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新しく、出会う

 ペタペタペタ。

 何かが、手の甲に触っている。よく覚えているような、いないような。

 目を開ける。暗い。真っ暗だ。意識がはっきりとしない。ふわふわとして、浮かんでいるような、沈んでいるような。体の輪郭さえ曖昧で、自分がどこにいるのかも分からない。

 ペタペタペタ。

 また何かが触っている。今度は少し強めに。まるで、気づいてほしいとでも言うように。

 意識が少し、はっきりしてくる。でも、暗い。触られている感覚のほうへ顔を向けてみる。手のひらを返して、触れてくるものを握ってみる。さらさらな毛。手のひらに引っかかる爪。

 自分は、これをよく知っている。何度も何度も撫でてきた、その感触だ。

「ルイぴっぴ?」

 声を出してみる。確かに自分の声だ。少しだけかすれている。

「むー!」

 元気な声が聞こえた。胸の奥が、ぎゅっと掴まれたように痛む。意識がはっきりとする。がばりと、思わず半身を起こす。そこで初めて、自分が地面の上に寝ていたことに気がつく。

膝の上が重くなった。

 ただそれだけで、涙が出そうになった。

 暗い。何も見えない。でも、体が覚えている。何年も膝の上でブラッシングをしてきたのだから、膝がその重さを覚えている。そこにいると、はっきり分かる。

 夢だ。これは、気を失った自分が見ている夢なのだと。

 夢ならせめて、その姿を見たかった。もう一度、ちゃんと見たかった。

 でも、それが叶わなくて、膝からその体を抱き上げる。

 ああ、これは本物だ。

 腕の中で、確かに生きている。

 もう一度、名を呼ぶ。

「ルイぴっぴ?」

「むぅ~?」

なぁに? と返ってきた気がした。やさしく、強く抱きしめた。

 確かめるように、もう二度とこのぬくもりを失いたくないと、祈るように。

 頭の上に鼻を当てて、すぅーっと息を吸い込めば、藁みたいな香りがする。この香りも変わらない。あの頃と、何も。

 言葉は出ない。ただ、抱きしめていた。

 いつまでそうしていただろうか。一向に覚めない夢に疑問を覚えて、顔の前に持ち上げて話しかけてみる。

「ルイぴっぴ、暗いね。夜なのかな? 夢なら見えればいいのに」

 反応を期待したわけじゃなかったけれど――

 目の前から、

「むゎーー‼」

 大きな叫び声が真ん前でされたと思ったら、ぐっと顔に毛がくっついた。眉間から鼻筋にかけて、ふーふーと息がかかる。くすぐったい。

 たぶん、目を覗き込んでいる?

「むぅーむぅーむぅー」

 先ほどから、ずっとルイぴっぴが鳴いている。膝の上で、小さく体を揺らしながら、その声を繰り返しているのが分かる。重みが、確かにそこにあった。

 どれくらい、そうしていただろうか。

 覚めない夢に、これは――まさか現実なのか、と感じ始めていた。

 となると、今の状況は、もしかすると――

 私は、光を……。


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