虹貧のレイン③
本日も投稿…次は楽しい戦闘の時間だぁ!
――カラカラカラカラッ――
車輪が回り、湿った土に轍を作り出す…しかし、獣達の軍靴が途切れる事は無い。
「主様…山林に進行してしまいますが…」
「進むしかない…ですかね」
「〝火の魔力〟がまだ薄い…入って確かめるしか無いだろう…アリエル、警戒しながら進行を」
二人の問いにそう答え…僕達は馬車を森の中へと進ませる。
「しかし、まぁ…誰も彼も考える事は変わらないなぁ…マナリア君、何時でも動ける様に備えておくんだ」
「?…急にどうしたんですか?」
アリエルに先へ進ませながら、揺れる馬車の中で、僕はそう言い、マナリアに視線を向け…彼女へ警戒を促す。
「――まぁ良い、丁度〝こういうケース〟も知ってもらいたかった所だからね…マナリア君、以前僕は言ったね…何故僕が外出をしないのか…と」
「はい……アレって単にレインさんが運動嫌いなだけじゃないんですか?」
僕の言葉にマナリア君の純粋な疑問が突き刺さる…なまじ当たっているから、否定出来ないのが辛い…!
「うん、まぁ…ソレが理由の半分だが、もう半分違う理由がある」
「……その理由って何ですか?」
マナリア君の問いに僕は少し周囲を見渡して…言葉を続ける。
「――うむ…前にも行ったが僕は学園の腫れ物だ…僕の持つ知見や才能が学園在住の権威主義な凡骨共にとっては妬ましく、また目障りらしくてね…しょっちゅうちょっかいを掛けられる…特にそう言う連中が好んでやるのが…まさに〝この状況〟」
「ッ――〝我が主〟」
その言葉に僕達は立ち上がり…馬車は止まる…そのただならぬ雰囲気に、僕達の間に緊迫が拡がり…動揺する彼女に、僕は言う。
「……〝暗殺〟だ」
その瞬間…僕は自身の魔力を使い…馬車の中から空へ〝虹の矢〟を放つ…ソレは馬車の天井を突き抜け…空高くへ昇ると…パンッ、と軽い音を立てて砕け散り――。
その〝挑発〟が、一息に停滞した状況を変動させる切っ掛けとなった。
「〝アリエル〟…〝宜しく頼むよ〟…マナリア君、アリエルに続け」
「承知致しました」
「――はいッ!」
僕達が馬車の中から飛び出す…その刹那四方八方から無数の魔術が飛び交い…馬車の中中をグチャグチャにする…アレでは荷馬車の馬も生きては居まい…。
「――あ〜あ〜…僕達の帰りの足が無くなったじゃないか…これだから君等は嫌なんだよねぇ!」
アリエルに抱えられながら僕は溜め息を吐いて僕達の周囲に現れた、如何にも〝不審者〟と言わんばかりの黒ローブの彼等を見渡す。
――ジッ――
しかし、〝金色の眼〟に映る連中はどいつもこいつも有象無象ばかり…そこそこ、人並みの域を出ない極普通の魔術師共だ。
「君等じゃないね…〝獣災〟をけしかけて来た本人は誰かな?」
(――とはいえ、それなりに頭が回るね)
僕は彼等の脅威を識別しつつ、いつの間にやら起動していた結界を見て、思考する。
(〝遮断結界〟…外部への発信と逃走の阻止…地脈の魔力を使った模範的な結界か)
「結界を壊しても良いけど…逃走されるのは面倒だねぇ」
またちょっかい掛けられると面倒だ…出来るなら此処で〝処理〟しておきたい…ソレに――。
「――良し、アリエル、君はマナリア君と彼等を〝処理〟しといてくれ」
「承知致しました…マスターは?」
「ん〜…僕は〝アレ〟を潰さないとかな」
〝アレ〟を野放しには出来無いしね。
僕はそう言い、結界の奥からやって来る〝ソレ〟を見上げながら、愛銃を引き抜く。
――ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…――
ソレは、〝燃え盛る死体の群れ〟……死体が動く事、それ自体は特別珍しい事じゃない。
「〝死霊術〟に〝属性付与〟…数ヶ月前に新しい魔術理論が発表会で出てたのを覚えてるよ…〝属性死霊〟だったかな…雑兵は量が多く…何より〝面倒〟なのが、彼等の〝統率個体〟の方だ」
属性を有している事には目を引くが…何より厄介なのは〝死霊の素体〟の方だ。
「〝オーガ・キング〟…Bランク上位の個体だ…それもかなり質が良い…腕の良い死霊術師なら、かなりの脅威だよ…〝腕の良い死霊術師〟ならだがね」
人間の3倍はある巨躯に、全身を覆う分厚い筋肉の鎧…凶悪な爪と牙を〝炎の血〟が通い…出で立ちは正しく〝地獄の悪鬼〟だ。
