第八十七話 帰れるだけでは
第八回評価の朝も、橘家の食卓には、いつもと同じ時間が流れていた。
窓から差し込む夏の日差しはすでに強く、薄いカーテンを通して食卓の端を白く照らしている。美咲が焼いた卵を皿へ分け、蒼真は昴の前に置かれた牛乳を、手が届きすぎない位置へ少しだけ動かした。
「ぱぱ、きょうも、りぽる?」
昴は両手でパンを持ち、口の周りへ細かな屑をつけていた。
「今日はリポル。新しい槍を使うんだ」
「やり?」
「長い棒の先に、尖ったものがついてる」
蒼真が手で長さを示すと、昴は食べかけのパンを片手へ持ち替え、空いた手を前へ突き出した。その先には味噌汁の椀がある。
美咲が椀を遠ざけるより早く、結衣が昴の手首を掴んだ。
「食卓で戦わない」
「たたかわない。やり、みせた」
「それなら、味噌汁がない方へ見せて」
結衣に手を放してもらった昴は、今度はパンを槍に見立てて蒼真へ向けた。
「それは食べるものだよ」
「ぱぱも、たべる?」
「自分のがあるから大丈夫」
蒼真が答える間に、結衣は壁の時計へ視線を向けた。夏休みに入ってからも部活動がある日は学校へ行くが、今日は珍しく髪も結び終え、出発まで余裕があるらしい。
「新しい槍って、前に使った大きい杭とは違うの?」
「今回は軽くしてある。大型の甲殻へ穴を開けられるか調べるけど、持ったまま走ったり、すぐ逃げたりできるようにしたらしい」
「逃げるところまで試すんだ」
「そこが大事だからね」
蒼真が答えると、美咲は向かい側から顔を上げた。
「今日は、本物のモンスターじゃないんだよね?」
「回収した甲殻を固定して使う。動く標的もあるけど、生きてはいないよ」
その説明を聞いて、美咲の肩から僅かに力が抜けた。試作武器を実機で扱う以上、危険がないわけではない。それでも、生きた敵が相手ではないと分かるだけで、送り出す側の重さは違うのだろう。
「だったら、今日は試験をして、普通に帰ってきて」
「そのつもりだよ」
「普通に、だからね」
美咲が念を押すと、結衣が箸を止めた。
「お父さんの普通って、たまに普通じゃないから?」
「そういうこと」
「今日は動かない甲殻だから、何も起きないと思う」
「それを言うと起きそうだから、黙って食べて」
結衣に注意され、蒼真は残っていた味噌汁へ目を落とした。昴だけは話の意味を気にせず、短くなったパンをもう一度構えている。
「ぱぱ、やり。すばる、ぱん」
「昴は朝ご飯を食べて」
「はい」
返事だけは良かった。
蒼真はパンへかじりついた昴を見ながら、家族の顔を一人ずつ確かめた。今日の評価に救助対象はいない。生活圏から離れた試験場で、すでに死んだ大型個体の甲殻へ武器を撃ち込むだけである。
それでも、帰る場所を見てから家を出るという順番は、いつの間にか蒼真の中で欠かせないものになっていた。
*
「相馬。妹とよく食事をしているらしいな」
中央評価施設の格納庫へ入った相馬は、肩に掛けていた飛行服の上着をゆっくり下ろした。
八神は通路の中央に立っていた。普段と変わらない表情をしているものの、視線だけが相馬から外れない。背後では試験用器材を載せた台車が行き交っていたが、二人の間だけは妙に静かだった。
「よく、というほどではありません。まだ一回です」
「次も行くんだろう」
「四日後に」
「なぜ日まで決まっている」
「向こうが予定を確認したからです」
「妹が?」
「はい」
八神は腕を組み、数秒間黙った。
「八神隊長は、反対なんですか?」
「反対しているわけではない」
「では、何を確認したいんです?」
「俺にも分からん」
八神が額へ手を当てたところで、格納庫の入口から蒼真と三浦が入ってきた。通路を塞ぐ二人を見つけた蒼真は足を止め、八神の顔と相馬の上着を交互に見た。
「何か問題ですか?」
「相馬が妹と食事へ行っている」
「一回です」
相馬が訂正したが、蒼真は回数を気にした様子もなく頷いた。
