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トラストルノ  作者: なさぎしょう
輪舞曲
78/296

SOUP本部 死神


立ち上がった人物の、どこにも怪我が見当たらない。なぜだ?

さらに、目元しか見えない状態であってもなお、その人物に既視感がある。


「まいっち‼︎」


あまりの出来事に、あろうことか放心してしまっていた。名影の声とともに意識をはっきりさせた途端に目前に迫る存在に圧倒させられる。

いつの間にか刀を鞘に収め腰辺りで持ち、まさしく武士か侍なんぞのように、低姿勢で間合いを詰めながら斬りかかろうとしてくる。

眼前に迫った驚異に、伏は咄嗟に自分の周りにあるワイヤーを引く。しかし引き寄せられたのはたったの2本…これでは相手の動きは止められない…


抜き放たれた刃が伏の喉元を確実に捉え斬り裂こうと迫った瞬間、名影がその間に割って入り、器用にナイフで受け止め、伏を後ろへ押し逃した。


「なーちゃん‼︎」


しかし相手はそのナイフに沿って、名影の頭めがけ刀を突き出す。それを名影は屈んで避けると、そのまま足を上に突き出し刀の側面から蹴り上げた。

そのまま抜かれていない刀を相手の懐から一振り抜き取ると、胴めがけて振り切る。

それは相手にひらりとかわされる。


「ねぇ、顔を見せてよ。」


名影が声をかけると、相手は一瞬考えるような素振りを見せる。が、見せる気はないようで刀を構え直した。

名影も扱い慣れない他人の刀を、それでも自分の扱い易いように持ち替えた。



背格好の酷似した2人が対峙し、互いの出方を伺っている。間に第三者が割って()るような隙はない。

さらに先程の狙撃以来スナイパーが撃ってこないことも相まって、2人の間には峻烈な空気が漂っている。

伏は迷っていた。

名影について参戦すべきか、それともスナイパーを追って真城の方へ加勢しに行くべきか、それかもう1人を追っているであろうアレイを探しに行くか…


その時、伏は名影の手元が目に入った。親指を出し、それを人差し指1本で拳の中にしまいこむ。

「1人でいい」の合図だ。

伏はゆっくり2人から距離をとると、走って真城を追っていった。




「さて、これで1対1(ワンオーワン)ね。」


名影は目の前に立つ人物に話しかける。

相手からの返事は期待していない。どちらかというと、自分に言い聞かせ、落ち着かせるように口に出す。

名影が構えたまま素早く一歩踏み出すと、それよりもさらに早く相手が間合いを詰めてくる。


「…っ‼︎」


早いっ‼︎

目にも留まらぬ速さ、とはこういうことをいうのか、と名影は感嘆する。

同じ武器(えもの)を使うせいか、先程の接近戦を得意とする奴よりも動きを目で追い、反撃することも出来るには出来る。ただ癖までも自分に似すぎているために、力は拮抗している。

相手もタイミングを見計らうかのように、ここぞ(・・・)という一撃が打てずにいるようだ。



切っ先をかわされるその先、伏せた頭が見える。

チャンスだ‼︎


「もらった‼︎」


刀とは別に、袖口からナイフを滑り出し切りつける。


…が、刃は届かなかった。


「は…?」


何かが綺麗にナイフを受け止めている。

見覚えは…ある。どこで見たかは思い出せないが、旧時代の代物で、名前は、たしか…


「なんで…っ扇子⁉︎」


思わず素っ頓狂な声が出る。

と、そのまま扇子に挟まれたナイフごと左手が引っ張られる。そして脚を思い切り蹴り出され、刀を持った右手は刀ごと掴まれ、引き倒される。


「やばっ…‼︎あぶなっ‼︎」


倒されるとほぼ同時に刀の切っ先が眼前に迫る。


ザシュッ…


間一髪でそれを避けるとくるりと反転し、なんとか腕を振り払って起き上がる。が今度は顎に相手の膝蹴りがヒット。

目の前がチカチカとし、名影は瞬間、全てが暗闇に飲まれたように感じた。


「…‼︎げほっ」


仰向けに倒れた名影の上に、容赦なく乗っかってくる。そのまま名影が取り落としたナイフを振り上げる。





…終わった。


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