ゴブリンの巣攻略戦④
「火、よ!」
苦しげな声とともに、男がこちらへ手を向ける。
次の瞬間、火球が放たれた。
――ドゴン!
直撃。
だが、レンは一切気に留めない。
多少の熱を感じながらも、まっすぐに男へと駆ける。
「ひ……」
二の句はなかった。
そのまま地面に押さえつける。
首を折ろうとした、そのとき。
「待って、殺しちゃダメ! 連れて行くから!」
イサメの声が、鋭く響いた。
ぴたりと動きを止め、レンは視線を向ける。
ルイぴっぴが杖の先をつかみ、導くように引きながら、こちらへ来ようとしているご主人様の姿。
「ご主人様、危ないですよ。こいつは僕が運びます」
そう言って男を担ぎ上げようとした――その瞬間。
「あああああ――!」
男が絶叫する。
そして。
みるみるうちに、その体が痩せ細っていく。
まるで、体中の水分を一気に吸い取られたかのように。
皮膚が張りつき、骨ばり、乾き――
枯れた。
レンは即座に手を離し、距離を取る。
すぐにご主人様のもとへ戻り、新手の気配を警戒する。
「何があったの?」
イサメの問いに、状況を簡潔に説明する。
そして――
退くか、進むか。
判断を仰ぐ。
――――――――――
「ごしゅっ! あっちにおかね、いっぱい!」
ルイぴっぴが、唐突に声を上げた。
こんな状況で、この子はと思う。
だが――
ルイぴっぴがここまで無邪気ということは、少なくとも“今すぐの危険”は薄いのかもしれない。
そう考えて、
「……いや、もう少し調べよう。レン君、幻影の壁の奥を見てきて」
指示を出す。
数分ほどだろうか。
ルイぴっぴが上機嫌に、ふんふんと鼻歌みたいな音を鳴らしている。
その最中――
ドン!
目の前で、何かが置かれる音がした。
「宝箱です、ご主人様。とりあえず持ってこられるだけ持ってきました。中身は……どうやら銀貨ですね」
むわーっと、ルイぴっぴのテンションが跳ね上がる。
「ぜんぶ、ルイぴっぴのもの!」
と、主張し始めた。
そんな中、レン君が続ける。
「ご主人様、気になることがもう一つ。壁の奥には、先ほどの男と同じような死に方をした人間が、かなりの数いました。」
さらに、レン君は淡々と続ける。
「それと、他には特に何もありませんでした。宝箱と死体だけです。これ以上、得るものはないかと」
……なるほど。
戦利品は回収済み。
情報もある程度は得た。
これ以上深入りする理由は、薄い。
そう判断しかけた、そのとき。
くいくい、と服の裾を引っ張られる。
「かえろう」
ルイぴっぴだった。
……タイミングがいいのか、なんなのか。
「……そうだね。帰ろうか。」
そう決めて、洞窟を後にすることにした。
――ピッツァーに、どこまで話すべきか。
そのことを考えながら。




