第56話 挿話 〜天界の人々〜
『んん〜〜!!』
テラスにある白い椅子で大きく伸びをする少女。
年の頃は十歳くらいだろうか。
緩くウエーブがかかった美しい金色の髪を腰下まで伸ばし、金色の瞳とあどけない表情が見る者すべてを虜にするだろう。
色白な肌を白いワンピースが更に引き立てていた。
少女の名はルミナス。
天界に住まう神族の1柱で、レオンたちの世界を管理している。
あの世界では女神ルミナスとして崇められている創造神、その人である。
『ふぅ』
カップに入った紅茶を啜り、ゆっくりと息を吐く。
紅茶が置いてあるテーブルには「世界の作り方 創造神ゼウス著」と書かれた分厚い本がある。
栞が挟まっているが、どうやら序盤のページらしい。
チラリと本に目をやり……
『ふぅ…』
もう一度息を吐く。
『あ〜ぁ、暇ねぇ……何か面白い事無いかしら……』
基本的に天界の人々には寿命がない。
エネルギー生命体の様な存在が故、神力が補給できる場所であれば死ぬことはない。
姿も自由に変えられる。
今の姿は、創造神ゼウスの末娘として生を受けたルミナスが好んで使っている姿だった。
こんな見た目でもレオンたちの世界が作られた頃より前に誕生している。
そんなルミナスの家に父たる創造神ゼウスが訪問したのだった。
『どこに行ったんじゃ?』
広いリビングに佇む如何にも「神」を体現するムキムキの爺さん。この人こそ創造神ゼウスであった。
すべての世界はゼウスによって創られ、14人いる娘達に、管理させている。
娘たちの中でも能力値だけは一番高いルミナスが管理している世界がアイシーズ、レオンたちの世界だった。
広いリビングに浮かぶ球体。地球儀の様なそれは、レオンたちの世界を管理するための「箱庭」
と呼ばれるものだった。
一部分にエネルギーの収束を感知したゼウスは箱庭を見つめた。
そこでは、スターライト・ジャッジメントと魔王化による魔力増幅でダノスから抜け出すレオンたちの姿があった。
『なんじゃ、ネズミが入っとったか……
しかし、お主ら面白いのう。
自力で抜け出すとは大したもんじゃ。
何やらルミナスが迷惑をかけたようじゃのう。
ちゃんと管理せんからこういうことになるんじゃ。
娘の失態は親の責任じゃからのう。
せめてもの救いじゃ。
小指の先の一欠片の垢ほどじゃが受け取れい』
小指の指先を弾いて金色の光を世界に落とした。
その光は迷う事なくレオンに入り込んだのだ。
闇に染まりそうになったレオンが反転、黄金に輝くオーラと瞳を持ったのだった。
そして、テラス。
『あぁ〜暇ね〜何か面白いことないかしら?』
再度伸びながら欠伸をするルミナス。
『お〜い、ルミナスよ。』
リビングからテラスに来たゼウスがルミナスに声をかける。
『あら、お父様いらしてたのですね』
『なんぞ、暇そうじゃの?』
『あ、い、いえそんな事は……』
『お主に与えた箱庭にネズミが入り込んどるぞ』
ギロリと睨み、オーラを強めるゼウス。
『ひっ!』
『まったく、箱庭一つまともに管理できんとはな……末娘だからと甘やかし過ぎたかのう?』
『あ、い、いえ、そ、そんな事は……』
『まったく、本も全く読んどらんようじゃのう。
跡を継ぐならば努力を惜しまぬ事じゃ!
箱庭の人間たちに学んでこい!』
『は、はい!』
リビングに走るルミナス。
その時、箱庭から緊急呼び出しコールが鳴った。
箱庭の中で、祈りによる顕現の秘術が行われたのだ。
『あぁ!!呼び出したわ!こんな姿じゃだめね!もっと威厳のある姿にしなきゃ!』
そうして、見た目を20半ばまで成長させ、アイシーズに向かった。
向かう途中の情報取得でダノスによる介入と、世界操作を知ったルミナスは憤った。
『アンタのせいでパパに怒られたじゃない!』
そして世界に顕現したのだった。
『ノクス神ダノスよ、ここまでお前をのさばらせてしまったのは私の失態でした。この光の世界から消え去りなさい。』
(早く処理しないとパパに叱られちゃう!)
レオンたちの人間には威厳たっぷりに見せながらも、心の中ではそんな事を考えていた。
そして、黄金に輝くレオンを見て愕然とした。
この太陽の力は紛れもなく父ゼウスの物だった。
ゼウスにとっては小指の爪の先についていたホコリ程度であっても、人間には絶大すぎる力だったのだ。
天界に帰ってからルミナスはオズオズと聞いてみた。
『……お父様。あれは少々与えすぎでは?』
『ん?』
『人間にとっては、お父様の〝小指の先の一欠片〟でも……』
『…………』
二人で箱庭を見る。
レオンの瞳は黄金のまま。力に満ちた状態は1000年は続きそうであった。
『…………まあ、よかろ』
『よくありませんよ!!』