「次の予定が決まっているなら、店も予約した方がいいと思います。夏休みなので混んでいる可能性があります」
「橘。そういう話ではない」
「では、どういう話ですか?」
三浦が小さく息を吐き、蒼真の肩へ手を置いた。そのまま説明室の方へ身体を向けさせる。
「橘さんへ聞いた八神隊長が悪いです。先に行きましょう」
「まだ答えを聞いていません」
「聞いても分からない種類の答えです」
押されるまま歩き始めた蒼真を見送り、相馬が飛行服を着たところへ、紙の資料を抱えた八神の妹が連絡通路から現れた。
「兄さん。十一時からの運用会議は、試験終了後へ変更されました」
必要なことだけを告げ、彼女は相馬へも資料を差し出した。
「相馬一尉。三頁目の時刻に誤りがあります。映像記録では十四時二十二分ですが、通信記録との同期後は十四時二十一分五十八秒です」
「二秒ですか」
「二秒あります」
「直します」
相馬が資料を受け取っても、彼女の表情は変わらない。先日の店で苺のパフェを前にしていた時も、大きく笑ったわけではなかった。それでも、スプーンを運ぶ間隔や、食べ終えたあともすぐ席を立たなかったことから、少なくとも嫌ではなかったのだと思っている。
目の前で二秒の違いを指摘する顔からは、その時の僅かな柔らかささえ見つけられなかった。
「次の店ですが、候補を三件に絞りました」
相馬は資料から顔を上げた。
「もう探したんですか?」
「予定日まで四日しかありません」
「まだ四日ある、とも言いません?」
「混雑する可能性を考慮すれば、予約は早い方が合理的です」
彼女の端末には、店ごとの営業時間、移動時間、予約状況を並べた比較表が表示されていた。
「一件目は苺を使用した期間限定メニューがあります。二件目は食事の選択肢が多く、三件目は前回の店より静かです」
「苺が一番上なんですね」
「期間が限定されているためです」
彼女は即答した。隣で八神が目を閉じる。妹が食事相手のために三件もの店を比較している時点で、兄には何かが起きていると分かるらしい。しかし本人は、期間と混雑率を検討した結果だとしか考えていない顔をしていた。
「相馬一尉は、前回、甘味を注文しませんでした」
「夕食を食べたあとでしたから」
「苦手という意味ではないんですね」
「嫌いではありません」
「では、一件目で問題ありません」
確認が終わると、彼女はその場で予約画面を開いた。
「自分の返事は必要なかったんですか?」
「今、確認しました」
「そうですか」
相馬は他に答えようがなく、頷いた。
仕事中の彼女は、相変わらず二秒の誤差も見逃さない。態度も口調も、何も変わっていなかった。
それなのに、自分が甘い物を嫌いではないと知った瞬間、予約人数が迷いなく二名になったことだけが、相馬の中へ妙に残った。
「八神隊長」
「俺に聞くな」
「まだ何も言ってません」
「顔を見れば分かる」
八神は妹へ何か言いかけたが、彼女が予約内容を確認している横顔を見て、結局口を閉じた。
*
第八回評価で試されるのは、対大型用として新たに設計された軽量貫通槍だった。
試験場の奥には、大型個体から回収された甲殻が三枚、鋼製の支持架へ角度を変えて固定されている。最も薄い側面甲殻でも、通常の実体剣では表面を削るだけで終わり、胸部を覆っていた一枚は、搬入用クレーンで吊り上げた際にも形を崩さなかった。
甲殻の周囲には、大型個体の脚を模した可動柱が三本配置されている。攻撃開始と同時に別々の軌道で動き、接近する機体の進路を塞ぐ仕組みで、その内側へ入らなければ槍は甲殻まで届かない。
試験場の中央に立つリポルは、右手に全長が機体の身長を少し超える細身の槍を持っていた。穂先の内部へ小型の駆動杭を収め、対象へ接触した瞬間に一度だけ突出させる。腕へ固定されていないため、必要があれば手放して逃げることもできた。
《右手保持圧、正常。穂先駆動部との接続を確認しました》
