SOUP本部 狂乱4
「なっ…がっ…‼︎」
ジャックの背後から声をあげた人物は、椅子を大きく持ち上げると盛大に振りかぶり、ジャックの頭へ叩きつける。
あまりに躊躇いなくいくものだから、こちらがジャックを心配してしまいそうなほど。
ジャックの身体はチェーンソーと共に右手に吹っ飛んだ。しかし、頭を押さえながら早くもむくりと身体を起こす。
「さぁさぁ早く開けちまおうぜぃ。」
ナイスタイミングで助けてくれた人物--カルマはリドウィンを手で招き、扉を開けるように指示する。
この状況にあって、カルマはいまだニコニコと笑っている。
リドウィンは焦る心を落ち着かせながら、扉の解除を行っていく。解除カードを、持っているであろう人物も"SURVIV"のヒントを頼りにすると案外すぐに見つかる。
「んんっ…ゔぅ〜…」
ジャックが意識をしっかり覚醒させようと頭を振っている。…待て、待ってくれ‼︎あと少し‼︎
「開いた‼︎」
扉が開くと同時に4人はなだれ込む…が扉が閉まる寸前ギャッギャッと嫌な音をたてチェーンソーの刃が割って入ってきた。
「ひぃっ‼︎」
チェーンソーの刃を見るだけで慌てる3人とは対照的に、カルマは陽気な掛け声とともにいつから、どこに仕込んでいたのか持ち手の長い縫い針のようなものを数本取り出す。
そしてそれを器用に片手に持つと、もう片方の手で一旦扉を大袈裟に開け放ち、その針をジャック目掛けて投げつけた。
突然の事にさすがのジャックも身体を引き、チェーンソーで弾き、避ける。
カルマはその隙をついて扉をきっちり閉めねしまった。
なんたる早業。
「すごい…」
思わずアリスが呟いた。
「さて、逃げるんだろう?」
普段はなんとなく周りからも浮いていて、変わった奴…くらいに思っていたクラスメイトの、思わぬ一面。
リドウィンは少し、おそろしくもあった。
とにもかくにも走り続けて、突き当たりまでやってきてしまった。
「出口はどこなの⁉︎」
「来た道を戻るか?」
「いや、そもそも地図も無いのにやみくもに走って来すぎた…もしかしたら出口は無いのかもしれない。あの部屋まで戻らないとならないかも…」
リドウィンは一応ゲームの画面を見てはいたのだが、複雑に入り組みすぎて、一体どこがどうなっているのやら…出口がどこなのかもわからない始末だ。
いまのところ、チェーンソーの音が聞こえてこないのだけが救いだった。
「なぁ、リド君や。切り裂き魔の他に白兎がどこかにいるはずなんだけど見っけられる?」
カルマは自分の端末を出そうとしない。
いやそもそもPEPEでも女生徒達に「連絡先を教えて」と言われた時に「端末を持ってない」と返していたような気もする。
「しろうさぎ…しろうさぎ…」
「な…なぁ」
端末で何かを探し始めたリドウィンを見つつ、フィリップがカルマに声をかける。
「んー?なぁに?」
カルマは能天気に返す。
「さっきからリドは何を見てる?白うさぎってなんだ?」
それから…それから…と質問は次々に溢れてくる。カルマはそれを聞いているのかいないのか、キョロキョロしている。
しかしフィリップがあらかた質問を出し終えると、ぐるりとフィリップのほうを向き、 口を開いた。
「これはねー、ゲームなんだよ。外側からは完全なる非現実。内側に居てなお非現実。弱者や敗者になってはじめて現実になるようなゲーム。」
カルマは至極簡単にSURVIVについて説明する。そしてリドウィンもはじめて聞く情報の数々を披露しはじめた。
「噂じゃあ、このSURVIVを作ったのは今注目の反トラストルノ集団である"トランプ"の構成員…というか幹部かな?11番目のジャックらしいんだよねー。」
トランプには13人の幹部がいるらしい…とか、実際はジョーカーを含めて14人で構成されているなんて話は本当にくだらない噂話程度でなら聞いたことがある。その11番目のジャックがSURVIVを何らかの目的--おそらくは内部情報を外部へ間接的に配信するため--に作り出した。
「でも実際は14〜5人程度じゃ今ほど強くはならない。つまり構成員だか幹部だかの下にさらに使いっ走りみたいな連中もいるわけだ。」
特にジャックは大量にそういった人々を使っているらしい。
「そんなジャックが特に目をかけて使っているのが、ゲーム内での組名"不思議の国のアリス"っていう長ったらしい名前の連中らしいんだよねー。こいつらは所謂スパイ集団みたいなもんでさー、普段はカンパニーとかに雇われているはずなんだけど…」
そんな連中がよりによってジャックと手を組んでしまった…と?
いや、ちょっと待て。
「そういえばさっき"白兎"って言ったよね…あれもじゃあ、その連中の1人?」
「あぁそうさ‼︎SOUPに潜り込んだ裏切り者。んでもって俺らをこの戦場へ誘う"案内役"。彼女は実にうまいことやってみせた、と思うよ。」
「彼女…?もう誰だか分かってるの?」
「うん、もちろん‼︎だって彼女がジャック達の味方じゃなきゃあんなに簡単にジャック達が入ってこられる訳ないもの。」
「え……まさか白兎って………⁉︎」
カツーン…ガリガリ…カツーン…ガリガリ…
先程とは違う何かの音が近づいてくる。
人影が見える。
3人はその人物に驚愕し、そしてその人物の持つ物に戦慄した。
「まるで死神の鎌のよう…だね。」




