第45話 ~それぞれの思い~
レオン一行は忘却の花園にいた。
「やっぱり、ここで間違いないみたい」
セノンは空間の歪みを見つけていた。
100年前、突如消えたとされる魔王城への入り口。
一説によれば、魔界に繋がるとも言われている。
「時空間が複雑に捻じ曲げられているわ」
「じくうかん??」
「時間軸と空間軸が重なることであらゆる物質は存在できるのよ。アタシのテレポートはそれを応用して、目的地と現在地を一時的にくっつけてるのよ。」
標準より大きめの胸を張って言うセノン。
「……え〜と……わかった?」
レオンは汗を垂らしながら他のメンバーに聞くが、フルフルと首を降る面々。
「……はぁ……まぁいいわ。とにかく、何とかできそうよ」
「おぉ!これで魔王をブッ飛ばせるぞい!」
「前のカリを返せるぜぇ!」
「行きましょう」
やる気に満ちている面々に対し、レオンは浮かない顔をしていた。
「……みんな……話しておきたいことがあるんだ」
「……………輪廻の理ね……」
「!!!?セノン……知ってたのか!?」
エヴァンに聞いたばかりのことをセノンが知っていた。
「母さんの研究資料の中にあったのよ……アタシの母は勇者パーティの一員だったの……」
ざわつく一同。
「……俺は…」
——レオンはエヴァンと話した事を全て話した。
「そんな……」
「おめぉはそれで良いのかよぉ」
「…俺は、ダオスを救ってやりたい!!……」
「お主が魔王になってしまうかもしれんのだぞ!!」
「…いや……エヴァンに俺を斬らせないと約束した。俺は魔王にはならない!」
「…………」
小さく震えながら拳を握るエリシア。
「……私は……イヤです……」
「…エリシア?…」
「だって!…魔王になってしまうかもしれないんですよ!!?」
涙を零しながら叫ぶ。
「……ならなくったって!!…一人だけ時間に取り残されて……永遠を生きなきゃならないんですよ!!そんなの…そんなの……」
俯き肩から震えだすエリシア。
足元には涙の雫がいくつも落ちていく。
「…辛すぎます……」
「……エリシア…」
レオンはエリシアの肩に手を置いた。
そしてそっとエリシアを抱きしめる。
「……ごめん……ごめんな……」
エルフ、ハーフエルフ、ドワーフや巨人族、どの種族も人間より長寿族だった。平均でも1000年…人の10倍以上生きる。
エリシアやレオンが感じる時間の感覚自体が違うのだ。
「……正直さ……俺も怖いよ…」
「……でも誰かがやらなきゃならない!」
両肩に手を置き、正面から瞳を見つめた。
「そして、今それができるのは俺だけだ!世界の為なんて大それたことはできない!……けど……知っちまった奴の事は助けてやりたいんだ」
「……全てを擲ってでもですか?」
「俺は聖人君子じゃない」
「変態勇者ですもんね」
思い空気を取り除こうとセノンが横槍を入れる。
「うるせえ!茶化すな!」
少し、空気が軽くなった気がした。
「これは俺のためさ。後悔はしたくない!ただの自己満足だよ」
エリシアの瞳を見つめながら微笑むレオン。
「……それでも、俺はそうやって生きたい」
「レオン……アンタはホントにばかよ…」
レオンの後ろからセノンが抱きつく。
「………アンタが永遠を生きるなら……せめて、アタシの人生を捧げてあげる……」
「………私………怖いです……でも…」
今度はエリシアが正面から抱きつく。
「……私の……時間も…心も……全て、あなたに……」
「…あぁ……ありがとう…」
誰も、もう何も言わなかった。
ただ、三人の温もりだけが、その場に残っていた。
ーーーーーー
「なぁ、セノンのテレポートはどこでも行けるのか?」
皆が落ち着いた後、レオンが聞いた。
「アタシが行ったことがある場所なら行けるわよ」
どうしたのよと聞くように見つめてくる。
ちょっとした仕草が可愛く、抱きしめたくなる。
「少し、行きたいところがあってさ……」
「…………女のところは駄目よ」
「なんでだよ!!ちげぇよ!!」
ジト目で見てくるセノンについ突っ込んでしまう。
「冗談よ……アタシも行っておきたい場所があるわ。皆もそうなんじゃない?」
こうして、一行はそれぞれの思い出の地へ向かうのだった。