「――じゃあ、後は頼んだよマナリア君、君の仕事はアリエルと一緒に此処の連中が私の邪魔をしないよう処理する事だ…コレを使うと良い」
そんな化物率いる死霊軍団を尻目に、僕はそう言いアリエルの持つバッグから、一つのキューブを取り出し手渡す。
「ッ…コレは?」
「〝魔術武装〟…以前試してもらった試作品とは一緒にするんじゃないぞ?…コレは君の入学祝いに拵えた私謹製の〝傑作品〟だ」
ソレを手渡し、アリエルと合図を交わすと…僕は自身の〝魔術武装〟を展開し、腰のホルダーから〝虹の魔石〟を取り出して嵌め込む。
――バサッ――
「【探索者《ウォーカー》】…〝全局面対応補助〟」
『〈警告:魔力消費が過剰状態です、続行時の機能維持時間は3時間です〉――〈続行しますか?〉』
「〝十分〟だ」
『〈続行:出力を最大にします〉』
――カチャン、ガチンッ、シュッ――
――キュィィィンッ!――
「――さて、僕に肉体労働をさせた不届き者を誅しに行こうか♪」
――バビュンッ!――
○●○●○●
足から圧縮された風を放ち、レインさんが空を飛んで奥へと飛んでいく…ソレを眺めていた時、不意に横からアリエルさんの手が伸びて、私を抱えて横へ飛ぶ…その瞬間。
――ビキビキビキッ!――
地面が隆起し鋭く尖った岩が突き出す…〝土の魔術〟が〝明確な敵意を以て繰り出された〟…ソレを見て漸く私は自身が戦場に立っていた事を思い出す。
「すみませんアリエルさん、助かりました!」
「余所見は行けません、マナリア女史」
「気を付けます!」
アリエルさんの手から離れ…私は戦う意思を決めて、キューブを強く握る。
――フワッ!――
そして、魔力をキューブに込めると…その瞬間、キューブに無数の魔力の線が走り…〝声〟が響く。
『〈〝所有者〟の起動要請を認識――魔術武装:【戦女王】を展開します〉』
そして、声が響いたかと思ったその瞬間…キューブがバラバラに分解され…私の両腕にキューブの部品が取り付き、変化する。
――ギュッ!――
『〈〝展開〟――魔術武装:戦女王の光剣、魔術武装:戦女王の守護盾〉』
「――〝火弾〟!」
そんな私へ目掛けて、敵の一人が炎の塊を飛ばして来る…ソレを前に、私は右手に取付けられた〝盾〟を構え…魔力を込める。
――ズドォンッ!――
直撃し…火が暴れ周り、視界を包む…でも。
「――うん…〝凄く良い〟!」
「ッ!?」
私はそう言い、盾を振り抜き、纏わり付く炎を引き剥がすと…左手の剣にも魔力を注ぐ。
――ヒュンッ!――
その瞬間魔力が白く輝く光の剣を生み出し…私はソレを両手に…アリエルさんに言う。
「アリエルさん、凄いです…コレ…凄い出力ですよ!」
「マスターの作り上げた魔術武装に加えて、マナリア女史の膨大な魔力故でしょう……さて、お喋りは此処までに――」
「はい!」
そして、私達は改めてその手に獲物を握り…四方八方を囲む〝敵対者〟達を見据え…告げる。
「「〝仕事〟です(ね!)」」
その言葉は、同時に戦闘の合図となり…その瞬間、私達へ無数の魔術が放たれ、私達は動き出した。
【探索者】
レイン・マナルガ謹製の魔術武装、大地、大海、天空…汎ゆる場所の移動を補助し、高度な歩行性能を求められ作られた一品…廉価版の【放浪者】も販売されており売上は上々。
〈一局面対応補助・(地、海、空)〉:基本形態、大地なら走行を、海ならば泳行を、空ならば飛行を高機動性を保持する…魔力消費は低い。
〈二局面対応補助〉:上記から+もう一つの局面に対応出来る、上記よりも安全性、対応性は上がるが魔力消費は多い。
〈全局面対応補助〉:文字通り汎ゆる状況に対して最大の行動補助が可能な形態、その分魔力消費は絶大で利用には計画性が必要。
【戦女王】
レイン・マナルガ作の〝戦闘用魔術武装〟…その中でもマナリア・ノーホープの為に調整された特別品。
マナリア・ノーホープの魔力を最大限に変換し…高出力低燃費を実現した代物で、理論上三日三晩の普通出力を継続出来る。
〈戦女王の光剣〉:【戦女王】の基本武装…魔力によって形成された剣で鉄より鋭利で、出力によってその威力は更に増加する。
〈戦女王の守護盾〉:【戦女王】の基本武装…魔力によって形成された盾で、出力によって盾の大きさ、厚さを任意に変更させられる。
〈情報未解放〉




