入学式は何事も無く
本日の投稿をば…あと、前話をちょこっと修正しました…最後の方の会話の内容を…特にストーリーに変化は無いです。
――ザワ…ザワザワザワ…――
ざわめき、落ち着きの無い雰囲気が…だだっ広い豪華なエントランスに満ちる…支給された制服に身を包み緊張に固まる者…自らの実力を自負し、落ち着き払った様子の者…その場に集う若者達は皆其々に多種多様な思想、意識を持ち…この場に集う…そう。
「……!(プルプルプルッ)」
今日は〝入学式〟…私が正式に〝ロザリア魔術学園〟の生徒として認められる…記念すべき日だ。
(うわぁぁぁ…滅茶苦茶緊張する…!)
何も緊張する必要は無いと…そう分かっていても、緊張は解けない。
(深呼吸、深呼吸して落ち着こう!)
――スーハーッ…スーハーッ…スーハーッ――
深く、ゆっくりと呼吸すれば、痛い程跳ねる心臓の高鳴りも落ち着き…一先ず、冷静に周囲を見渡す事が出来るようになる。
続々と入場する入学生…既にこの場に集い私達を品定めする〝教師陣〟、私達を微笑ましく見詰める学園長、眠たげに欠伸しながらサンドイッチを頬張るレインさん……ん?
「レインさんッ!?」
「ムグ?……おぉ、マナリア君か〜」
驚き思わず叫んでしまった私の声に、レインさんは眠気眼を擦りながら私の姿を確認すると…アリエルさんを連れて私の方にやって来る。
「ん、美味い…やぁ…制服似合ってるじゃないかマナリア君…白い制服に君の黒い艶髪は良く映える」
「ッありがとうございます///――じゃなくて、何で居るんですか!?」
他の人達からの注目何てまるで気にする素振りも無く、レインさんは一人サンドイッチを頬張りながら私を見る。
「いやぁ、学園長殿に呼び出されてね〝一年担当教師〟は入学式に出席する様にって…久し振りにグッスリ眠っていたのに叩き起こされたのさ」
「はぁ…そうなんですか…んん?」
そんな気怠げなレインさんの言葉に、私はそう言い…そして、レインさんの言葉に聞き返す。
「〝一年担当教師〟?…レインさんってまだ学生ですよね?」
「うん、そうだよ?」
「…レインさんが、私達の先生って事ですか?」
「〝先生の一人〟だね」
「……〝失伝魔術科〟ですか?」
「一年生に教えるにはハードな題材だなぁ…――正解は〝基礎魔術科〟だよ」
その言葉に…私は頷きながら…レインさんの言葉を読解し…レインさんの手を握る。
「い、いきなり魔術式を分解して独自の魔術を創れ…なんて言いませんよね…!?」
そして、恐る恐るレインさんへそう問うと…彼は可笑しいと言う風に笑い私へ言う。
「ハッハッハッ…君は一体僕を何だと思ってるのかな?…流石にまだ一般的な魔術知識しか持ち合わせない子達にそんな無茶をさせないよ」
「ホッ、良かっ「暫くの間は」――てない!」
その言葉に私は頭を抱えると…彼はクスクスと笑いながら私へ言う。
「心配せずとも、ちゃんと順序は踏むさ……ソレは兎も角、もうすぐ開会式が始まるし…席に着くといい」
「は…はい……」
レインさんはそう言うと…ゾロゾロと動き出す人混みに紛れて檀上へ戻る…ソレを見送り…ホッと安堵の息を吐いていると…。
「ねぇ…今の人って先生なんだよね?」
「ッ!?」
不意に、私の隣からそんな声が響き…私は驚いて振り向くと…隣の金髪に緑の毛が混じった女の子が私の目を見ながらそう話し掛けていた。
「君の知り合い?」
「う、うん…私の〝雇い主〟…かな?」
「へぇッ、雇い主って事は研究室で働いてるの?…私と同い年なのに凄いな〜」
「は、はは……働いてるって言っても…雑用とか頼まれてるだけだから…大したことはしてないんだけど…」
「ふーん…でも、あの人〝凄い人〟だね…魔力とかはぱっと見少ないけど…なんて言うかこの場の誰よりも〝魔術に精通してる〟って感じする…」
そんな彼女と問答していると…彼女は欠伸しながら学園長に何か話しているレインさんを見てそう呟く。
「良いね、〝楽しくなりそう〟だ…森から抜け出して正解だった♪」
そう笑う彼女の、可愛い綺麗な顔と少し尖った耳に…私は彼女に質問する。
「もしかして…〝森人〟?」
「半分だけねー…それよりも自己紹介しようよ、私はナーシャ、ナーシャ・フォレスタ…西の〝ボグダンの森〟って所の村から来たの」
「――私はマナリア・ノーホープ出身は…西の商業都市ハイラッド…よろしくね」
「うん宜しく!」
○●○●○●
「――で?…アルベルト等の処遇はどうなったんだい?」