「重さは問題ありません」
蒼真が槍を水平に倒すと、長い柄は機体の動きへ遅れずついてきた。右へ踏み出しながら穂先を振っても腰部の補正はほとんど入らず、反対側へ返した時にも肩が引かれない。実体剣より間合いを取りやすく、小型や中型へ使うだけなら十分に役立つ武器だった。
『第一試験を開始します。正面の指定線まで後退してください』
蒼真は甲殻から四十メートル離れた白線へリポルを下げた。一本目の柱は右から左へ往復し、二本目は甲殻の手前で前後へ動く。三本目は左奥に隠れ、接近する機体の死角から出てくる配置だった。
「開始します」
信号灯が青へ変わる。
リポルは左足から踏み出し、槍を身体の右側へ寝かせた。最初の柱が進路を横切る直前、蒼真は歩幅を狭め、柱の後ろへ機体を滑り込ませる。
その向こうで前へ出てきた二本目へ防盾の縁を当て、動く方向へ沿わせて受け流すと、リポルの左肩と柱の間に機体一機分の隙間が開いた。蒼真はそこへ右足を踏み込み、槍の石突きを左脇へ引きつける。
《左後方、接近》
三本目の柱が斜め後ろからリポルの腰を狙って伸びてくる。
蒼真は振り返らず、柄を右肘の内側へ抱えたまま左肩を落とした。柱の先端が背部装甲の上を掠め、その力で上体が僅かに前へ押される。
踏み込みへ変えられる程度の力だった。
リポルは押された分だけ左足を深く沈め、甲殻へ向けて腰を回した。両手の間で柄が滑り、穂先だけが正面へ伸びる。
硬い外殻へ先端が食い込んだ瞬間、蒼真は射出操作を行った。
柄の内部で圧縮機構が弾け、短い金属音とともに駆動杭が突出する。甲殻を支える台座が後方へ揺れ、固定具から細かな錆が落ちた。
《射出正常。右肩最大負荷、五十六。機体損傷なし》
蒼真は槍を引き抜きながら左足を軸に半回転した。通り過ぎていた二本目の柱が戻ってきたため、防盾を柱との間へ差し込み、その表面を滑らせながら外側へ抜ける。
《攻撃位置から安全圏まで、三・四秒。転倒予測、最大二十一》
離脱そのものには問題がない。
可動柱が停止し、牧野を含む整備員が支持架へ近づいた。甲殻の表面には槍先と同じ大きさの穴が開いている。牧野は裏側へ回り、測定器を当てたまま数値を確認した。
「表面から十一・二センチです。内部繊維層で停止。裏面には達していません」
大型画面へ断面画像が表示された。杭は硬い外殻を割っていたが、その内側に重なる繊維層の途中で止まり、重要器官へ届く深さではなかった。
『第二試験は最大出力で実施します』
二枚目の甲殻は一枚目より薄く、可動台座へ載せられている。攻撃が触れた瞬間に右へ動き、生きた敵が身を捩って槍を外そうとする状態を再現するためだった。
軽く、扱いやすく、攻撃後もすぐに離れられる。朝、美咲へ話したとおりの武器だった。
足りないのは、敵を止める力だけである。
『交換完了。開始してください』
信号とともに、リポルは一気に速度を上げた。
最初の柱が右から迫る。蒼真は防盾の縁だけを柱へ触れさせ、その接点を中心に機体を左へ回した。柱の力が旋回へ変わり、長い槍の穂先が内側へ巻き込まれる。
二本目の柱が前から下がってきたため、リポルは右膝を深く曲げ、その下を潜った。背部装甲すれすれを柱が通過し、直後に三本目が左側から伸びる。
蒼真は低い姿勢のまま柄を地面へ近づけた。柱は穂先の上を通過し、左肩だけを押す。その力を受けながら右足を前へ送り、甲殻の斜め下へ入り込む。
可動台座が動き出す直前、両腕が伸びた。
穂先が甲殻へ当たり、最大出力の杭が内部へ走る。
重い衝撃が柄を通して両腕を押し返した。同時に台座が右へ滑り、突き刺さった槍も横へ引かれる。
蒼真は握り続けなかった。
右手を先に開き、左手で石突きを下へ払う。穂先が亀裂に沿って抜け、槍全体が台座から離れたところで握り直す。そのまま台座が動いた反対側へ二歩踏み込み、戻ってきた柱の外へ回り込んだ。
《攻撃位置から安全圏まで、二・九秒。右肩最大負荷、六十三》
