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講義室は一触即発

本日の投稿出来た…でも良いサブタイトルが思い浮かばねぇ。

――ゴゴゴゴゴゴゴゴッ――


「ハァッ…ハァッ…ハァッ…!」

「ッ……!」


喘鳴を上げる、金髪の娘…萎縮し恐怖に縮こまるその取り巻き達…相対する様に佇む少年…凍える教室の空気に…誰一人言葉を発さない。


「―――〝はぁぁ〟…!」


深い溜め息が…僕の身から漏れ出す…その行動一つで、教室がまた緊張状態に陥り…皆の視線が僕に集まる…あぁ、全く面倒だ。


――バンッ!――


「ちょっと、何今の魔力反応――って」


この状況の処理に頭を掻いていた時…僕は不意に横に現れた〝都合の良いスケープゴート〟へ目を向ける…。


「何?…どう言う状況なのか説明して頂戴――〝レイン〟」

「喧嘩両成敗って所かなぁ…うん」


僕の言葉に彼女はより詳しく説明する様にと視線で促してくる……よろしい…ならば事の次第を遡って説明しようじゃないか。



〜〜〜〜〜〜〜




――バァンッ!――


「あぁもうっ、やっぱり此処に居た!」


研究室の扉が乱暴に明け放たれ、僕を見てそう言うマナリア君が魔導書を読み耽る僕のローブを引っ張り引きずっていく。


「グエェッ!?――何だいマナリア君…急に、苦しい!」

「何だも何もないでしょ!――あと一分で基礎魔術の講義が始まるのに、先生が遅刻してどうするんですか!?」

「ブハッ…ハァ苦しっ…講義内容は事前に机に配った資料に書いているぞ!?…最初の時間は同送したテストを解くように伝えていたじゃないか!?」


僕は己を軽々と引き摺っていく彼女にそう弁明しつつ、その後ろを歩くアリエルから珈琲を貰う…そんな僕を、マナリア君は困った者を見るような目で見詰め、言葉を返す。


「――それでもちゃんと講義には参加して下さい!」

「むぅ…学園長の様な事を…!」


その言葉に僕は頭を捻り、アリエルに助けを乞うが…しかし、アリエルは首を横に振り無常に僕を切り捨てる。


「マスター、ロザリア学園長との〝業務契約〟が御座います…将来的な利益を鑑みて、講義に時間を割くのは良い判断だと思われます」

「ムッ…アリエルが其処まで言うのなら仕方無いか…」

「……」


その言葉に僕は、引き摺られるのを止めて立ち上がり…赤茶けたローブを羽織って、私の仕事場…〝第1講義室〟…〝現基礎魔術科〟の扉に手を掛ける。


――ガラガラガラッ!――


「――あーコホン、学生諸君おはよう…皆席に着く様に〜」


そして、開かれた扉の先、教壇の方に歩を進めながら僕がそう言うと…生徒達の談笑が満ちていた講義室からピタリと喧騒が止む。


「ふあぁっ…眠い…良し、それじゃあ君達…魔術学園初めての講義だが…その前に改めて自己紹介をしておこうか」


皆の視線が僕を貫く…ソレを背に、僕は広大な黒板にチョークを擦り付け、遠くの彼らにも見えるように大きく名前を書き…皆に視線を彷徨わせる。


「え〜…僕は〝レイン・マナルガ〟…今年から君達の講義を受け持つ事になった〝基礎魔術科〟の〝教師〟だ…後ろの彼女は僕の〝従者〟でアリエルと言う…僕の事は適当に〝先生〟と呼んで欲しい…以上自己紹介終わり」


