

 むっ、むっ、むっ。

 さっきから、ルイぴっぴが何やらしている音が聞こえる。

「何してんの、ルイぴっぴ?」

「きんとれ! もっとおっきくなるの!」

「えー、なんで? ルイぴっぴ、もう十分筋肉質よ。これ以上固くなって鋼鉄になったらどうするのさ。やだよそんなうさちゃん」

 ガーン、とショックを受けたルイぴっぴは、その手に持っていた大岩を後ろへ放り投げてから、ぷいっと膝の上に乗ってきた。


「おめぇら、やっぱクソ野郎の仲間じゃなさそうだな」

 酒呑童子がぼそりと言う。

 そういえば事情を詳しく話していなかったと、イサメはここまでの経緯をかいつまんで説明した。

「なるほどねぇ……それでここに来たのか。あの霧のことはよく知らねぇが、工場をぶっ壊さねぇとどうにもならんだろうな。手伝ってやりてぇがなぁ……」

 言い淀む。

(やっぱり何かあるな)

「じゃあさ、あなたの悩みを解決する代わりに、工場どうにかするの手伝ってって言ったら、手伝ってくれる?」

「そいつぁ、まあ……やぶさかじゃねぇが……」

 言い終える前に、

「ごふっ……!」

 苦しそうなうめき声。

「何事!?」

「うーん、血、吐いてますね、ご主人様。だいぶ体やられているみたいです」

 レン君がのんきに答える。

「どうにかならないの?」

「うーん、体の内部なので、どうにも」

 やる気のない回答。

「えーっと……どうしよう」

 焦っていると、

「ごしゅ、助けてほしい~?」

 待ってましたと言わんばかりの声。

「助けてほしい」

 即答だった。

「しょうがないなあ」

 もったいぶりながら、ルイぴっぴがぽっけから大きな本を取り出し、それをイサメの手に乗せる。

「いや、重っ……。なにこれ……」

 ずしりとした感触に、思わず持ち直す。

 指先で表面をなぞると、刻まれた文字があるのがわかった。

「……『月と星と夜の誓約』?」

「ご主人様、文字、読めるんですか?」

(あれま、本当だ……読める?いや、違う。頭に入ってくる感じだ)

「ごしゅ!ページめくって!ここ!ここ!」

 ルイぴっぴが本を開き、どんどんページを進め、やがて手を止める。

「えーなになに、『一時の輝きにすべてをかけ、燃え尽きよ――エフェ・アストラ』」

 なんだか少し恥ずかしい詠唱だなと思った瞬間――

 ドンッ!!

 爆発と爆風。

「ぎゃあああっ!!」

「うおおおっ!?」

 酒呑童子とレン君の悲鳴がこだまする。

「やったぜごしゅ!」

 ルイぴっぴだけが喜んでいる。

(あ、これ私がやったんだな……)


「おいっ!やっぱおめーら、俺を殺しに来やがったな!」

 ぜえぜえと息を荒げながら、怒りの声を向けてくる酒呑童子。

「ああよかった、無事だったんだね」

「どこが無事だ!この野郎!危うく山から転げ落ちるところだったじゃねぇか!」

「落ちちゃえばよかったのに」

 ルイぴっぴが小さく舌打ちして毒を吐く。

「こら、ルイぴっぴ!めったなこと言わないの!あと“助けて”って、苦しんでるから介錯してって意味じゃないからね!」

「ルイぴっぴ間違ってないよ。次のページ!次のページ!」

「また!?危ないやつじゃないのそれ……」

 そう言いながらもページをめくる。

 その間に――

 酒呑童子がゆっくりと体勢を立て直していた。

 棍棒を握り直し、足場を確かめるように踏みしめる。

 いつでも飛び退けるように、わずかに重心を落とす。

 視線は、まっすぐイサメへ。


「『月の光よ、痛みを溶かし、安らぎを与えよ――ルミナ・ルーナ』」

 詠唱が響く。

 酒呑童子が反射的に身構えた、その瞬間。

 上空から、柔らかな光が降り注いだ。

 月光のように、静かで優しい光。

 警戒していた酒呑童子の体を包み込む。

 緑色の斑点が、ゆっくりと薄れていく。

 先ほどの爆発で受けた傷も、同時に塞がっていった。

(……なんだ、体が軽くなっていく……!)

 酒呑童子が驚きの声を漏らす。


(何とかなったかな……?)

(よくわからない……)

(あれ……ルイぴっぴの声が遠くに……)

 ふらりと体が揺れる。

 イサメの体が前に倒れ――

 地面にぶつかる直前。

 レンがスライディングで滑り込む。

 結果。

 イサメの顔面は見事、レンの腹筋に着地したのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