甲殻には、先ほどより大きな穴が開いていた。しかし、測定結果は十五・八センチで止まった。
「裏面への到達なし。想定した重要器官まで、少なくとも七センチ不足します」
牧野の報告が試験場へ響く。
蒼真は槍を下ろし、甲殻に残った穴を見た。二度とも攻撃後の離脱は成功している。それでも、実戦ならば大型個体は止まっていない。
自分が離れたあと、敵は再び動き出す。三浦や第三中隊がその場へ残り、もう一度止めなければならなくなる。
『搭乗者所見をお願いします』
「扱いやすいです。小型や中型にも使えると思います。攻撃後の離脱にも問題はありません」
管制室の記録担当者が入力を始める。
「ただし、大型個体を止められません」
『継続攻撃を前提とした場合は?』
「同じ場所へ何度も撃ち込めれば、貫通する可能性はあります。でも、大型個体が動く状態で、同じ位置へ何度も入るのは難しいです」
今回は決められた軌道を通る障害物が三本だけだった。実際の大型個体なら、四肢だけでなく尾や頭部も動き、周囲には小型や中型もいる。
「帰ることはできます。でも、これでは守れません」
画面の端で、第八回評価の結果が《継続検討》から《要求未達》へ切り替わった。
*
夕食の食卓で、蒼真は新しい槍が大型個体の甲殻を貫けなかったことを家族へ話した。
美咲は煮物の小鉢を結衣へ渡しながら、まず蒼真の両腕を見た。強い反動を受けたと聞き、痛めていないか確かめているのだろう。
「身体は大丈夫なの?」
「少し肩が張ってるけど、自分は大丈夫。リポルにも損傷はないよ」
美咲が頷き、ようやく箸を取った。
「じゃあ、帰ってはこられたけど、倒せなかったんだ」
結衣が試験結果を短くまとめる。
「倒せなかったというより、甲殻を抜けなかった。小型や中型なら十分使えると思う」
「大型を倒すために作ったんでしょ?」
「そうだね」
「なら、倒せなかったで合ってるじゃん」
蒼真は反論できず、味噌汁を飲んだ。
「りぽる、まけた?」
昴が両手を胸の前で組み、首を傾げる。
「負けてはいないよ」
「かった?」
「勝ってもいない」
「どっち?」
昴の眉が寄っていくと、美咲が横から助け舟を出した。
「今日は、できることと、できないことを調べたの」
「できた?」
「帰ってくることはできた」
美咲の答えに、昴は安心したように頷いた。
「ぱぱ、かえった」
「うん。帰ったよ」
蒼真が答えると、昴はそれで試験の話に興味を失い、煮物の人参をスプーンで割り始めた。
食卓の空気が緩んだところで、蒼真は朝の格納庫で起きたことを思い出した。
「そういえば、相馬が八神隊長の妹と食事へ行ってるらしい」
美咲の箸が止まった。試験結果を聞いていた時より、明らかに反応が早い。
「相馬さんが?」
「一回だけ。でも、次も四日後に行くって言ってた」
「それ、デートじゃないの?」
結衣が身を乗り出す。
「食事だと思う」
「デートでも食事するでしょ」
「仕事の話もするらしいよ」
「仕事の話をしたら、デートじゃなくなるの?」
「ならないの?」
結衣は箸を置き、美咲の方を見た。美咲は口元へ手を当て、笑うのを堪えている。
「お母さん。お父さんに聞いた私が悪かった」
「三浦さんも、同じことを言ってたよ」
「三浦さん、正しい」
蒼真には、なぜ三浦の話まで肯定されたのか分からなかった。
「八神さんの妹が、次の店を三つまで絞ってた。相馬が甘い物を嫌いじゃないと確認して、苺のメニューがある店を予約してたよ」
美咲の目が僅かに細くなった。
「相馬さんは何て?」
「八神隊長に何か聞こうとしてた」
「本人には?」
「聞いてなかったと思う」
美咲は堪えきれず、肩を揺らして笑い始めた。結衣も呆れた顔のまま口元を緩めている。
「相馬さんも、お父さんと同じ種類の人なのかな」
「違うと思う」
「どこが?」
結衣に聞き返され、蒼真は答えを探した。
「相馬は、ちゃんと分かってると思う」