そして、そう言うと黒板の文字を消して皆に指示を出す。


「早速だが講義を始めよう…席に授業内容を記した資料ともう一つ、問題を書いた用紙がある筈だ…制限時間は30分…それまでに〝テスト〟を終わらせる事――」


僕がそう言い、教壇から砂時計を取り出し時間を弄っていると…不意に僕の説明を遮り、一人の娘が声を上げる。


「――先生、質問ですわ」


その声は鮮明に、自信たっぷりに教室内を巡り…皆の視線を攫う…無論僕とて例外では無く、其処に居る彼女を見て…入学生の名簿に有った彼女の名前を告げる。


「〝ライラ・ハル・カルテッド〟――」


彼女の名を知らぬ魔術師はそういない…大陸東方の大国〝イスカトリオ〟の〝魔術貴族〟…〝賢者カルテッド〟の血を引く〝カルテッド伯爵家〟の長女。


優れた魔術師であり…何よりもその名を轟かせる要因となったのは…。


――ジッ――


〝風と水〟…2つの(魔力)を持つ〝2色持ち〟であると言うとだ。


「――…宜しい、発言を許可する」


僕が彼女の青と緑の2色が入り混じった瞳を見ながらそう言うと…彼女は嘲笑する様な笑みを浮かべて僕を見る。


「――この学園は、優れた魔術師の方々が集う〝魔術師にとって最高峰の学舎〟であると聞きました…皆々様が、思考の知恵者であると」

「ふむ…概ねその認識は合っている」

「〝概ね〟……ですか……では、〝そうではない者〟も、この学園に在籍していると?」

「あぁ、人が群れるとどうしてもその場に適さない者が紛れる事が有る」

「――それは、例えば…」


ライラの問いに僕がそう答えると…彼女は、口端を緩めて、僕の名を紡ぐ…其処に――。


「レイン・マナルガ先生…貴方の様に、貧弱な魔力しか持ち合わせない…〝人間〟…等でしょうか?」


悪意と、侮蔑の感情を込めて…。


「……」

「……ふむ」

『クスクスクスッ』


その言葉に、彼女の周囲から…そんな笑い声が響き渡る…ソレを背に彼女は愉悦に頬を緩ませ、僕を見下ろす…残りの生徒達は、或いは緊張し…或いは怒りを覚え…また、或いは――。


「何です――」


――ザッ――


〝彼女の言葉に否定を述べる〟…。


「――それは、あまりに短絡的な物の見方だな、〝ライラ・ハル・カルテッド〟」


その言葉は、我が助手の怒りを遮る様にして紡がれ…その言葉に嘲笑はピタリと止まり、皆の視線が彼を向く。


「あら、貴方は…エウレシア王国の…」

「〝カイン・フィア・エウレシア〟…エウレシア王国の第1王子だ…カルテッド殿」


其処に居たのは、あの日の入学式で僕の魔術を〝認識〟していた生徒の一人…カイン・フィア・エウレシア…名乗りの通りエウレシア王国を仕切る国王の実子…次代の国王になる、白髪の青年だった。


「〝短絡的〟…ですって?」


彼の到来に、場は一気に高度な緊張状態に陥る…己の言葉を否定された事に、彼女は笑みを少し強張らせ、彼へ問う…その問いに彼は僕を見ながら頷き、彼女へ告げる。


「〝持って生まれた才能〟を〝魔術師の真髄〟とするのは正しく〝優れた者〟のする事では無いな…真に優秀な魔術師とは〝才能の優劣に固執しない者〟の事を言うのだ」

「ッ…!」

(流石百戦錬磨の社交場の戦士…遠回しに相手を煽るのが上手い)


案に〝お前は才能しか見れない凡夫〟と煽る彼の言葉に僕は感心し、彼女を見る。



「……言うじゃ有りませんの、エウレシアの王子様…〝賢者の血筋〟たる私に〝魔術師とは何たるか〟を問うと言うの?」

「〝賢者の血筋〟か…優秀な賢者の血を引くといっても、何世代も重ねれば血は薄くなる物だろう?」

「ッ―――!」


彼女の視線には苛立ちが込められ、その視線がカインを貫く…そして、カインの最後の反論に…ライラの身から魔力が漏れ出す。


――バチッ…!――


「…ふむ」


(〝雷〟…〝複合属性〟か…何処までやれるか気になるが…)


「――おいおい君達、講義中だぞ?…流石に室内でドンパチするのは止め給え」

(――流石に講義中に生徒が重傷になる可能性を放置するのは不味い、ロザリア学園長に怒られる)


保身を兼ねて仲裁の言葉を紡ぐ…しかし、どうやら僕の言葉は届かないらしく…僕と彼女の間に立つカイン君は僕を見ながらその白い魔力を解き放つ。


「申し訳ありません、レイン先生…しかし、どうやら彼女は〝やる気〟の様です」


そう言う彼の言葉に、僕は頭を抱える…今にも襲い掛かってきそうな、彼女の鋭い怒りの視線に…僕は深く、深く溜め息を吐く。


「はぁ……面倒臭いなぁ…!」


僕がそう吐き捨て、懐を漁ると…彼女は、迎撃準備を完了したカインを見下ろし…言葉を送る。


「我が一族を侮辱した事を、後悔させて上げますわ…〝王子様〟」

「短慮な君に僕をどうこう出来るとは思えないが…襲うと言うのなら、抵抗するよ」


場は正しく一触即発…ほんの僅かな切っ掛けで今にも教室は地獄絵図に早変わりすると思われた…その時。


――ジッ――


私は…此方へ賭けてくる〝彼女〟と…目が合った。


●○●○●○


あぁ、もう本当に…何でこんな事になっちゃったのよ!?


今正に目の前で起きそうな〝喧嘩〟を前に…私がそう悪態を吐く。


――ゴウッ!――


衝突し合う2つの魔力に、周囲の子達も緊張から防御の為に魔力を解く…中には彼女や彼へ敵意を向ける者も居る。


(どうする、どう止める?)


二人の衝突は、数秒とない…その間に、私は何が出来る?


