第54話 ~スターライト・ジャッジメント~
暗い闇の中、ぼんやりとした意識が形を保てずに沈んでいく。
「お…俺は……なんだ?……どうした?」
『お前は消える……すべて終わったのだ……』
「……きえる……?……俺が…」
『そうだ…お前は…消える……すべてを………吾に捧げて…』
「!!?……ちがう!……ちがう!!……俺は、俺だ!!!」
『…もういい……仲間も全て消えた……』
「……消え…?」
『覚えているか?………お前の体が……お前の意志とは関係なく……仲間たちを……葬った!!』
メテオに押しつぶされていく仲間たちの姿がフラッシュバックする。
「!!!?」
『お前には……もう、何もない……』
エリシアの笑顔、セノンの冷ややかな中に愛情のある瞳、ガイダルと煽るように飲んだあの日、カインとふざけ合った日々。
その全てが、音を立てて崩れていく。
「うわああぁぁぁあああ!!!」
叫びと共に闇がレオンを覆っていく。
レオンは闇へと落ちていく。
ダノスの思惑通りに。
ーーーーーー
『カカックっクックッ!!身体が馴染んでいくぞ………』
両手を空に広げ、顔も天を仰ぐ。
『——さぁ!!終焉の始まりだ!!』
キイィィィ!
眩しい光と共に空間を割くような甲高い音が聞こえた。
「——そうはいきません!!」
「レオンを返してもらうわよ!!」
テレポートによる空間転移でエリシア、セノン、ガイダルとカインがダノスの前に姿を表した。
一瞬、目を細めたダノスだったが、その余裕を崩さない。
『……ほぅ、生きていたか……』
「おんしの好きにはさせんぞい!!」
「こちとら、腸煮えくり返ってるんだ!さっさと退場してもらうぜぇ!!」
『……カカックっクックッ……見放された勇者に今更何ができる?……』
唇を噛みしめるエリシア。
「………私は………」
拳を握りしめ、双眼でダノスを射抜く。
「——諦めません!!」
「まだ、侵食は完全じゃないみたいね!!」
『カカッ!!……異な事を言う……この身体は吾の物よ』
「その左腕が残っている間はレオンは消えてない!!」
そう、白銀に光る左腕だけが未だその形を残していたのだ。
『異物が残ったからとて、本体は既に消えた』
ダノスが操る光弾の嵐がエリシアたちを襲う。
ピクッ
ほんの僅かに何かが動き出した。
エリシアもセノンも気づかない。
ダノスでさえ気づかない。
内で動き出した何かに。
ーーーーーー
「小僧、オメェは何者だ?」
かつて、ゴメスに言われた。
義手を作っている時だ。
「オメェは勇者じゃねぇんだろ?」
「あぁ………きっと本当の勇者はエリシアみたいな奴なんだと思う」
レオンは伏し目がちに言った。
「エリシアには人の心が見えている。その心を救う優しさもある」
「俺は、世界中の知らない奴まで救うなんてできない。どこかで災害があっても「あぁ、そうか…」と感じるだけだ。でも知った奴を放っておける程達観もしていない」
「そして、聖剣は俺を選んだ……俺は、俺が知ってる奴を、側にいる奴を守りたいんだ……それが俺だ」
「……業が深いな……勇者を超えるってのか?世界を救うために、切り捨てなきゃならねぇ事もある……」
「俺は、絶対に切り捨てない!俺の知ってる奴を守り抜く!それが俺の正義だ」
「吹くじゃねぇか…だが、その理屈じゃどんどん守るもんが増えて行っちまうぜ?」
「それが俺にできる全てだ」
「……いい覚悟じゃねぇか…オメェの正義の心をコイツにも入れてある。駆動の中枢にサファイアを使っている。その心と魔力に馴染むほど、この左腕はオメェ以上にオメェになっていく」
左腕をレオンに接続し、立ち上がるゴメス。
「オメェが仲間を守るってんなら見せてもらうぜ!!武器を作る!その腕使って手伝いやがれ!!」
ーーーーーー
「レオン!帰って来なさい!」
「あなたはこんな所で負けません!」
セノンからアルカナ・インフィニタが放たれ、エリシアはホーリー・ジャッジメントを放つ。
「絶対に取り戻すぞい!」
「へっ!このままでいいのかよぉ、色男ぉ!」
ガイダルのトールハンマーとカインのマリオネット・カーニバルが炸裂する。
『効かぬ…効かぬなぁ!』
ダオスの両手から黒い雷が放たれる。
剛神の盾で防ぎながらの攻防が続く。
「私の事嫁だって言ってくれたじゃないですか!?ちゃんと責任取ってお嫁にしてください!」
「ちょっと、エリシア! アタシが抜けてるじゃない!」
「正妻の座は譲りませんよ!」
「なっ!? 言うようになったじゃない!アタシだって譲る気はないわよ!」
「おいおい……そんな事言ってる場合かぁ??」
そう言いながらも攻撃の手が緩まないのは流石の連携だった。
「まあいいわ!これは後よ!まずはあの変態勇者を取り戻すわよ!」
「はい!!」
エリシアとセノンが描く魔法陣が重なる。
「さっさと帰ってきなさい!!変態バカ勇者!!」
ダノスを囲むようにドームが広がる。
「「合技!スターライト・ジャッジメント」」
無数の裁きの光がダノスに擦り注ぐ。
一本一本がアルカナ・インフィニタの数倍の威力があった。




