第38話 〜セノン失踪〜
ーー魔王城
謁見の間。
「……四天王がすべて倒されるとはな………」
空を見上げながらふと目を閉じる。
あの日は雨が降っていた。
空の雨と血の海が混ざり合う。
魔王となる事を決めた日。
勇者で有り続けるために、世界の平和を守るために、魔王となった。
「…お前もいずれ分かる…」
前の魔王が行った言葉。
正しかったと思い知らされた。
目を開ける。
「この平和を守らねばならん……」
ゼノスは身体から溢れるオーラを瘴気に変え、人形を作って行く、
空間が歪み、人形に擬似魂が宿る。
ゆっくりと開かれた黒い瞳。
姿はゼノスそのものだった。
「ベイルよ。勇者どもを殺せ。奴らの故郷を潰し、進攻を止めるのだ」
「……御意」
感情のない無機質な声で答える。
そして暗黒瘴気より生み出された暗黒騎士ベイルはフルフェイスの甲冑を身に着け、部屋を後にした。
ーーーーーー
森を歩き続け、1ヶ月が過ぎた。
幸い、森の恵みにより食べ物には困らないが、毒を持った虫や蛇が多い。
何度か瀕死になる場面もあった。
その都度、エリシアのリカバーで事無きを得ているが……
「見つかんねぇなぁ」
斥候として放った影を戻し、カインが言った。
「……ホントにここで合ってんのか?……」
レオンの不安そうな呟きは森に消えていった。
どうしてこんなことになっているかと言うと。
ーーーーーーーひと月前
エリシアがロザリオから復活を遂げた。
あの時のエリシアとレオンの告白は惹かれ合う二人の本当の言葉だった。
そして、レオンとエリシアがお互いに求め、受け入れたのだ。
一つとなった二人は確かに、距離は近づいていった。
そんな時だった。セノンが姿を消した。
まるで探してほしいが誰にも見つけてほしくないような一言。
「あたしが帰るべき場所へ」という書き置きを残して。
これまでセノンにゆかりのある場所を探し回ったが彼女の姿はどこにもなかった。
アルディア王国、アルフェン遺跡、忘却の花園まで探し回った。
サンクチュアリでとある噂を耳にした。
エルフの隠れ里についてだった。
エルフの里は神樹の森にあると言われており、一行はその森へ向かったのだった。
誰一人反論する者はいなかった。
セノンはこのパーティにとって無くてはならない存在だったから。
彼女がいない空間は、卵のないオムライスのように決定的に何かが欠けていた。
ーーーーそして現在
森の日が落ちるのは早い、野営の準備をして、焚き火を囲みながら作戦会議を行う。
セノンを探すためにエルフの隠れ里を目指してきた。
この「神樹の森」にエルフの里があると言われているが、森は深く険しかった。
「なぁ、これからどうすんだぁ?」
「歩き回るだけでは埒が明かんぞい」
カインとガイダルの言葉はもっともだった。
だがレオンの中に諦める選択肢はない。
もちろん二人も諦めるつもりなどないのだが。
「……ひとつ、心当たりがあります」
小さくエリシアが答えた。
「ほ、ほんとか!!?」
「はい。このひと月で違和感がありました。人は勿論、生き物には心があります。私は……心が見えるのです」
「!!!?」
全員が驚愕した、エリシアが自分たちに確信めいた事を言う事はあったが、心が読めているとは思いもしなかった。
「えっと、何となく色で解るだけで、読めるわけではありません……でも………イヤ…ですよね」
「いや、別に?」
あっけらかんとしたレオンの答えにキョトンとするエリシア。
「そうだの。これまで長い付き合いだが困ったことなどないぞい」
「そうだな。やましい事してる訳じゃねぇし、困るのはレオンくらいだろ」
「なんでだよ!!」
カインの言葉にツッコミを入れるレオン。
他の女にうつつを抜かしてるのがバレるからなぁなどと言葉の応酬をしていた。
エリシアは自分をすんなりと受け入れてくれた仲間に感謝した。
「……だから、居心地がいいです……ありがとうございます」
みんなとても純粋で気の良い人であることは知っていたが、やはり素直に話す事は勇気が必要だった。
みんなの反応に安堵し胸を撫で下ろす。
「……出来るなら、色が濁るのは見たくないんです………」
一瞬俯き、暗い影が差す
「あ、あの……それで、心当たりなのですが……」
「おぉ、そうだの」
「草木にも心がありますが、森の中で1か所だけ色が抜け落ちている所があるんです」
「それって…」
「はい。封印されているか、入り口を巧妙に隠しているのではないかと」
「嬢ちゃん、どの辺か分かるかい?」
カインが地図を広げた。
「え〜と、この辺りかと…」
「なるほどなぁ…ちょぉっと待ってな…」
カインが目をつむり、背中に伸びる影が更に伸びて広がった。
「……へへ……あったぜぇ」
ニヤリと笑うカイン
「どうやら少し空間をずらしてその上に幻術魔法を重ねているみてぇだな。普通に探してたんじゃぁ見つからねぇ筈だ」
今いる場所から徒歩5時間ほどの場所にあるようだ。
日が昇ったら出発となった。
しかし、逸る気持ちが長い夜を過ごさせるのだった。




