ゴブリン
「ちょうど頼みたいことがありましてな。盗賊を退けたあなた方なら、頼みやすい。なあに、ゴブリンの巣を一つ潰してくれれば、それでよいのですよ……」
ゴブリン。
それは、ファンタジーの世界ではおなじみの悪役。
どうやら、この世界でも例外ではないらしい。
体は緑色で小さく、乱暴で頭が悪い。
とにかく下品――だが、決して侮ってはいけない存在。
いったいどれほどの人々が、この矮小な存在に嬲られ、弄ばれ、むごたらしく散っていったことか。
ゴブリンという存在に比べれば、あのオーガですら、比較にならない。――
おるくスレイヤー著
『ゴブリン・この世から消すべき存在』より
――
結局あのあと、こちらが何か言う前に引き受けさせられてしまった。
ゴブリンのこともよく分かっていないため、時間が欲しいと頼み込み、なんとか三日間は宿を貸してもらえることになった。
とにかく生態を調べようと手に取った本には――
ゴブリンの“殺し方”が、これでもかというほど書かれていた。
読み進めるうちに―― (まあ、実際にはレン君に読み聞かせてもらっているのだけれど)
こう思わざるを得ない。――きっとこの作者、ゴブリンに身内でも殺されたのだろう。
それはさておき。
――作戦会議だ!
「それでは、作戦会議を始めます。意見のある人は、元気よく挙手をしてください」
「はい!」
ルイぴっぴが元気よく返事をする。
「ルイぴっぴ君」
名を呼ぶと、指名されたのが嬉しかったのか、むふーと声を出してから、
「召使い1号を縛って、巣に投げ込むの! 集まったゴブリンに爆弾投げて、どっかーん! 全部解決!」
「レン君、死んじゃうでしょうが! おばか! そして却下!」
むー、と不満げな声。
「じゃあ、巣の入り口に爆弾投げて、どかん! 生き埋めにして終わり!」
「ゴブリンにさらわれた人たちの救出も仕事に入ってるんだから、だめに決まってるでしょうが! 却下!」
「ごしゅ! わがまま!」
ルイぴっぴが猛抗議していると――
「はい!」
今度はレン君が元気よく手を挙げる。
ルイぴっぴを無視して、レン君を指名する。
「まず森で、スヤスヤ茸とビリビリ茸を採取します。それを僕が食べて、やつらの巣の中に息を吹き込みます。そうすれば、やつらは眠って、しびれて、動けなくなるはずです。動けない相手なら簡単に倒せますよ!」
「すんばらしいアイディアだ! やはり信じるべきはレン君だった。ウサギじゃなかった!」
そう言った瞬間、怒ったルイぴっぴが顔面にくっついてきて、離れなくなった。
なんとか引きはがして、
「でもレン君、すごいね。そんな変なキノコを食べて大丈夫なの? それとも誰でもできることなのかしら?」
と尋ねる。
「僕、昔からそういうのに強くて。牧場でいろいろ食べさせられました。でも、できたのは僕だけでしたよ」
どこか誇らしげな声音だった。
「すごい。本当にすごい! いやー、これで何とかなりそうだ! 明日キノコを採ってきて、明後日、巣に行こう!」
こうして方針は決まった。
翌日、三人でキノコ狩りに出かける。
ここではルイぴっぴが自慢の鼻で場所を見つけてくれたおかげで、思ったよりも早く必要なキノコを手に入れることができた。
褒めてあげると、むふむふとルイぴっぴが満足そうに鳴いた。




