SOUP本部 SideS 準備
ウォールストリートを散策し終えて家に戻ると、軽くシャワーを浴び身体を拭き、黒のフィットスーツを着る。
薄く、身体に密着するダイビングスーツのようなそれはジェスターが個人的に手に入れたものだ。トランプの調達係を経由せず、自らで選び買った。
着てから、横にある紐を引くと一気に身体のラインに沿って空気が抜け、全体的に少し締めるような形になる。それから後はケイトやシンクと同じ。
暗色の迷彩服に、黒のフィールドジャケット…ただジェスターのだけはフィールドジャケットの丈が少し長い。なにぶんジェスターの扱う武器類は長さのあるものが多い。
日本刀もさることながら、折りたたみ式ーーといっても半分にしか折れないーーの弓もしかり。矢の方もジャケットに隠しておかねばならない。
ケイトのように、ある場所に留まって戦うのならバッグやケースに詰めれば良いのだが、ジェスターはそれらを持ったまま動かなければならない。
ある程度の着替えや準備を済ませると、寝室に行き、1つの写真を手に取り胸に押し当てる。それからそれを大事そうに内ポケットにいれる。
写真には保護フィルムが貼られており、全く色褪せることもなく、写真の中の2人は笑いかけているのだ。
自分でも女々しいことをしている…という自覚はある。今時、紙の写真を持っている人間さえ珍しい。しかもそれを"御守り"として持っているのだ。
ジェスターは別に神は信じていない。
が、この写真の中の人物のことは信じている。いまだに守ってもらえる、そんな気がしてしまっているのだ。
あとは戸締りをし、上から黒のオーバーコートを羽織って、家を出る。出てすぐに、脇道のところに入り、地下道へ…人の関心を自分に向けないように上手いことやり過ごす。ジェスターでしか出来ない芸当。
とりあえずは待ち合わせ場所へ…