第145話:2日で終わらせる
単独先行を開始した初日、カイトは驚異的なペースで炎の森を突き進んでいた。
まだ戦っていなかった新種のモンスターたちとも、道中で次々と遭遇した。
木の上から執拗に火球を放ってくる『フレイムモンキー』の群れには、魔人の範囲魔導スキル【炎極の投射】の直線レーザーで、木々ごと一瞬で焼き尽くした。
属性的にはあまり効かないはずだが、地の魔力量が流石に違う。
また、近接攻撃が通用しにくい蚊柱のような群体モンスター『火柱』に対しては、イストが上空から【天魔斬】を放って一網打尽にし、撃ち漏らした個体もティロフィの『破壊の風』による衝撃波で跡形もなく消滅させた。
終わってみれば、初日だけで『第四十三層』のセーフティエリアまで到達するという、常識外れの進軍速度を記録していた。
それだけの速度を出せたのは、単に戦闘がイージーだったからだけではない。カイトにとって、この四十一層以降のフィールド構造が、自身の持つ「知識」と寸分違わず一致していたからだ。攻略サイトや前世の記憶通りに進めば、どこに罠があり、どこが最適なルートなのかが全て分かる。この調子なら、迷うことなく最短距離で進み続けられるという確信を、初日にして完全に得ることができた。
そして翌日。
カイトはしっかりとした泊まりの準備を整え、再び四十一層のゲートへと戻ってきていた。
統合ダンジョンの第四十一層以降は、単に難易度が上がるだけでなく、フィールド全体の面積そのものがそれまでとは比較にならないほど広大になっている。たとえカイトのように最短ルートを完全に把握しており、どれだけ敵を瞬殺しながら進んだとしても、移動にかかる物理的な時間だけでそれなりに消費してしまうのだ。
一ヶ月の猶予があるとはいえ、移動時間だけで毎日地上に引き返していては、いつまでたっても進めない。
そのため、カイトは最初からダンジョン内での野営――つまり泊まり込みでの連戦を前提として、リュックサックに必要な資材を詰め込んできたのだった。
「主、野営の準備も万全でございますね。私の『天制の蒼翼』による上空からの警戒も、夜間を含めて怠ることはありません」
イストが白銀の鎧を鳴らしながら、頼もしくカイトを見下ろす。カイトが頷くと、隣にいたティロフィもまた、大きな黒い翼を誇らしげに広げてみせた。
「ありがとう、でも基本セーフティエリアで休息を取るつもりだから、イストもティロフィもしっかりと休んでほしい。今日と明日――この二日間で、一気に第四十四層まで突破して、四十五層のボス部屋の前まで行くつもりだからね」
通常のクランであれば、数週間、あるいは月単位の計画を立てて挑む過酷な階層。それをカイトは、たったの「二日間」で終わらせると静かに宣言した。
装備の紐を締め直し、耐熱結界の魔道具が正常に作動していることを確認する。陽炎が立ち上る赤黒い炎の森を見据え、カイトの瞳に迷いはなかった。全ては、自分たちを信じて待っている仲間たちと、大崎にそびえ立つ最高の「城」を手に入れるため。
カイトは使役モンスター二体を従え、さらなる深部を目指して、再び灼熱のフィールドへと駆け出した。
『現在のジョブ:魔人(Lv.41)』
『使役モンスター:イスト(Lv.7・天空騎士)、ティロフィ(Lv.8・黒白龍)』




