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助手の仕事

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――ゴーンッ…ゴーンッ…ゴーンッ…――


鐘の音と共に、学園都市は目覚める…程なくして都市内では街に立ち並ぶ都市の住民と、学園都市に足を運ぶ学徒や研究者達の犇めきによって、活気が満ちるだろう。


「―〝午前5時〟丁度…時刻通りに到着しましたね、マナリア女史…大変結構で御座います」

「ふわぁっ…〝仕事〟ですからね…初日から遅刻は不味いでしょ?」


そんな街の、まだ人気の一つもないロザリア内の中央広場で、私は欠伸を噛み殺していた…その訳は。


「さて、それでは早速〝助手〟としての業務を始めましょう…〝入学式〟が始まる一月の間ですが、私も教育係としてお供致します」

「はいっ、宜しくお願いします!――〝先輩〟!」

「…では、最初の業務です…今から学園都市外苑にある〝豊穣の森林〟へ向かいます」


――ズバリ、私が彼女の主…〝レイン・マナルガ〟の助手になったからだ。





〜〜〜〜〜〜


話を遡る事一日前。



「助手…ですか?」


彼…レインから紡がれた提案に私が問い返すと、彼は頷き私へ答える。


「そう…〝助手〟だ、僕の研究に協力し、僕の身の回りの雑務を処理して欲しい…給与も支払おう」

「ッ!――お金ですか!?」


その説明…特に給料へ私が反応すると、彼は頷きながら、書類を一枚…私の方に向ける。


「あぁ…給与は大体…一月辺り〝金貨20枚〟…コレを〝基本給〟に考えよう…時偶通常の業務とは異なる仕事を依頼する事もある…その時はまた別途報酬を用意させてもらう…どうかな?」

「き、金貨20!?…そ、そんなに貰って良いんですか!?」

「あぁ、構わないよ」

「――やります!」


その書類にサインをしつつ、私がそう言うと彼は頷き…私へ言う。


「――そう容易く魔術師を信用するのは不安だが、兎も角ありがとうマナリア君…では、明日から〝助手〟として仕事をしてもらう…マナリアを教育係に付けよう…明日の5時、〝中央広場〟に来てくれ」


〜〜〜〜〜〜〜


と言うわけである…さて、そんな前日の事はさておいて。


「〝豊穣の森林〟ですか!?――彼処って確か、〝精霊達の縄張り〟ですよね?…大丈夫なんですか?」


私はアリエルさんにそう聞き返し、先へ進むアリエルさんの後を追う…そんな私に対してアリエルさんは、やはり無表情のまま私の疑問に淡々と言葉を紡ぎ、答える。


「問題有りません、コレは〝精霊達からの依頼〟でもありますので」

「???……どういう事ですか?」

「〝行けば分かります〟…それと、今更ですがマナリア女史――」


寧ろ余計に深まる謎に、私がそう答えるとアリエルさんがふと私の方を真顔で見つめながら問う。


「貴女は、〝ゴブリン〟相当の魔物を討伐した事は有りますか?」

「へ?…あぁ、まぁ…お小遣い稼ぎに冒険者をしていた事も有るので…ゴブリン程度なら、問題は…」

「宜しい、仕事が手早く済みそうです」


アリエルさんはそう言うと、再び沈黙し歩を進める…その背を見つめながら、アリエルさんの言葉の意味を考えていた私は、気付く由も無かった…。


コレから始まる…〝地獄の助手業務〟が…目前に迫っていた事を。


●○●○●○


――コンコンッ♪――


「ッ!――〝何者〟かな?」


軽快なノックの音に僕は、開いていた魔導書を閉じ、扉を注視する…さて、今日は来客の予定は無かった筈だ。


『〝私〟よレイン…〝教師補佐の申請〟の件で話があるの』

「…あぁ、君か」


僕の問い掛けに返ってきたその言葉に、僕は扉の先に居るのが〝彼女〟だと理解し、入室を許可する。


――ガチャッ――


程なくして彼女はこの部屋へと入って来る…長身痩躯の少女の様な風体の彼女は、一度辺りを見渡し僕の姿を確認すると、物言いたげな雰囲気で僕の下に歩を進める。


「――やぁやぁ〝学園長〟…お疲れかな?」

「貴方の所為で…と枕詞をつければ、貴方は仕事をしてくれるのかしら?」

「まさか、…今月分の〝仕事〟は終わらせているんだから、僕の責任にするのはお門違いだ」

「……」

「それに――〝試験官の人選ミス〟は君の責任だろう?」

「……うっさいわね」


彼女との親しみ慣れたじゃれ合いを繰り広げながら…ケトル型の魔道具に茶葉を詰めて水を流し込み、煮立たせる…その合間に棚から小瓶に詰まった魔術薬を幾つか取り出して彼女のテーブルに置く。


「紅茶の腕は期待しないでくれよ、アリエルは今僕の助手と仕事中だからね」

「〝助手〟ねぇ…あの試験生…〝マナリア・ノーホープ〟よね?…正直、あの子の何がそんなに気に入ったのか分からないんだけど」


そして、再び椅子に座り彼女と対面すると、彼女は僕へそう言い、テーブルにある書類に目を通す。


「〝マナリア・ノーホープ〟…〝イストル王国出身〟、〝フーライの街に住まう15歳女性〟、〝冒険者ギルド所属のDランク冒険者〟、〝魔術師〟としての成績は凡庸…魔術的才能に目立った点は――」


彼女の言葉に、僕は彼女の言葉を引き継ぎ…〝マナリア・ノーホープ〟の持つ優れた点を口に出す。


「〝膨大な魔力〟…試験生達の中では〝トップ〟…いや、この学園でも片手で数える程だ」


その言葉に学園長は肯定に頷くが…その後、言い難そうに言葉を濁す。


「……けれど、あの子の〝魔力色〟は…」


彼女の言わんとする事を理解した僕は、そうと彼女の言葉を引き継ぎ…〝既存の魔術師的価値観〟における〝彼女のソレ〟に付いて言及する…そう。


「――〝色無し(ノーカラー)〟…先天的に持ち得る魔術的才能、〝属性〟の概念が彼女に備わっていない」


この学園が、学園長の理想とする様な〝研究者気質〟であったなら、大した問題では無かっただろう…だが。


「俗物は〝プライド〟に固執する…自身に劣る才者が、自身以上の素質を持つ事を良しとしない…〝色無し〟で有りながら、学園随一の魔力を誇る彼女は恐らく…権威的で非効率的な〝凡骨の悪意の的〟になるだろうねぇ」

「……」


僕がそう言うと、彼女は苦々し気に顔を顰めさせて…不味い紅茶で茶を濁した。

【通貨】

この世界における通貨価値について。


銅貨(100円程) 銀貨(1000円程)金貨(1万円程)…金貨20枚は20万円程であり、この世界で見ればそこそこ裕福な生活が出来る程の給料である。



【魔力色】


魔術師が生まれ持った時点で内包している〝魔力の属性〟…赤(炎)、青(水)、茶(土)、緑(風)、白、(光)の事


複数の属性を持つ魔術師は〝色彩者(カラーズ)〟と呼ばれ、畏敬と嫉妬の対象となる。


例外的に〝黒色〟は〝色無し(ノーカラー)〟と呼ばれ、汎ゆる魔術属性を持ち合わせていないとされている。

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