第32話 〜希望を求めて〜
ロザリオを抱えるレオン。
レオンを優しく抱きしめるセノン。
何も言葉にできないカインとガイダル。
「………レオン、忘却の花園に行こう……」
どのくらい、時間が経っただろうか。
ようやく絞り出した声。
「……エリシアを探しに行こう……」
忘却の花園、死した魂が集う場所。
もう一度会いたい。
エリシアに。
ちゃんと伝えたい。
自分の気持ちを。
「…………あぁ………」
一言だけ返すのだった。
大空洞最深部に安置されていた古文書を持ち、地上へと戻った。
ーーーーーー
それからのレオンをアタシは見ていられなかった。
ふさぎ込み、宿の部屋から出てこない。
守りたかった者を守れなかった後悔と、二度と戻らないという悔しさが彼を支配している。
それでもアタシはレオンを支えたかった。
アタシにできることは……そばにいる事だけ。
「………レオン……入るよ…」
…ギィ
ベッドに座り俯いたままのレオンが目に入った。
駆け寄り、彼を頭から抱きしめた。
アタシは泣いていた。
ーー寂しかったのはアタシだった。
ーーエリシアに仲間以上のモノを感じていた。
ーーレオンもエリシアを想っていた。
ーー二人ともがアタシから離れてしまったと感じていた。
レオンは何も言わない。
暫くそうしている内にレオンは小さく震えだした。
彼も泣いていた。
壊れる寸前だった。
アタシは、その背中に手を回す。
離したくなかった。
この人まで、いなくなる気がした。
だから――
アタシを強く抱きしめる。
「……………」
言葉はいらない。
アタシも強く抱きしめる。
そして、行き場のない感情のまま、レオンはアタシを求めた。
ーーアタシはそれを受け入れた。
「……ごめん………」
レオンは泣きながら謝っていた。
アタシはまた、正面からレオンを抱きしめた。
「…アタシ……何もできなかった……何も
…………うぅ……エリシアを……うぅ…」
エリシアが消えてから始めて、アタシは声を上げて泣いた。
止める事はできなかった。
これまで研究漬けの人生で、唯一親友と呼べる存在だった。
エリシアが消えて、アタシの世界は静けさに押しつぶされそうになっていた。
エリシアはアタシにとっても特別だった。
「……辛いのは……俺だけじゃねぇよな」
そう言って、レオンは優しく抱きしめてくれた。
ーーーーーー
それから一週間が経った。
セノンは古文書を読み込んでいた。
忘却の花園について調べていた。
「…そ、そんな事が………」
古文書を持って部屋を飛び出した。
ーーーーーー
レオンは、ガイダル、カインと訓練をしていた。
「ふさぎ込んでいてもどうにもならん!!嬢ちゃんの意思を継いで進むんじゃい!!」
そう、悲しみを忘れるためではなく、悲しみを乗り越えて前へ進むために。
己を高めるのだった。
「はぁ…はぁ…」
カインが肩で息をしている。
「アンタら強えぇな……」
多少息は上がっているが、余裕を見せているレオンとガイダル。
「そうかのぅ?」
「カインだってすげぇじゃねぇか」
水を飲みながら答える。
「いやぁ、俺じゃもぅ足元にも及ばねぇぜぇ…」
カインに暗い影が過ぎった。
「みんな!!」
その時、セノンが三人の元へ走ってきた。
全力で走ってきたのか、肩を大きく上下させながら息をしていた。
「どうしたんだセノン。そんな慌てて」
「これを見て!ここよ!!」
「……………」
古文書のページを開きながら、指差した。
「………なんて書いてあるんだ?」
古文書は遥か昔の精霊文字で書かれていたため、読めるのはセノンだけであった。
「しょうがないわねぇ…いい?」
古文書を持ち直し
「霊峰の下、死者の魂集まりし、遺した都。
生けし者と死した者が交わる時。
女神ルミナスの加護を与えん。
強き心を持つ者よ。
生命の息吹を。
心弱き者よ。
永遠をさまようだろう。」
ここまで読んで顔を上げる。
「こ、これは?」
「死者の魂集まりし、遺した都って言うのは忘却の花園の事だと思う」
固唾を飲みこむ。
「そ、それじゃぁ」
「ええ!エリシアを生き返らせることが出来るかもしれないわ!!」
「やったのぅ!!レオン!!」
三人は喜びに溢れていた。
「でも、結局、忘却の花園はどこにあるんだ?」
「霊峰の下ってあるでしょ。この世で霊峰って言ったらあそこしか無いわ! ルミナス教の総本山、サンクチュアリよ」
こうして、次の目的地が決まった。
「……強き心か………」
カインの呟きは霞へと消えていった。