――カチャッ――


(ッ…レインさんから貰った【戦女王】を使って…全員を気絶させる?…)


無理だ……今の私には、この状況で彼等に何もさせずに昏倒させる実力が無い。


「――だったら…!」


私は、気配を殺してレインさんの方に駆ける…この緊張状態…ほんの小さな〝変化〟でも彼等の膨れ上がった均衡は破裂する。


(レインさんに止めてもらう!)


…今から魔術が吹き荒れるまで僅か5秒未満…この時間の間に、レインさんに接近して、魔力を渡す。


――ダンッ!――


私が大きく動く…同時に、自身の魔力を解き放つ。


――ブワッ!――


その魔力は周囲の魔力に無差別に、無遠慮に触れ…その均衡を強烈に揺さぶると…刹那、この場に溜まった〝緊張〟は弾け…皆が一斉に魔術式を構築し始める。


「ッレインさ――」


私を見るレインさんに手を伸ばすそして。


――パシッ――


レインさんの手が、私に触れた瞬間…レインさんの〝眼〟に…虹色が奔り…そして。


「御苦労様、マナリア君」


その瞬間…その場は〝一つの魔力〟に塗り潰された。



○●○●○●



――『バキンッ!』――


刹那…何の前触れも無く…この場に構築された〝全ての魔術式〟が…〝崩壊〟した。


「なッ!?」

「ッ!…コレは…」


驚く二人、次いでこの状況に疑問を抱く周囲の者達…彼等は困惑の声を上げ、ざわめきが波及する…誰しもが、この原因を探ろうと躍起になる…その瞬間。


――ゾッ!――


「〝諸君〟…〝少し黙れ〟」


全身を凍るように冷たい〝魔力〟が包み込み…全員の口がその一声に閉ざされる…誰も、彼も…男女、貧者才者の例外なく…この場に居る全ての〝魔術師〟が…唯一人を残して沈黙を強制された。


「ッ〜〜〜!」

「悪いが、君達に呪いを掛けた…〝抵抗〟するのは止めておけよ、未熟な君達では抵抗は呪いの効力を強めるだけだ」


口を開こうと、呻く彼女を見ながら…その場に居る唯一の〝発言者〟は周囲にも戒める様にそう言い…皆へ言う。


「全く…〝喧嘩〟をするな、とは言わない…まだ学生、子供なのだから…喧嘩の一つや二つは有るだろう」

「〝魔術を使うな〟とも言わない、此処は魔術学園だからね、魔術について学び、行使し、より良い物を研究する者として、その力を行使するのは必要な事だろう」


その声は静かに…しかし確かな力強さを持って、この場の大多数の生徒を叱責する。


「…しかし、此処は〝教室〟だ…知識を学ぶ為の空間だ…力試しの為の〝試験場〟じゃない…挙句〝教師たる僕の仲裁〟を聞かず、危険な魔術を行使しようとした〝ライラ・ハル・カルテッド〟及び、その他の生徒達には、相応の罰を課す…君達も、正当な防衛とは言え事を荒立てるのは間違いだ…後で反省文を提出したまえ」

「ッ……はい、申し訳ありません…レイン先生」


僕がそう言うと、カイン君は神妙な顔でそう言い処遇を受け入れる…しかし、彼女及び〝その他の生徒達〟はその限りでは無かったらしい。


――ググググググッ――


「〜〜〜!!!」


彼女等は、滾る魔力に物言わせて僕の呪いに抵抗しようとし、僕を睨みつける…しかし、僕はその行動に溜め息を吐いて言う。


「全く…〝無駄な抵抗〟は止めておけと言っただろうに…話を聞かない生徒だ」


その瞬間…彼女等の目が見開かれ…その目は僕を捉え、身体中から冷や汗が流れ出す…〝余程恐ろしい呪詛返し〟が行われているのだろう…彼女の顔は見る見ると青くなり、呼吸に詰まった苦しげな喘ぎ声が教室のそこかしこから伝わる…その頃合いを見て、僕が〝呪い〟を解除すると彼女等は地面にへたり込み…和らいだ空気を必死に吸って…己の恐怖を掻き消そうとする…。


「――はぁぁ……」


その光景を見て…僕はそう、改めて深い溜め息を吐き…此処へ近付く〝強大な魔力の持ち主〟へ、どう説明すべきか頭を悩ませる……程なくして。


――バンッ!――


講義室の扉を力強く開け放った、赤髪の童女こと〝ロザリア学園長〟が姿を表し、僕を見る。


「ちょっと、何今の魔力反応!?」



……そして冒頭に戻るのだった。

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― 新着の感想 ―
ある人はこんなことを言いました。 『凡才と秀才を分けるのは思考の差』だと。(一応、あの作品のジャックと"カイン"が会ったあたりの言葉) そりゃ、『基本的なことしかできないけど応用が効く者』と、『特殊…
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