第50話 ~天空コロシアム~
「……これだわ!!」
各々が決意を新たにし、忘却の花園に戻ってきた次の日、魔王城への入り口を探していた。
僅かな空痕の歪みを見つけ、テレポートの応用で空間軸を動かしたのだった。
何もなかったはずの空間に穴が開き、その穴の先には、悪雲に覆われた空の元に黒光りする大きな城が佇んでいた。
「……あれが魔王の城……」
空間の裂け目を通り、魔王城の手前までやってきた。
「襲撃があるかもしれない!……落ち着いていこう!!」
レオンの言葉に深く頷くエリシアたち。
ガチャァン!!
重い門塀を開き広場を進む。
ゴロゴロと雷鳴が轟く。
正面の扉に手をかけ、ゆっくりと引いた。
ギィィィィィ!!
恐る恐る、玄関ホールへ足を踏み入れていく。
「……まるで、気配がない……」
「………まさかここでは無いのかしら?……」
「!!!!?…何か……来る……」
ホール上空に空間の歪みが渦となって!中心から何者かが現れる。
『…よく、ここまで来れたものだな……勇者諸君……』
魔王ゼノスの襲来であった。
「へへっ…いつかのカリを返しに来たぜ!!」
聖剣を抜き、ゼノスへ尖先を向けるレオン。
『……四天王と近衛騎士を倒され……腸煮えくり返っているのはこちらの方だ!!』
魔王ゼノスも剣を抜き放ち、尖先をレオンに向ける。
『……私達の決戦に誂え向きのステージを準備した……上がってくるがいい……』
「……ここでやっても良いんだぜ……」
『フン、気負うな。罠など有りはしない……天空コロシアムで待つ』
マントを翻し、空間を割って姿を消すゼノス。
「行ってみるしかねぇか……」
そう言って魔王城の階段を登っていく。
ゼノスの言うとおり罠や魔物の類は何もなかった。
——謁見の間。
だだっ広い部屋の奥に革張りで重厚そうな椅子が一脚鎮座している。
正に玉座に相応しい出で立ちであった。
目の前には光輝く魔法陣が浮かんでいた。
まるで引き込まれるような、不思議な引力があった。
「……これか?」
「転送魔法陣ね。…行き先は……わからない」
「行くのかぁ?」
「…行くしかねぇだろ」
『本当にいいんじゃな?』
「……後戻りはできない……する気もねぇよ…」
「アンタに何処までもついていくわ」
「レオンを信じます!」
「……みんな……最後かもしれないからな………言わせてくれ………みんなに会えて本当に良かった!!ありがとう!!………さぁ!いくぞ!!」
「「「「おぅ!!」」」」
魔法陣に乗り、光に包まれる。
レオン一行は地上から天空へと飛び立った。
ーーーーーー
——天空コロシアム
「……来たか……待ちくたびれたぞ……」
「…別に招待状を貰ってたわけじゃねぇからな」
お互いに剣を抜く。
「”みんな”の平和のために……”救い”が必要だ!!……そのためにはアンタを倒させてもらう!!」
剣を引き、刺突の構えを取りながらレオンは返した。
「ふ、ふはははは!!まこと身勝手な物言いだな!!”平和”が何かも分からぬ小僧が!!」
ゼノスは剣をおもむろに横薙ぎにした。
ものすごい衝撃波がレオンたちを襲う。
「ぬおおおうう!!」
ガイダルがレオンの前に出て霊盾剛壁を広げる。
真正面から受けた衝撃は盾にヒビをいれた。
「な、なんだと!!?」
ただのひと振りがこの威力。ガイダルが驚愕の声を上げる。
「いけ!!」
カインの背後からカインの分身が4体現れ、四方から魔王を取り囲むように跳躍した。
だが、魔王は足元からいびらのツルを出し、生きたムチのようにカインの分身を貫いた。
「最初っからフルスロットルだ!!エリシア、強化を!!セノン行くぞ!!」
「「えぇ!!」」
エリシアがレオンにスピードとパワーのバフをつけ、セノンは詠唱に入る。
地面を強く蹴りだしたレオンは目にも止まらぬスピードでゼノスの懐に入り込んだ。
突き出される剣。
それと同時にセノンのアルカナ•インフィニタが放たれた。
レオンの突きに対応すれば魔法の餌食に、魔法に対応すれば聖剣の餌食になる最高のタイミングだった。
「ふん」
ゼノスはレオンの剣に剣で対応した。そして、同時にアルカナ•インフィニタに対して魔法陣の障壁を出したのだった。
「!!?いけない!!みんな散って!!」
セノンの声に瞬間的に反応した。
ゼノスに向かっていたはずの白い光の槍は自分たちに向かってきたのだった。
間一髪で致命傷を避けたメンバー。
「!?? みんな!!」
「う、ぅう」
「あいたたたた」
「……うぅ、一体何が??…」
ガイダル、カイン、エリシアが地面に張り付いた状態で疑問を口にした。
「つぅ…参ったわね…あれは反射術式よ」
「みんな大丈夫か!!?」
鍔迫り合いから引き下がり、皆のもとへ戻ってきたレオンが中段の構えのままに声をかけた。
魔王が展開した魔法陣は、アルカナ•インフィニタの4割ほどを跳ね返し、そのエネルギーとともに対消滅した。
今の攻防で焦りもなく、怪我一つも負わずに反撃までしてのけたのだった。
「反射術式??」
「えぇ、その名前の通り、魔力が伴った攻撃を反射してしまうの。相当魔力の消費もあるはずなんどけど……全然平気って感じね……あれがある以上、魔法はほとんど諸刃の剣だわ」
「せっかく考えた作戦も打つ手なしかよ……笑えねぇぜ」
頬を一筋の汗が流れた。




