SOUP本部 狂乱3
「さてーどこかなー?」
不思議な青年--ジャックの声と共に、聞き慣れない、無機質な音が耳に響いてくる。
キー…ギャララララ…ギギ…
金属の回転音と、その合間合間に金属同士の擦れ合う嫌な音が聞こえる。
「な…なぁ…この音って…」
フィリップは不安そうにリドウィンを見るが、リドウィンはしーっ‼︎と口元に指を当て牽制する。
リドウィンにはなんとなく、この音の正体が想像できていた。
おそらく……チェーンソーだ。
前に見た旧時代の映画に、チェーンソーを持った殺人鬼の出てくるやつがあった。しかし今の時代、チェーンソーなどほとんどお目にかかる事がない。何かを切るならレーザーカッターでやればいい。チェーンソーも、例えば包丁や鎌、あるいは刀、もっと広げれば紙の本やスーパーマーケットのように旧時代の廃れていってしまったものの1つだ。残ってはいても珍しい。
「出ておいでよ、お客人‼︎」
バリバリバリ…‼︎
何かを切断したのか物凄い音が響きわたる。
キーン…
次いで今度の甲高い音のあとには電気がばっと消えた。完全な暗闇だ。
「どーこーかーなー?」
「フィル、アリス、今だけ…今だけでいい、俺の指示にしたがってくれないか。」
リドウィンは真剣な眼差しで2人に訴える。2人はもう、なにがなにで、どうすればよいのやら、という表情でリドウィンを見返した。
「リドに従うのは一向に構わないよ…だけどどうする?」
「逃げる算段もつかないし…それに…カルマが‼︎いないのよ⁉︎」
確かに彼がいないのは心配だ。だが今はそれどころじゃない、自分の命が最優先。
「彼の事は…どこにいるか分からない以上今はどうもできない…今は自分を生かすことにのみ専念しないと。」
そう言うと、フィリップはコクコクとなんども頷く。が、アリスは顔を顰め、渋々といった感じで頷いた。
「いいか、まずは向こう側のあの扉まで行く。そうしてあの扉の中へ入るんだ。とにもかくにもそこまでまずは行こう。」
「待って、あの扉には電子パネルが付いてるわ。暗証番号と、おそらくカードキーの類が必要なはずよ。」
「あぁ、大丈夫だ。問題無い。」
「え?」
そう、問題無いのだ。
先程ゲーム内にて秘密アイテムとやらが表示され、さらにチャンスクイズなるものも出題された。
おそらくカードキーは秘密アイテムの表示されている辺りにいる人物が持っているはずだ。そして暗証番号を示すと思われるクイズ…これの解答やら意見やらが突然吹き出し調に出てきた。
何かはよくわからないが、その中から説がしっかりしているいくつかをピックアップした。その上で自分でもクイズを理解し、これだろう、というものに目をつけた。
「行こう。」
2人に合図を送り、ゆっくり机の下を移動する。音を立てないように必死だ。
懸念されるのは、相手も"SURVIV"を見ていて回りこまれること。
あとちょっと…あと少し…
「見ぃつけたー♪」
あまりにも扉に集中しすぎて、金属音が近づいてきていることに気がつかなかった。
ジャックは机の上からこちらを覗き込んでいる。そしてそのままチェーンソーを3人めがけて振り込んできた。
「いやぁぁぁ‼︎」
泣き叫ぶアリスをすんでのところでリドウィンが引き寄せ、フィリップも背後に飛び退いて避ける。
反撃は出来ずとも…訓練は受けておいて良かった。
リドウィンはそのままアリスを自分の背中越しに、先に行かせると、さらに振り上げられたチェーンソーめがけて近くの椅子をぶつける。
椅子が爆音とともに木っ端微塵に砕かれる。こんなので人間なんて切ろうものならたまったもんじゃない。
リドウィンは目で「行け‼︎」とフィリップに合図を送ると、そばにあった電気コードのようなものをチェーンソーめがけてふっとばす。
すると狙い通り一瞬チェーンソーにコードが絡まり動きが止まる。
フィリップは身を屈めたまま大回りで扉前にいるアリスの元へ。
「…っがはっ」
と、コードの絡まったチェーンソーはそのままに、ジャックの細い脚がリドウィンめがけて飛んできた。細いが力強く、そして的確に急所に深く入りこむ蹴り。
「ぐぅっっ…」
リドウィンは思わず呻き、蹲ってしまう。
その間にジャックは軽々と机の上を走りアリスとフィリップに近づいていく。
「いやぁぁぁぁ‼︎来ないで‼︎」
アリスはもうパニックだ。
「そんなに、拒否んないで…よっ‼︎」
ジャックは容赦なく、横に振り、2人を切り裂こうと力を込める。
「はいストーップ‼︎」
切り裂かれそうになった寸前、聞き慣れた声がジャックの背後から聞こえてきた。