「当たり前だけど〝難航〟してる…特に今は話すら出来無い有様よ」
「魔術回路を潰されたんだから当たり前か…まぁ、いざとなれば無理矢理〝絞り出す〟しかないねぇ」
「……出来ればしたくないけどね」
「同感だ」
開会式も始まり…僕は学園長と少し前の〝アルベルトの件〟について情報交換する…その成果は芳しくなかったが。
「――僕の鹵獲した〝黒い指輪〟の方も解析中だ…〝魔術の増幅器〟と言うのは分かっているが…通常の触媒とは性能が段違いだった…副作用として〝魔術式の暴走〟が推測されるが…誰が作ったのかは見当も付かないね」
「…そう、魔術工学科のフィヨルドなら何か分かるかしら?」
「あの偏屈屋?…止めといた方が良いよ…アレは好奇心の抑えが利かない類の人間だ、副作用の性質が完全に分からない以上、下手に渡すのは不味いだろう」
「……確かにそうね…貴方も似たような物だと思うけど」
「僕は〝収拾可能な範囲〟でしか勝手には動かないよ…〝魔術の危険性〟と〝好奇心が齎す狂奔〟は十分理解している」
「…なら、どうするの?」
「近い内に〝僕の友人達〟の所に顔を出すよ…彼処なら、この学園よりも良い設備が揃ってる」
そうこう言っていると…開会式の進行役が学園長を呼び、檀上の中心に誘う。
「此方でも何とか調べてみるわ」
「あぁ、頼むよ…僕も何か分かれば連絡する」
その催促に学園長は席を立ち…粛々と入学式を進めて行く…僕はその傍らでアリエルに言う。
「アリエル…裏手に数人〝侵入者〟だ…処理しておいてくれ」
「承知致しました」
その言葉にアリエルはフッと気配を消してこの場から立ち去る…そして、私は薄暗がりの中…誰にも聞こえ無いように溜め息を吐く。
「…はぁ、祝い事の場で位大人しく出来ないのかねぇ」
そして…この場に来たもう一つの〝仕事〟…〝邪魔者の処理〟の為に…罪を問う銃の引き金を引く。
●○●○●○
「え〜…先ずは自己紹介から始めましょうか…私は〝カミラ・ウル・ロザリア〟…この学園都市ロザリアの〝学園長〟をしている者よ…宜しく」
そう言う〝学園長〟殿の言葉を聞きながら…私は、周囲から感じる〝その気配〟に心の中で溜め息を吐く…。
(全く…折角の祝典だと言うのに、なりふり構わん連中め)
持って生まれた地位が為に…こうした祝い事を楽しむには何時も苦労する…これも〝王子の宿命〟なのか…面倒臭い。
――ポウッ――
周囲の同学年の者等に気づかれないよう〝魔術〟を組む…その狙いは…己の背後…何処からか侵入してきた〝一匹の鼠〟…。
「……」
(〝完全に気配は殺せていない〟…二流だな)
暗闇から、私を狙う黒衣の刺客。
――シュィンッ――
作り出した魔術を刺客へ放とうとし…その時。
――ジッ――
「ッ!」
不意に〝魔力を乗せた視線〟が私を貫き…その視線に引き寄せられる様に目を向ける…すると其処には。
「(シーッ)」
「ッ…アレは…」
檀上の暗がりから此方を真っ直ぐ見て口に指を立てる男…確か、さっき彼処の少女と話をしていた男だ。
――カチャッ――
「ッ!」
彼は私へ静かにする様に指を立てると…その右手に持った奇妙な銃を虚空に掲げ…引き金を引く。
――(パンッ)――
ソレはほんの一瞬だけ…〝魔力反応〟を私の目に映すと…その刹那反応が掻き消え…静寂が数秒続く……その瞬間。
――ガクッ!――
背後の刺客がフラリと白目を剥いて倒れ落ちようとする…ソレが地面に倒れようとしたその時…いつの間にやらそばに立っていた無表情なメイドが男を掴み…暗闇に消える。
(……凄まじいな)
この一瞬で、私の目に移った光景に私が心の内でそう呟く…私が反応するより早く、行動を起こし…私以上に優れた〝魔術技術〟で、誰にも気付かれること無く〝邪魔者〟を処理する…その腕に、感嘆と賞賛を込めて。
(やはり…〝大陸有数の魔術学園〟は…伊達じゃないな…姉上の勧めに乗って良かった)
「…(ペコッ)」
「…♪(ヒラヒラッ)」
礼を言い…学園長の言葉に耳を傾けながら…彼を見る…彼処にいると言う事は…〝教師〟なのだろうか…何方にせよ、彼にはちゃんと〝礼〟を言わねばな。
(王子として、恩人に謝礼をせぬ訳には行かないし…何より、彼と繋がりを作っておくのは損にはならないだろう)
「……では、私からの言葉は此処までにして…今から、貴方達〝一年生〟に学び、教えを説く〝教師〟達を紹介するわね」
……だが、今はこの〝新しい生活への期待と興奮〟を楽しむべきだろう。