「分かってたら、八神隊長に聞かないんじゃない?」
「確認したかったのかもしれない」
「本人に聞けばいいじゃん」
結衣の指摘には反論できなかった。
話の中から知っている言葉だけを拾った昴が、スプーンを掲げる。
「いちご、たべる!」
「昴の話じゃないよ」
「すばるも、よやく!」
「何人で?」
美咲が尋ねると、昴は食卓にいる全員を指差した。
「ぱぱ、まま、ゆい、すばる! いちご、よっつ!」
「パフェを四つは多くない?」
「お父さんと昴で一つにしたら?」
結衣が言うと、昴は自分の分を守るように両腕を胸へ抱えた。
「ぱぱ、じぶんの!」
「まだ食べに行くとも決まってないよ」
いつの間にか、試験の反省ではなく、家族で苺を食べに行く話になっていた。美咲が予定を確認し、次の日曜日なら空いていると言う。結衣は部活の時間を調べ始め、昴はすでに四つの苺パフェが運ばれてくるものと思っているらしい。
蒼真はその様子を見ながら、朝、美咲に言われたとおり、普通に帰ってこられたことを実感した。
試験の結果が悪くても、家へ帰れば、それだけを話し続けなくていい。
そのことが、次の試験へ向かう自分を支えているのだと、蒼真はまだ言葉にはしなかった。
*
夜。
日記。
―――
八月九日。
第八回評価が行われた。
対大型用の軽量貫通槍を使用した。
槍は軽く、通常の実体剣よりも間合いが長い。小型や中型に対しても使用できると思う。
可動する障害物の間を通り、大型個体の甲殻へ二度攻撃した。攻撃後は三秒前後で安全圏まで離脱できた。
機体の損傷はなく、自分も帰還できた。
ただし、最大出力でも甲殻を貫通できなかった。
帰ることはできるが、大型個体を止めることはできない。
結衣から、大型を倒すために作った武器なら、倒せなかったということで合っていると言われた。
そのとおりだと思う。
昴には、勝ったのか負けたのか聞かれた。どちらでもないと答えたが、分かりにくかったらしい。
美咲は、できることと、できないことを調べたのだと説明した。
帰れることだけでは足りない。
しかし、倒すために帰れなくなるのも違うと思う。
相馬は、八神隊長の妹と二回目の食事へ行く予定らしい。
八神隊長の妹は、苺のメニューがある店を予約した。
美咲と結衣は、食事ではなくデートだと言っていた。
仕事の話をする場合に何が違うのかは、まだよく分からない。
次の日曜日に、家族で苺のパフェを食べに行くことになった。
相馬の話をしていたはずだが、なぜ自分たちも行くことになったのかは分からない。
以上。
―――
日記を閉じたあと、蒼真は中央防衛局から届いていた次回評価の資料を開いた。
画面に表示されたリポルの右腕には、肘から肩近くまでを覆う巨大な杭打ち機が固定されている。射出時の反動を抑えるため、両脚には地面へ打ち込む補助杭が追加され、腰部からも二本の支持腕が伸びていた。
武装の重量は、今回使用した槍の六倍を超えている。想定貫通深度は、大型個体の胸部甲殻を越え、その内側にある重要器官へ届いていた。
威力は足りている。
蒼真は構造図を拡大し、射出後の手順を確認した。
杭を分離し、右腕の固定を解除する。脚部補助杭を抜き、腰部支持腕を格納する。
手順は書かれているが、完了までに必要な時間が記載されていない。
蒼真は資料への質問欄を開いた。
《射出後、機体が移動可能になるまでの所要時間を提示してください》
送信してから、もう一度、地面へ固定されたリポルの図を見る。
今度の武器なら、倒せるのかもしれない。
ただし、撃ったあとに帰れるとは、まだどこにも書かれていなかった。
面白いと思われたら、ブックマークして頂ければ幸いです。
また、いいね。評価もしていただけたら執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。
感想も頂けましたらありがたいです。
よろしくお願いします。




