第134話:面接予定日
統合ダンジョン四十層の守護者、サンガレムフェアリーが光の粒子となって消滅した。その瞬間、空間の中央に眩い光が収束し、この大規模な攻略を締めくくるに相応しい財宝が出現した。
ドロップしたのは、四十五名というレイド規模に比例して、大人の頭ほどもある規格外の「特大サイズの魔石」。そして、燃え盛る溶岩をそのまま凝固させたような『炎岩の小手』と、未知の意匠が刻まれた『岩操の指揮棒』の二つである。
「よし、ドロップアイテムの回収を確認した。今回の合同攻略はこれにて作戦終了とする。総員、速やかに転移ゲートへ移動し、帰路に着け」
龍崎教官の峻厳な声が響き、緊張の糸を解いた大崎市立第一中学校の面々は、順次ゲートへと足を進めていく。カイトもまた、激戦を終えた心地よい疲労感を覚えながら、佐藤や九条院たちと共にゲートを潜り、住み慣れた地上へと帰還した。
ダンジョンの外へと這い出たところで、引率教官たちから簡単な総括があり、その日のうちに現地で解散となった。
「みんな、今日はお疲れ様。また来週ね」
「おう、お疲れ! カイト、土日の面接、しっかり頼むぜ!」
佐藤たちが手を振りながら去っていく。カイトは九条院と視線を交わし、明日への段取りを静かに確認し合ってから帰宅する。
翌日の土曜日。
穏やかな週末の空気が流れる都内。若者やビジネスマンで行き交う街並みの一角にある、落ち着いた雰囲気のブックカフェの個室に、カイトと九条院紗夜の姿はあった。
今日はいよいよ、これから発足する彼らのクランの命運を左右する、裏方スタッフの面接日である。
今回募集した業務内容は、多岐にわたる。所属する冒険者から依頼された武器や防具の発注、ダンジョンで獲得した魔石や各種ドロップ品の最適なルートでの売却手続き。さらにはクラン資金の厳格な管理や、法人化に伴う複雑な税金処理、その他諸々の雑務を含めた運営サポート全般だ。
「結城くん、改めて今日、よろしくお願いしますね。九条院家で呼びかけたら結構な人数の方が来てくれたから、書類選考してかなり絞らせてもらったけれど、残った三人はどなたも本当に優秀な経歴をお持ちよ」
九条院が手元の端末に表示された履歴書をチェックしながら、微笑みを向けてくる。
「うん、こちらこそ。九条院さんが事前に精査してくれたおかげで助かるよ。基本の実務能力は書類で証明されているわけだから、俺たちが今日見るべきなのは――」
「ええ。実際の細かな業務が問題なくこなせるかの最終確認。そして何より、私たちのクランを支えてもらうに足る、人柄がしっかりとしている人物かどうか、ね。こればかりは直接話してみないと分からないもの」
クランのリーダーとしての自覚を胸に、カイトは深く頷いた。
面接のスケジュールは、一人あたり二時間。じっくりと対話の時間を確保するため、二時間おきに一人ずつ、合計三人の候補者がここへ訪れる予定になっている。
「――そろそろ、最初の予定時刻ね」
九条院が腕時計に目をやったその時、個室のドアが静かにノックされた。
まだ見ぬクランの基盤を共に築くスタッフ。果たして、カイトたちの前にどのような人物が姿を現すのだろうか。
『現在のジョブ:魔人(Lv.41)』
『使役モンスター:イスト(Lv.7・天空騎士)、ティロフィ(Lv.8・黒白龍)』




