第22話 〜代償〜
バルギアスの指先に炎が集まり、槍のように尖り始める。
先ほどよりもさらに濃縮された殺意が、その一撃に込められていた。
『さぁ、氷の小娘……次は避けられるかァ?《ファイヤーランス》』
バルギアスから放たれた炎の槍がセノンを襲う。
「ぬおおおお!!」
瞬間、すべての炎が見えなくなるほど大きな盾が眼前に現れた。
「待たせてすまんかったぞい!!」
初めの攻撃で吹き飛ばされたガイダルが戻って来たのだ。
「光刀衝!!」
レオンの斬撃がバルギアスに放たれ、攻撃が止む。
「ヒール!」
セノンを緑色のオーラが包み込んみ、傷を癒やしていく。
『ほう…なかなか良い連携じゃねぇか』
空に舞うバルギアス。
制空圏を奪われ、不利な状況は変わらない。
『俺の攻撃を正面から受け止めるとはなぁ、賞賛に値するぜ…だが…下からならどうだ?』
「!!!?散れ!!」
足元が紅く染まり、熱を帯びる。
今しがた立っていた場所に火柱が上がる。
『ヒャーハハハハハ!!まるで虫けらだなぁ!ただ逃げ回るだけかぁ?』
何本も上がる火柱に翻弄される面々。
そんな中、セノンは奥の手を使う事にした。
体内に仕込んでいる魔力の増幅術式を開放したのだ。
セノンの魔力量が4倍まで膨れ上がる。
「《アイスランス》!!」
『さっきも効かなかった術が通用するかよ!!』
先程と同じように灼熱のオーラで氷の槍は溶けていったが、溶け切らなかった氷の槍がバルギアスの頬を切り裂いた。
「はぁ…はぁ…通った!!」
セノンの全身に痛みが走る。
たった4倍、8個仕込んでいる増幅術式の内、使ったのは2個のみであったにもかかわらず、体への負担は大きい。
『ちっ、やっぱりコイツから仕留めるべきだな』
足元から上がる火柱がセノンを襲う。
「きゃっ!!」
足場の悪い環境が更にセノンを追い詰める。
『これで終いだ』
地を割る轟音と共に、バルギアスの巨大な火球がセノンを呑み込もうとしていた。
熱で空気が歪む。
皮膚が焼ける錯覚に、セノンの喉は乾ききり、声にならない悲鳴が洩れる。
――避けられない。
詠唱は間に合わない。
ここで自分は、死ぬ。
その瞬間。
「ぐああああッ!!」
視界を裂くようにレオンの影が飛び込み、左腕を突き出して火球を受けた。
轟く爆炎。
焦げる肉の匂い。
皮膚が炭のように黒く焼け、赤熱の火が腕を覆う。
「レオン様!!」
「レオン!!」
エリシアとセノンの悲鳴。
「ガイダル……ッ!!」
炎が全身を覆う直前、レオンの声が嗄れて飛ぶ。
「ぬんッ!!」
斧の一閃。
次の瞬間、焼け焦げた左腕が地に転がった。
傷口は焼け、出血は少ない。
だが痛みに顔を歪め、汗と血が混じり合うレオンの姿に、セノンの胸は締め付けられた。




