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第28話 〜千剣の支配者〜

ーーおよそ1300年前

「イシュト、どうか…世界を恨まないで…」


イシュトの頬に手が触れる。


「……人を恨まないで……本当の平和を」


「エレン!!エレン!!」


背中を大きく斬られたエレンはイシュトの腕の中で息絶えた。


周囲には自国、他国が入り混じった戦士たちの死体。


魔王を倒し、世界に平和が訪れると、欲深い人々は手を取り合うより、己の有益を求めた。


国を大きくし、国力を高め、人口を増やし、領土を拡大する。


そしてさらに国を大きくしようと動き出す。


勇者ゼノスとともに魔王を倒した戦士イシュトと僧侶エレン。


エレンはかつて神託の巫女として国に仕え、勇者ゼノスを見出した。


当時王国騎士団長をしていたイシュトと巫女エレンは勇者パーティに志願し、同行した。


エレンに密かな恋心を抱いていたイシュトは、ともに旅をする中で、エレンと恋仲になった。


そして、5年前に魔王を倒し、短い平穏な時を過ごしていた。


そんなある日、王国は戦争に神の導きを求めた。


神託の巫女を傀儡にしようとしたのだ。


敵軍は計画を知り、巫女の拉致を企てる。


結果、神託の巫女エレンが住まう町で軍事衝突が起きた。


敵国がエレンを拉致しかけた時、王国軍は巫女を渡すくらいならばと斬り捨てたのだ。


イシュトの目の前で。


それからは、地獄のようだった。


剣を振るうたびに、誰の命を断っているのかすら分からなくなっていった。


修羅と化したイシュトが両軍を壊滅させたのだった。


雨が降っていた。


小さな墓標の前で立ち尽くすイシュト。


「…遅れて…スマン」


後から声がかかる。


勇者ゼノスだった。


「…ゼノス……」


イシュトは振り返らない。


「……平和とはなんだ?…」


「………」


拳を強く握り、血が滲む。


「…私は、この世界が許せん!エレンを奪った世界が!!………だが、エレンは世界を恨むなと言った…」


顔を上げる。


流れる涙を雨が流す。


「イシュト……」


「…ゼノス、お前のたびに私も連れて行け。その先に心の平和があるのなら………それがエレンの最後の願いだ…」


そして30年が過ぎた。


イシュトは壮年の騎士となっていた。


ゼノスは変わらない。


そして世界の争いも変わらない。


「ゼノスよ…このままでは俺の時間は終わる……頼む、俺の「時」を止めてくれ」


「!!?まさか、時止めの秘術を!?何が起きるか分からん!」


ゼノスを真剣に見るイシュト。


「…頼む……このままではエレンの願いは叶えられないままだ」


「………わかった。」


ゼノスは時止めの秘術をイシュトにかけた。


イシュトの身体は老化が止まった。


感情を引き換えに。


ーーその日、無慈悲な騎士、千剣の支配者が誕生した。


ーーーーーー


現在


夜の闇に覆われる中で雷が至る所で鳴っている。


「ライオスまでもが敗れるとはな…」


魔王ゼノスの呟きが雷鳴に消える。


「ゼノスよ」


「イシュトか」


暗闇から現れるイシュト。


「私が勇者を討ってこよう」


「…………」


ゼノスは答えない。


「この平和を崩させる訳にはいかない」


「…………あぁ…任せる」


イシュトはマントを翻し、部屋を後にした。


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